session5:クエスト
導入と1章部分を分けるのをどこに仕様か迷っています。
ゲームログイン→1章にするか。
まだ説明を挟んでいるので、どうしようかなぁと。
都の中心を目指して歩いていると、すっかり日は暮れていた。
街の至る所に、水路ができているこの街では、時間によって異なる景色の楽しみが生まれる。
少なくても、私はそう思った。
何故なら、水路にもまた月の光が反射し、風をその身に受けなびくカーテンの様に揺らめいていたからだ。
「オーロラってこんな感じなのかなぁ?見たことないけど。」
夕焼けが沈んでいく街の景色とはまた違った光景に目を輝かせながら……
灯台を目指し歩いていく。
その途中、道端で困っている人を見つけどうするか、考え……
「大丈夫ですか?」
と声をかける。
やや年配の、おばあさんがこちらを向き。
「おや……こんな時間に。どうも御親切に……大丈夫ですよ」
と返事をしてきた。
よく見ると、何かを探しながら足を擦っている様だった。
「あの、足を怪我されたんですか?」
「いいえ、昔から足が悪くてねぇ……杖をついていたのだけど、転んだ拍子にどこかに転がってしまってね」
と、おばあさんは困ったように言う。
「それなら、私が探します!! おばあさんはあそこのベンチで休んでてください。歩けますか?」
手を差し出す。
「すまないねぇ……」
そう言いながら、私の手を取るおばあさんは足元がおぼつかないのか、ふらふらしながら立ち上がる。
近くにあったベンチまで手を取りながら誘導すると。
ポロン……とポップ音が鳴る。
確認すると、クエストの受注画面へと移行した。
New『おばあさんの杖を探せ』
……こんな会話からでもクエストって発生するんだ。
そう思いながら、承諾ボタンを押してクエストを開始した。
「あ、おばあさん……どこら辺に転がったかわかります?」
聞くと、暗くてよくわからなくて困ってたのよねぇ……とおばあさんは言う。
「でも、水の音はしてなかったから……水路には落ちていない筈よ」
「わかりました!ちょっと探してきますね」
そう、伝え周囲を捜索する。
手元は暗いが、周囲が完璧に見えない……というわけではない。
これなら、すぐに見つかるだろう……と思ったのだが。
10分かけて周囲を探しても見つからず。
杖が転がったであろう範囲は、大方探し終えてしまった。
「おかしいなぁ……あとは水路になっちゃうんだけど……」
そう覗き込んだ水路には、縄に繋がれた、2隻の小舟が浮かんでいた。
「ん……もしかして……」
その内、道に近い方の小舟を注意して覗いてみると……
そこには、木の棒のようなものが2本おかれていた。
「……これのどっちかかなぁ……?」
暗くてよく見えないけど……。
たぶんそうなんだろうなぁ……と思い、どうにか小舟に移る術を探す。
……縄に繋がってるならそれを手繰り寄せて、岸に近づければどうにか移れるかな。
実際に、縄を手繰り寄せて行く。
安全に折れそうな距離感になったところでゆっくりと、小舟に移るが……。
些細な衝撃でも小舟は想像以上に揺れ……
バシャーン!!
体勢を崩した私は、そのまま水の中に落ちるのだった。
「うえぇぇぇ……最悪だよぅ」
そう言葉を発する。
しょうがない、しょうがないんだけどね……。
今は、衣服が水に濡れた気持ち悪さも捨てて、小舟にある木の棒を確認する。
1つは、船を漕ぐためのオールだろうか?
