王様のおかし!
更新が滞りまくってすみません。
どうか皆様が今年一年、幸せに満たされますようにm(_ _)m
「「わ〜っ!入ってた〜!」」
一口づつ、大切そうにちびちびと特別なケーキを食べ進めていたアルゴス君とマルケス君が、真ん丸お目目にしながらも嬉しそうに人形をつまみ上げた。
日本ではなく、ヨーロッパのキリスト教のお祝い、一月六日の公現祭に食べるガレット・デ・ロアを、せっかくの新年だからとこどもたちにどういう仕掛けがあるのか説明しながら出してみた。
このお菓子は「王様のケーキ」と呼ばれ、フェーブと呼ばれる陶器の人形が入ったピースをみごと選んだ者は、当日、紙の王冠を被って王様として扱われ、解釈も諸説あるのだが、一年間、幸福に包まれるとも、幸せになれるとも、言われているそれをフェーブ(陶器の人形)を二つ入れて、アルゴス君とマルケス君が必ず選ぶように、小さな狼を模したクッキーを二つ乗せて焼いてみたのだ。フェーブは市場に行ったときにそれらしいものを選んで買っておいた。
はい、そこ。ヤラセとか言わない。子供に夢を見せて何がワルい。
「すごいね〜。はい。アルゴス君とマルケス君は今日一日王様だよ〜」
言いながらディーバさんと手分けして、嬉しそうにお互いのフェーブを交換してニコニコしているこどもたちに紙の王冠を被せる。
「「ぅわ〜!ホントに〜?」」
嬉しくてたまらないと全身でうったえてくるアルゴス君とマルケス君が愛しくてしかたない。それはこの場に居る大人全員が同じらしく、皆、笑顔が止まらない。
「でも、俺たちが選んだのに、人形が入ってたの、スゴすぎ!!」
「ママが僕たちにどうぞってしてないのにね〜」
「ミーナが選んだわけではないのだから、お前たちの運が強かったのだろう」
王様の言葉にこどもたちは照れながら、自分たちの頭に載った紙の王冠を嬉しそうにサワサワと触っている。
「カッコいいよな〜」
「は〜。素敵すぎ〜」
ニコニコなこどもたちは急に真顔になり、二人で顔を見合わせて力強く頷いて椅子を降りた。
「「はい!」」
アルゴス君の王冠は私の頭に、マルケス君の王冠は王様の頭にのせられた。
「これでママも幸せいっぱいだ!」
「うん!!皆で幸せ〜」
「ありがとう〜!アルゴス君とマルケス君は本当に優しい良い子〜」
アルゴス君を抱き締めれば、マルケス君は王様に頭を撫でられて笑っていた。
「はい!ソルゴスも〜」
「はい!ディーバ」
「ありがとうございます」
「あ、ありが、どぅござっ……」
私たちから離れたこどもたちはソルゴスさんとディーバさんの頭にも同じように王冠をのせている。どうやら、この場に居る全員に幸せのお裾分けをしようと考えてくれたようだ。
ああ。もう。なんて優しくて可愛い生き物なんだろう。何があっても、私がこの子達の味方になる。だけども盲目的な愚かなものではなく、彼らが罪を犯したら一緒に罪を償う、そんな関係でいたい。
にこにこと笑っているこどもたちに「ガレット・デ・ロアの祝福」が確実に降り注いだ事を信じながら、私は良い年になると期待に胸を膨らませた。
「じゃ!次は厨房だな!!」
「「お〜!」」
どうやら、城中の皆にフェーブの魔法を伝えるつもりな子供たちを追って、駆け出しながら、この細やかでいて最高の幸せをそっと噛み締めた。