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07 物資回収

 


「総務課長! 食料とかの物資調達なんですが、町内のコンビニや個人商店の運営者と軒並み連絡が取れません……役場の備蓄だけじゃ、今のペースで避難者が増えると4日……いや3日持つかどうか……」


「非常事態だ、家主がいない商店から……悪いとは思うが運び出せるだけの商品を持ってくるしかない。どこの店からどれだけもらったか記録しておけ、あとで清算する。もちろんその店の家主が無事だったら保護して連れて来る。ただし明日以降だ、まだ準備整ってないからな」


「総務課長! 東山小学校から連絡で、避難所設営のために人員と物資をよこしてほしいと!」


「よく電話つながったな……だが役場(ここ)の運営だけでいっぱいいっぱいなんだ、今はそこまでする余裕がない……こちらの状況が落ち着き次第対応するから、先生方と父兄でなんとかしばらく耐えるよう伝えろ。ただし焦ってこっちに移動するのもやめさせろ。到底対応できないし、今の外は移動だけでも危険だ、戦えない子供達が怪物に襲われたら大変なことになる!」


「それと学校関係は次連絡あったら教育委員会に飛ばして。あっちの管轄だから。この非常事態に気にしてられないのはわかるけど、単純に今総務課……っていうか対策本部、人足りてなくて電話対応する余裕もなかなかないから」


「わかりました小林係長!」


「総務課長! 福祉課長から内線です!」


「(ガチャ)はい総務課成田」


『健康福祉の小野寺です。先ほど一時的に電話がつながって、シルバー人材センターの事務所から『助けてくれ』って連絡がありました。一時的に地域のお年寄りや子供達の避難所になってるようなんですが、外が怪物だらけで動けないからと……車庫のマイクロバス出せませんか?』


「シルバーの事務所だと、学校と違って備蓄も多くはないか……動かせないことはないですけど、道中の安全を確保しないとかえって危険です。対応を検討するので少し待ってください」


 町役場、ただいまド修羅場中。

 行政機関として対処しなきゃならないトラブルとその場所が多すぎてパンク寸前……いや、パンクしてなきゃおかしいレベルの騒乱である。

 そんな中、それを見事にさばいている総務課長以下、管理職の皆様には頭が下がる思いだ。


(町民の皆さんも、自分じゃどうにもできないこんな状況じゃ、警察か役場くらいしか頼れるところもないだろうしな……そんで、この町には駐在所はあるけど警察署はないし、その駐在所も無人だったし……そりゃここに駆け込んでくるわ)


 なお、俺と石栗さんもさっき休憩を終えて、修羅場の中を駆け回る側になったところだ。


 石栗さんは総務課所属なので、総務課長や各係長の指示を受けながらあちこち走り回っている。持ち込まれる情報の整理や、避難してきた人の状態確認など、仕事はいくらでもある。


 俺の方はというと、小林係長の指示で、救護スペースの手伝いに回っている。

 避難してきた人達の内、怪我している人達がここに連れて来られる。ここの担当は健康福祉課なんだが、対策本部とタメ張るレベルで忙しい場所なので、ヘルプとして行ってきてくれとさ。


 怪我人の対応は保健士さん達がやってくれてるんだが、中には、怪我してるように見えないのに苦しんでる人も結構な数いて……モンスターの攻撃を受けたんだろうとわかる。

 しかし、存在しない傷に対して薬が効くわけもなく、保健士さん達も手に負えない状況だった。せいぜい氷嚢や濡れタオルで患部を冷やして痛みをごまかすくらいしか――それすら効かないパターンがほとんどだったようだが――できることがなかった。


 ……俺が来るまでは。


「痛い、痛いぃ……腕痛いよぉ!」


「お願いします! うちの子をどうか、どうか助けてあげてください……こんなに泣いて……見ていられないんです……! 私じゃ、どうしたらいいかわからなくて……!」


 痛い、痛い、と辛そうに泣く子供。

 どうか子供を助けてほしい、と懇願する、母親らしき女性。


 子供が痛い、と押さえている腕のところに傷はない。これまでなら、さっき言ったようなやり方くらいしか打てる手がなかったが……


「よーしよく頑張った、いい子だ、偉いぞ。お薬かけるから動くなよ……」


 その子供の腕に、俺は……ゴブリンを倒した時にドロップしたアイテムの1つである、『ポーション』を使ってやる。

 瓶を開けて、ばしゃばしゃと中身の液体を腕にかけてやる。ポーションはデータの存在なので、その子の服や体が濡れることはなく、かけてやったはしから空気にとけるように消えていく。


