session1:幕開け
『非日常を現実に』
そんなキャッチフレーズを掲げCβT、OβTより話題を集めるVRMMO≪Grow a tree Online≫
――通称【GTO】というオンラインゲームがある。
開発、発売元はウォールプタス社という会社で、開発事項は極秘となっているが……
可能な限りのリアリティを追求。
人に備わっている五感全てをほぼ実現しているという、とんでもないゲームである。
そのゲームの世界観はエリア毎に分かれている為、とても一言では現し切れないらしいが……
要点だけをまとめれば、剣や魔法、モンスターが跋扈するファンタジー世界というよくある物らしい。
だが、体験した人すべての人は必ず、笑い、手を叩き口を揃えてこう言ったらしい。
「キャッチフレーズ通りの、とんでもない世界だ」
その世界は従来のMMOやRPGとは違い、十人いれば10通以上の過ごし方ができると言う程、世界の広さから始め、NPCのAI機構……戦闘スキル……その派生スキルと用意されているらしい。
そのあまりにも膨大で、リアリティの高いゲーム故……CβT.OβTを通しても、どんな過ごし方が正解で、どんな戦闘スタイルがプレイしやすいのかすら分からないらしい。
……まぁ、そのどれもが正解なんだろうけど。
そして、明日、正式サービス開始を控えたGTOに期待を膨らまし……
今、ネットの掲示板やテストプレイヤーのブログ等を巡り情報を収集しているのが私こと、望月結花である。
昔から、大のゲーム好きであり色々なゲームをやってきた私は。
当然、このゲームのCβTに応募したが、結果は惨敗。
そして、普段の高校生という学業の合間に行われたOβTは、悲しい事に期末テストと被り……止む無く学業を優先。結果、涙を呑む形で正式サービスを待つ結果となった。
その間は、他のゲームをしていたり、テストプレイヤーのブログを巡り情報を集めたり……していたが、実際にプレイができない……という事からフラストレーションとゲームへの思いは日々、募っていくばかりだった。
だけど、それも今日で終わり!!
嫌な期末テストは終わり世間は丁度、冬休みの期間に入った!連休が続く為【GTO】三昧な日々を過ごすことができる。
それが、我慢してた物を全て帳消しにしてくれる。
本当にそう思った。
……でも、やっぱり高鳴る気持ちは無視できず、明日の正式サービス開始と同時にログインができるよう準備を始める。
まずPCデスクの横に置いてある段ボール箱の中からウォールプタス社製のGTO専用のVRギアとカセットパッケージを手元に手繰り寄せ、VRギアを見ながら、予約日当日の事を思い返す。
……このVRギアを買う為に本当熾烈な争いを戦い抜いた。
うん百人という行列を潜り抜け……あと数名で予約終了という所で何とか手にしたものだ。
これを買う為に失う時間、失うものは多かったけど……
特に、クリスマスプレゼントとか……お年玉とか。
思い返すと、目に涙が浮かぶ……。
「でも、後悔はしてないし!? 」
誰に言うわけでもなく、虚空に発する。
それから思い出したかのように、VRギアを慎重に梱包から取り出しベッドに置き、中に付随されている説明書を読む。
『このヘッドギアは催眠誘導型の新型ヘッドギアです。ベッド上など、眠っていても他者に迷惑をかけない場所でご利用ください。また、安全装置として使用者の生命維持や体内活動に異変が生じた際はいかなる状況でも、強制的にゲームからログアウトする事がある事をご了承ください』
使用時の注意から始まり、使い方なども書いてあったが、明日の朝でもいいかと……
その注意書きだけを読み机の上に置いた。
催眠誘導型とは何か。
簡単に言えば、夢の中でゲームを行えるものだと思ってくれればいい。
難しく言うと、キリがないし……。
ともかくその装置をベッドに置き……
私は、準備を万端にしてからベッドの中に潜り込む。
「はぁ……私はきっとこの日を待つために生まれてきたんだわ!! 」
そう言い、今か……今かと待ちきれない思いを胸に。
微睡みの中に意識を落としていった。
こんなゲームでないかなぁ……