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アニメ・ゲーム哲学

一度世に出たものは取り消せない 或いは信頼というエントロピー

作者: 忠柚木烈
掲載日:2026/04/10

 作品は誰のものか。


 作品はファンのモノだ。

 なんて答えもあるかもしれないが。

 所有者は明らかに作り手側だ。


 しかしその事は。

 キャラを好き勝手できる事を意味しない。

 正確には好き勝手した場合には、ファンの反応を自由にはできない。


 筆者がこの事で真っ先に連想するのは。

 魔神英雄伝ワタルの虎王だ。


 彼の役割はライバル。

 敵のボスの息子、魔界王子で。

 主人公の旅を阻む、強敵として立ちはだかり。

 最後には力尽き死んでしまう。


 しかしその正体は、世界を統べる女王の息子で。

 実は虎王は敵に操られ、利用されていた姿だった。


 ラストには本来の姿、翔龍子として復活。

 物語は大団円を迎える。


 ……え?

 それの何が問題なんだ?

 ハッピーエンドじゃないかって?


 実は放映当時、かなりモメた。


 作り手側としては。

 真の姿に戻れたから良かったね、救われた。

 って認識だった。


 だけどファンの目線から見て。

 翔龍子は虎王とは別のキャラにしか見えない。

 虎王は今までの経緯があって好きになったのに。

 ポッと出の知らないキャラが出てきた。


 むしろそれどころか。

 虎王がただ死んだだけならまだしも。

 俺が本物なんだから、もう虎王は要らないだろ、と。

 ファンが愛した虎王という、キャラすら取り上げた大悪党だ。


 そういう理屈で。

 このラストは当時の虎王ファンからは。

 大ブーイングが巻き起こる事となった。


 ちなみにこの後。

 原作者による虎王が主役のスピンオフ小説が始まるが。


 ハッピーエンドのつもりだったのに、受け入れられなかった事。

 虎王というキャラは親元を離れ、強く愛されていた事。

 それらを強く認識した旨が記されている。

 たしか贖罪とまで書かれていた気がする。




 そして、この手の事例には、枚挙に暇がない。

 読者の皆さんにも、思い浮かぶものがあるはずだ。


 週刊少年マガジンで連載されていたマンガの涼風。

 人気のあったヒロインが、作者の都合で消されたり。

 作品そのもののラストだったり。


 一世を風靡した覇権アニメの涼宮ハルヒの憂鬱。

 エンドレスエイトの演出で。

 深刻なファン離れを迎えたり。


 当時大流行で話題だった艦これのアニメ。

 取ってつけたようなキャラの死。


 大人気だったアニメけものフレンズ。

 1期で築いた全てを。

 葬り去るかのような2期の内容。


 細かいものも含めれば。

 もっといくらでもあるだろう。


 コレはアイドルとか女性声優の。

 熱愛報道などのスキャンダルにも似ている。


 清純だと思っていたあの子が。

 実はそうではなかったなんて。

 そんな期待の裏切り。


 こういうものは、今風な言葉で言えば。

 厄介オタクだとか。

 解釈違いだとか呼ばれるのだろう。


 世間ではそういう反応をする人は。

 感情が大きすぎて。

 自分の思い描くものこそ現実であるべきと叫ぶ。

 身勝手で我儘な人とカテゴライズしがちだ。


 だが、本当に切り捨てていいのだろうか。


 理解できないジャンルの事だから。

 他人事と思っているだけで。

 もしもこれが自分が興味を持つコンテンツなら。

 とてもたまったものではないはずだ。


 誰だって怒るだろう。

 事前の説明と違っていたら。


 清楚を売りにして。

 全然モテませんよーだの。

 彼氏なんてできたことないですーだの。


 言うなればそれは。

 景品表示法違反だったり。

 優良誤認なわけだ。


 商品価値には処女性まで含まれてるわけだから。

 スクープ発覚は、まるで守るつもりのなかった約束。

 空手形でファンを騙した形になる。


 セットで同梱してると説明のあったアイテムが。

 事前の説明なく抜き取られているなんて。

 そりゃ詐欺だ。

 アイテムまで込みで買ったんだし。


 騙されたら誰だって怒る。

 騙された方が悪いは詐欺師の言い分だ。


 騙された方と騙した方なら。

 騙した方が悪いのなんて当然。


 アイドルとか声優とかアニメとか。

 どんなものでも怒り出すオタクなんて気持ち悪い。

 そんな感想を抱く人も多いかもしれないが。

 怒るのは当然だろう。


 なにせファンは払ってる。

 勿論グッズ類の購入とか。

 イベントの参加費用とか。

 少なくないお金を払っている。


 可処分時間の使い方が。

 問われて久しい今の世の中。

 娯楽が溢れ返ったこの時代で。

 数限りある時間を何より費やしている。


 ファンは作り手ではない。

 だからといってコンテンツと無関係ではない。

 むしろ誰より顧客という当事者で。

 金と時間を投資したステークホルダーだ。


 蔑ろにしていい筈がない。

 そっぽを向かれたらもう終わりだ。

 何せ世の中に娯楽は溢れ返っている。

 代わりなんて幾らでもある。


 掴んだファン。

 最早それは契約にも等しい。

 なのに自らの手で切り離す。

 そんなのはただの自殺に等しい。


 客が口を出し過ぎるのも問題だが。

 売り手が勝手に商品仕様を変更したら。

 クレームが入るのは当たり前じゃないか。


 ビジネスであれば当然だろう。

 売り手の都合だけで変えられたら。

 買い手は溜まったものじゃない。


 世に出したキャラの扱いを変更したり。

 暗に処女性を商品価値に含んでいるのにスキャンダル。

 そんな内容物を勝手に抜き取るような真似。

 商品価値を棄損したら、怒られるのは当たり前だ。


 信頼は積み上げるのは難しく。

 崩れ去るのは一瞬とよく言う。


 ありとあらゆるコンテンツは。

 誠実でなければならない。

 期待を裏切ってはならない。


 コンプライアンスが煩い時代。

 それは基本だろう。




 ちなみに殺伐とした糾弾だが。

 実は真逆のいいエピソードもある。


 それはDr.スランプアラレちゃんだ。

 鳥山明先生の代表作。

 アラフォー以上なら誰もが知ってる。

 一世を風靡した大人気作だ。


 その主人公のアラレちゃんは、女の子型のロボットだ。

 そして眼鏡をかけている。


 コレはロボットなのに目が悪い、という。

 ナンセンスギャグのつもりで始めたもので。

 いずれ眼鏡を外す予定だったらしい。


 しかしアラレちゃんは、最後まで眼鏡をしていた。

 これはなぜか。


 実は小さな女の子からのファンレターに。

 こんな事が書いてあったらしい。


 自分は目が悪くて眼鏡をしているのが嫌いだったけど。

 アラレちゃんが眼鏡をしているから好きになれた。


 高度情報化社会のこの世の中。

 一度世に放ったものは。

 良くも悪くも消えないものだ。


 消えない何かを残すなら人間。

 アラレちゃんの眼鏡を残したいものだ。


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