 全部かけ終えると、液体だけでなく俺が手に持っていた瓶まで消える。

 すると、さっきまで歯を食いしばって耐えていた子供がキョトンとした顔になって。


「すごい……痛くない、なおった! ありがとうお兄さん!」


「おう、どういたしまして!」


 先程までの痛がりようが嘘のように、晴れやかな笑顔で笑ってそう言ってくれた。

 隣にいた母親も喜んで、泣き笑いの表情で何度も頭を下げてくれる。


 これも、俺が来てから明らかになった、このデスゲームにおけるルールの1つなんだが……モンスターによって負わされた『傷のない傷』を治療する方法は、ある。

 それは今のように、モンスターがドロップした『ポーション』とかの薬を使うこと。これによって痛みを消すことができる。


 ここに来る途中でゴブリンもコボルトもしこたま倒してきたし、それでドロップしたアイテムは一応全部回収してある。ポーションも結構な個数手に入っていて、今、俺のストレージの中にほぼ全部回収して入れてある。


 ……ああ、『ストレージ』についても説明まだだったな。

 どうも、データの道具を大量に入手すると勝手に解放される機能みたいで、いわゆる『アイテムボックス』的な感じで、武器防具アイテム問わず一定の個数入れておけるようなんだ。


 だから、リュックサックとかそういうのを持ってなくても、俺1人だけで大量に持ち運べる。

 上限とかはあるかもしれないが、少なくとも今はまだ引っかかってないな。アイテムによっては2ケタ台中盤くらいの個数ゲットしてるんだが。99個とかいけたりするのかも?


 そんなわけで俺は今、今までため込んできた『データ物資』を使って、救護所で活躍させてもらってるわけだが……職員にも避難者にも喜ばれる一方で、問題もすぐに浮かび上がってきていた。


(あれだけ持ってたのに、もう半分溶けた……このままじゃすぐ足りなくなるな)


 次々運ばれてくる、傷のない怪我人達。

 患部がどこであるかに関わらず、適当な場所にポーションをぶっかければたちどころに治るんだが……ポーションはひと瓶まるごと使い切らないと効果を発揮しないようなんだ。子供も大人も関係なく、体格も性別も関係なく、1本丸々消費する。


 なので、『節約する』ってことが難しく……患者1人1人全員治していると、消費スピードが相当早く……このままいくと、もう間もなく枯渇する。


 しかし、怪我人はまだまだ来るだろうし……役場の防衛のために戦ってくれている職員達にも、この先怪我人が出るだろう。

 後者については、俺が拾ってくることができた武器を、ノウハウと一緒に提供してあるので、今までより多少ましかもしれないが。


 早急に補充する必要がある。

 そして、補充先となり得るのは、外にいるモンスター達しかいない。


 俺がそう考えていた、まさにその時だった。


「黒田さん! 総務課長が呼んでます、ちょっと来てください!」


 同僚のそんな声を聴いて、俺は、無事に治って笑う少年の頭をなでていた手を放した。



 ☆☆☆



 何十分かぶりの対策本部に顔を出すと、そこからさらに移動して、通されたのは来客用の応接スペースだった。

 『まあ座ってくれ』と言われたとおりに腰を下ろすと、体が沈む。……普段座ってる職員用のいすよりめっちゃ座り心地いいな……疲れた体に優しい柔らかさだ。


「さて、黒田君……疲れてるところ大変申すまないんだが、頼みたいことがある」


「はい」


 なんとなく予想はつくが……さて、どんな話だろうか?