もう1つを確認すると、こちらはどう見ても杖だった。
たぶん、おばあさんの杖ってこれだよねぇ。
「うー、水の中寒いよぉ……というか気持ち悪いよぃ……」
すっかり気持ちは萎えてしまったが……
これも、おばあさんの為と堪え杖を拾い、おばあさんに渡しに行く。
「おばあさん、ありましたよ……これ」
手渡すと、嬉しそうにほほ笑んでお礼をおばあさんが言う。
「こんな、暗い中よく見つけてくださって、ありがとうねぇ……」
杖を受け取った老人は、ふと言葉を止め何かを考え始めた様だった。
見つかってよかった。
そう言い立ち去ろうとするとおばあさんが言葉をかぶせてくる。
「あなた……お名前はなんていうの?」
「えっと、名乗るほどの者じゃないですよ?」
そう返すと、いいかいいからお名前は?と迫ってきた。
その剣幕に押され「ル、ルナって言います」と返すと。
「ルナちゃんね……あなた、私のおうちにおいでなさい」
そう、言った。
それと同時に、ポップ音が2つ鳴る。
一つはクエスト完了の報告。取得経験値などが表記されていた。
もう一つは、新たなクエスト発生表示だった。
New「おばあさんの家にいこう」
……そんなクエストあっていいのか。
詳しいクエスト内容は見ないまま、クエスト名に突っ込む。
でもそうゆう事なら……。
「……では、お言葉に甘えさせてもらいますが。どうしてでしょう?」
返答次第では、お気持ちだけで結構と断りクエストも無視するつもりだった。
さすがに、人助けをしたのにクエスト目的でおいそれとご迷惑をかけるわけにはいかない。
濡れた服も、そこらへんで乾かせば大丈夫だろう……とそう考えていた。
「あなた、水路に落っこちたでしょう?さっき水の音がしたのはそのせいね……?杖が濡れてるわ。それに、女の子のあなたが、びしょびしょのまま居てみなさい……男はみなけだものよ……」
と、おばあさんがいい
「服が乾くまで内においでなさい……。こんな親切な人になら喜んでお風呂も貸してあげるわ」
いいから、いいからと有無を問う前に、おばあさんは杖を持ち私の手を引いて、歩いていくのだった。
そう歩かないうちに、うちにたどり着いたようで「どうぞ上がってください」と扉を開け、おばあさんが中に入っていく。
(こんなはずじゃなかったんだけどなぁ)
と思いながらも、「お邪魔します」と、おばあさんのお家へと足を踏み入れた。
「少し待ってなさいね」
と、おばさんは何か拭く物をと、タオルを取りに行ったようだ。
その間、どうしたものかなぁ……と考え。
とりあえず一度、扉の外に出て服の裾を絞るのだった。
「うわぁ……大分びちょびちょだよぉ……」
絞るごとに水が服から地面へと落ちていく。
それを数回繰り返すと、ある程度絞れたようだが、肌にまとわりつく気持ち悪さが気になる。
「私って、意外とドジなのかなぁ……」
そう言っていると、おばあさんがタオルを取ってきたようで。
「これで、拭いてちょうだい」と手渡す。
それから、これね……と上着とズボンを手渡してくる。
「娘の物なんだけども……入るかしら?」
ともかく、体を温めなきゃな。とお風呂へと案内し、ゆっくりね……とおばあさんは言い、退席した。
「んー……ここまで、してもらっていいのかなぁ」
そうはいっても、冷えていく体には耐えきれず、衣服を脱ぎお風呂につかる。
心地好い温かさに交じって何かのハーブ?の様な匂いが漂う。
……心底、体が温まる。
「ふぅ……なんだかリアルにいるみたいだなぁ」
ぼそっと溢し、そっと頭まで湯船に沈める。
…………
……
それから数十分して、お風呂から上がった私は、あらかじめ渡されていた服にそでを通す。
「う……ちょっと大きいかも」
サイズは、少し大きくゆるっとした感じになってしまった。
着ていて動きにくくはないので、許容範囲。
むしろありがたいと思いながら、おばあさんが退席した方へと歩いていく。
「おばあさん……見ず知らずの私にお風呂までありがとうございます……」
と、声をかける。
「私も助けてもらったんだしお互い様ね……」
と、おばあさんはこちらを見て微笑んだ。
それから席に座りなさいな。
とテーブルへと手招きされ、その通りに座る。
「まず、自己紹介しなきゃね……あなたにだけ名乗らせておいて失礼になっちゃったわね」
そういい、おばあさんは名前を言う。
「私の名前は……アーネットよ……見ての通りしがないおばあさんさね」
と、それから今日はもう夜も遅いから止まっていきなさい。これも助けてくれたお礼よ。
そういい、温かいミルクを出してくれた。
……お言葉に甘えた私は、アーネットさんとお話をしながら夜を過ごしてゆく。
娘さんが嫁に行ってから、あんまり顔を出さないだとか。
私が娘さんの小さい頃にそっくりだとか……多くはアーネットさんのお話を聞く側だったけども。
それもそれで、この世界でしかできない体験なんだなぁ……と思うと同時に。
この世界の人たちもまた、この時間に≪生きている≫のだと確かに感じさせるクエストだった。