「知っての通り、この非常事態で、役場には助けを求めて町民の方々が集まってきている。それなりに広くて部屋も多い建物だし、公民館も隣接しているから、収容人数自体はまだまだ余裕がある……しかし、それを支えるための物資が心もとない」


「……『どっちの』備蓄ですか?」


「データじゃない方の備蓄だ。というか、食料や医薬品だよ」


「役場にもそれなりには備蓄はあるんだが、ここまでの事態となると、常備している分だけではとても足りなくてね……早めに『調達』しておかないと、節約しても早晩足りなくなりそうなんだ」


「それを調達に行く、ってことですか」


 さっきちらっと『対策本部』で話してたの聞いた気がするな。町内の個人商店やコンビニ、スーパーなんかから物資を回収してくるって。

 ゾンビサバイバル系のマンガとか映画でも定番の行動パターンだが……それを組織的に行おうってわけだ。効率的でいいと思う。


「運ぶのは他のメンバーがやる。人手がいる作業だからな。黒田君に頼みたいのは……その道中の露払いだ」


 庁用車を使って4人チームで行くらしいが、当然その行き帰りや、積みこんでいる最中もモンスターが襲ってくるだろう。そいつらから他の3人を守るのが俺の役目ってわけだ。

 いや、聞いてみたら、その3人のうち運搬要員は2人で、もう1人は俺と同じ護衛要員らしい。そこにいる真田だが。


 4人で、対策本部が指定してきた個人商店やら何やらを回って、物資を回収しつつ、同中のモンスターを倒してくる。これが俺達の仕事ってわけだ。

 『これらを回って来てくれ』と指定された場所が書かれている地図を見ながら、ふと何かが気にったらしい真田が、総務課長に尋ねる。


「この回る場所って、何か基準があって選んでるんですか? もっと近い店もありますけど……」


「理由はいくつかある。今回選んだのは、食料品を多く取り扱ってる商店や、弁当屋だ。何よりもまず必要なのは食糧、時点で医薬品やその他の生活必需品だからな……足の早いものは、この時期だとすぐに傷んでしまうだろうし、腹に入れられる状態のうちになるべく回収したい」


 それともう1つ、と続ける総務課長。


「このルートで、道中にいる怪物……君達の言い方だと『モンスター』か? それらを片付けながら行ってくれれば……比較的安全に通れるルートが出来上がる。そこを通って、助けを待っている地域の人達を救出できる可能性が高まる」


 そう言われて、改めて地図を見てみると……なるほど、俺達が通る予定のルート上に、いくつかそういう……地域のお年寄りや子供が集まっていそうな場所があるな。

 地域の公民館、その他、災害時の避難場所に指定されてる公園地なんかも、ルート上、あるいはそれに近い位置にある。……これもさっき話してた、シルバー人材センターの事務所もだな。


 物資回収と、町民救出の下準備。2つを同時に行おうってことか。


「警察官や自衛官でもない、君達に対して、このような危険な仕事を任せてしまうことは心苦しいが……他に方法はなく、また時間の猶予もない。どうか……協力してもらいたい」


 そう言って頭を下げる総務課長。

 普段は上司として指示を出す立場のこの人が、年齢も役職も何もかも下の俺達に向かって、こんな風にただ頭を下げて頼み込んできてる。


 この仕事は、本当に危険で……俺達若者というか、一介の地方公務員に任せていい仕事じゃないとわかってるからだろう。明らかに町役場の職員の仕事を逸脱してるもんな……災害時だってことを差し引いてもだ。

 けれど、誰かがやらないわけにはいかないから……俺達にそれを頼んでるわけだ。体力があってフットワークも軽い、こういう仕事に向いている俺達に。


(……つってもまあ、俺は無敵だから……危険なのはその他の3人なんだが)


 俺と真田は、一瞬だけ視線を交わした後、総務課長に向き直って答える。


「わかりました、やります」


「このまま何もしないでいたら干上がっちまいますもんね」


「……すまないな、ありがとう」


 そう言って顔を上げた総務課長は、再び地図に目を落としつつ、指示をくれた。


「さっき言った通り、やることは単純だ。道中にいるモンスターを、可能な限り全て倒しつつ、食料を中心に物資を回収して来てくれ。それと、暗くなる前に帰ってくるようにしてくれ。この混乱だ、いつ電気が止まってもおかしくない……街灯が点かなくなったら、移動するだけでも危険度が段違いに上がるだろうからな」


「なるほど……今はまだ使えますけど、供給元が稼働できなくなったらわかりませんね」


「そのあたりの情報も集めてもらってるんだが……中々見つからなくてね」


「……それと個人的には、夜になるとモンスターがどうなるか、って点も心配っすね」


 そう言うと、総務課長と係長は『?』みたいな表情になった一方で、隣に座ってる真田は『ああ、確かに』みたいな感じになった。俺の言いたいことが理解できたらしい。


「ゲームだと、夜になると出てくるモンスターが変わるとか、モンスターが昼間よりも強力になるってパターンもあるんですよ。そうならないといいな……と」


「なるほど、夜行性みたいなものか……確かに注意しなければならないな」


「あ、すいません俺からも1つ、心配な点というか……今町にいるモンスターって、リポップすんのかな、と」


「リポップ?」


「再出現のことっすよ。これもゲームの中の話になりますけど、野良のモンスターって、倒しても時間がたつとまた復活して同じ場所に現れることが多いんで。いや、もちろんゲームの設定によるんですけどね?」


 あー……そっちの心配もしなきゃいけないのか。言われてみりゃ当然の懸念だ。

 サバイバル系のゲームなら、一度倒したモンスターは復活しないってパターンも多いが、RPGとかなら、野良モンスターなんてその辺歩いてりゃ無限に湧いて出てくるからな……果たしてこの世界はどっちに準拠してるのか……。


 もしRPGみたいにリポップするなら、安全なルートを作るための露払いがそもそも意味がなくなる可能性がある……。要救助者を助けるのがより困難になるな。


 けど、リポップしない場合でも、メリットばかりじゃないことに今俺、気づいてしまった。

 モンスターの数に限りがあるってことは、そいつらを倒して手に入れられる『データの物資』に上限ができてしまうってことだ。今でさえ足りなくなりそうな『ポーション』や、武器の耐久値を復活させる『砥石』なんかの消耗品を補充できないのは……それはそれで痛い。


 総務課長達も、頭が痛くなる情報が1つ増えてしまったからか、額に手をやってため息をつく。

 しかし、『夜行性』といいリポップといい、確かに危惧しなければならない可能性であることは確かなので、どう対処するべきか考えることにしたようだった。


 ただ、もしリポップするなら、役場周辺に再湧きしたゴブリンやコボルトが、また役場入り口に押しかけてきて防衛戦が勃発しててもおかしくない。

 今んとこそうなる気配はなくて、散発的に1~2匹が襲ってきてるだけのようだ。番をしてる職員達で十分対応できてるようだし……リポップはしない可能性はある、と思う。


 物資回収に行った時、もし余裕があれば……俺と石栗さんが通ってきたルートを少しなぞってみるのもいいかもしれない。だいたい敵は倒しながら来たから、あのへんが過疎化してれば……1つの目安ないし情報源にはなるかもな。



 ☆☆☆



 そこから3時間弱。

 時刻は午後5時30分過ぎ。


 暗くなるより前に、俺達はどうにか、ミッションを遂行することができた。


 やったことは単純というか……指示されたことそのまんまだったので、省かせてもらう。同じことの繰り返しだったからな。


 事前に指示されていた通りに町内の各所を――町内全域ではなく、役場から近いエリアに限ってだが――回り、個人商店や弁当屋などを回って、物資を回収していく。


 その際、途中にいるモンスターはなるべく……というか、逃げられたもの以外は全部討伐した。

 幸い、俺が昼間に戦ったようなボス級の敵……ゴブリンキングやコボルトロードみたいな敵は出なかったので、楽だった。木っ端のゴブリンやコボルトなんかは、俺の棍棒で一撃だしな。


 代わりに、というわけじゃないが……今まで見ていた、ゴブリン系やコボルト系以外の敵とも出くわし、交戦した。

 探索範囲を広げたから、その分、色々な魔物と出くわしたんだとは思う。


 今回新たに見つけて戦ったのは、犬や狼みたいな動物型のモンスターだった。

 こいつらは、単純な攻撃力で言えばゴブリンとかよりも弱いんだが……すばしっこい上に的が小さい(というか位置が低い)ので、攻撃を当てづらくて少し苦労した。


 が、動きは速いが単純だし、頭もそこまでよくはないので……俺が無敵なのを生かして、わざと隙だらけにして噛みついてこさせて、向こうから近づいてきて攻撃モーションに入ったところを、それに合わせてスイング、ホームランするつもりでぶん殴ったら割と簡単に倒せることに気づいた。


 データのモンスターらしく、先に俺に襲い掛かってきた連中が次々にそうやって倒されてるにも関わらず、全く学習せず後続も全部同じように突っ込んできてくれるのは楽だったな。


 なお、動物型のモンスターは、犬・狼タイプ以外にも、蛇や牛、鳥みたいなものが出てきた。

 牛は体が大きい分なのかタフで、2~3回か殴らないと倒せなかったし、蛇は這って動くから犬以上に攻撃が当てにくくて苦労した。

 ……あと、心配だったのが、蛇系のモンスターって、ゲームだと毒持ってること多いよな? 俺は無敵だから関係ないけど、他の奴が攻撃食らってたらと思うと少し不安になった。


 けど、一番面倒くさかったのは鳥系だった。攻撃性能は多分一番弱いんだが、飛んでるから攻撃できないのが面倒というかもどかしいというか……近づいてくるのを待って、タイミングを逃さずにホームランしないとけなかったからな。

 しかも、攻撃できないからヘイトも稼げなくて、結果、前衛の俺を無視して車や他のメンバーを襲いに行くこともあったから焦った焦った。真田が対処してくれたけど。


 そんな感じで色々な敵と戦うことになったわけだが、細かい戦い方はともかく、敵に出くわした場合の対処手順はだいたいいつも同じようにしていた。


 まず、敵が見えた時点で俺が車から降り、突っ込んでいってさっさと退治する。わざと派手に戦って注目を集めて、敵を全部俺に向かってこさせる……車の方に行かせないように。

 そして安全になったら車に追いついてもらって、乗って……という感じで進んでいた。


 ここまで慎重に進むのには、もちろん理由がある。人員の危険度とはまた別に。

 なぜか知らないが、どうもあいつらの攻撃、自動車を含む電子機器類に命中すると、それを狂わせる効果があるようなんだよな。


 それらは『現実』の物質だから、人体と同じように、攻撃によって物理的に傷ついたり、壊れたりすることはない。

 しかし、動かなくなったり操作がおぼつかなくなったり、動作不良を起こすようなのだ。石栗さんもそんな感じの光景を見たって言ってたな。


 まるで、『機械がモンスターに攻撃された時の破損』を、疑似的に再現しているかのように……『自分は今の攻撃で壊れました』と主張するかのように、動かなくなってしまう。

 サイズ差による頑丈さみたいなのもその『現実のダメージに例えた場合』に準拠しているきらいがある。小さいゴブリンやコボルトの攻撃で、大きな自動車が一発で動かなくなるなんてことはないんだが、大きなモンスター……ゴブリンキング級とかになると一発でアウトだ。


 町内を回っている最中も、おそらくはそういう理由で動かなくなった車や機械に何度も出くわした。……人体と同じで、あれらも何か、データのアイテムを使うと直ったりするんだろうか。『リペアキット』とか、そういう系の名前のを。


 とか考えながら戦っていたら、マジで『リペアキット』って名前のアイテムを手に入れてしまったので、後で試そうと思う。総務課長達に報告してから、許可貰って、立ち合いの上で。


 なお今回、俺と同様に、真田が『護衛役』としてこの回収行脚に同行してるわけだが……手に持っている武器は、さっきまで使ってた金属バットではない。

 刃渡りが1m弱くらいある、大きな曲刀だ。


 アイテム名は『犬人将のタルワール』。

 名前からわかるかもしれないが、石栗さんを助けた時に倒したコボルドロードからドロップした武器だ。……いや、この表記だとアイツ、『コボルドジェネラル』とかだったのかな、名前。

 アイテムはアイコン選択で内容を見れるが、モンスターの情報を見る方法はまだわかってないので、名前も外見イメージでなんとなく呼んでるだけなんだよな。


 で、その曲刀(タルワール)を真田に持たせた上で、真田には車の方の守りを任せてた。

 さっきちらっと言ったように、俺が突っ込んでいって敵を倒している間に、別なモンスターが車を襲ってくることもあったからな。そういう時は、真田に頑張ってもらってたのだ。


 この剣も、ゴブリンキングの棍棒と同じくらい攻撃力が高く、雑魚のゴブリンやコボルト程度なら一撃で葬れた。

 真田自身、運動部出身ってこともあって反射神経もよくて、敵に攻撃される前に先手必勝で薙ぎ払って倒すことができてたので、こちらへの被害はないままにすすむことができていた。


 ……1回ミスって、真田のタルワールが車を巻き込んで振るわれそうになってたのを見た時は、思わず『バカ気をつけろアホ!』って怒鳴っちまったが。

 モンスターの攻撃で車や電子機器が狂うんだ。同じデータの存在の、武器での攻撃でも同じことにならないとも限らないからな。魔物同士のフレンドリーファイアとかもあったし。

 味方の攻撃で貴重な庁用車が破損とか、笑えんにもほどがある。


 まあ、命のかかったやり取りの最中で、緊張して視野も狭くなってたんだろうし……うるさく言うつもりはないけどな。ともかく、今後気を付けてくれ。


 それを繰り返して、目的地の個人商店他を1つ1つ回っていった。


 6件回ったが、そのうち、5件はもぬけの殻だった。どこかに避難したか……あるいは、外に出て襲われてしまったか。

 店の周辺に倒れている様子はなかったので、避難したんだと思いたいが。


 残る1件では、店の中、奥の方にこもって震えている店主のおばあちゃんを見つけることができた。


 そこでは、店頭の商品を回収させてもらうのと同時に、おばあちゃんも回収……もとい、保護した。『役場に避難できますから一緒に行きましょう』ってきちんと同意貰って。

 あと、商品代金は後で払うから、って言ったら、『そんなもん要らねぇ、困ってる人のために使ってやってくれ』と。ええ人や……。


 おばあさんの優しさと気前の良さに触れて士気が微増した状態で、俺達は一旦役場に戻って、おばあさんと積み荷を降ろしてから再出発。

 同じような感じで、荷台がいっぱいになったら役場に戻って届けて、を繰り返して……約3時間で全ての目標地点から物資を回収し、要保護者を救助することに成功したわけだ。


 そしてその結果だが……どうも、モンスターのリポップは、少なくとも短時間のうちにはなさそうだ。

 行く時に通ったルートを帰りも一部通って役場に戻ったんだが、その時には、往路で戦ったような数はおらず、いてもせいぜいその数分の一程度の数しかいなかった。1匹もいなかったエリアの方が多かったくらいだ。

 また、総務課長にあらかじめ許可取った上で、昼間に俺が石栗さんと一緒に通った場所を一部通って見てきたんだが、そこも同じような感じだった。


 恐らくだが、モンスターは徐々に出現しているのではなく……昼間、町中……いや、国中・世界中に一斉に出現して……その後はその出現したモンスターがそれぞれ移動しているだけなんじゃないだろうか。

 確定ではないだろうが、その可能性が高い気がする。


 そうであってくれれば、少しは気が楽だ。今世に出ているモンスターを全て倒しきれば、後は平和になるわけだから。


 ……まあ、今復活しなくても、朝になったら復活するとか、夜になったら別なモンスターが湧くとか、あるいは、全く予想外の別な法則でポップするとかの可能性もあるわけだし……過度な期待はしない方がいい気がするが。




 役場に帰ると、出る前よりも避難してきた人が増えていた。

 自力でたどり着いた人もそうだが、総務課長の指示で、俺達が安全にしたルートを使って、何カ所かの避難場所からそこに居た人達を回収してきたんだそうだ。


 俺達が回収してきた物資がさっそく役に立っていて、お腹を空かせた人達の腹を満たしていた。

 ……訂正。『満たす』までは行かなかっただろうな……節約して、1人分の、1回当たりの食事量は絞ってたようだから。今後のことを考えて。


 それらを横目に俺達は『対策本部』まで戻り、総務課長に今回の成果や、見回ってきてわかったことなどを報告する。

 それらの情報を元に、明日以降どう動くか決めるそうだ。


 それと、今回の回収作業の最中にモンスターを倒して回って、そこで回収できたドロップアイテムについても渡しておく。

 総務課長にじゃなくて、ストレージでの保管役を担当してくれる職員に。石栗さんもその1人だった。


 薬とか、砥石とか、色々な物資を回収できた――使用用途がわからないものも混じってたが――が……その中でも目玉と呼べるものが1つ。


「これは……弓矢か?」


「モンスターの中に、コレを使って遠距離から攻撃して来るやべーのがいまして……そいつ倒したらドロップしたんです。こっちも遠距離からモンスターを攻撃するのに使えそうです」


 ちなみにコレ、今日の探索の最後の方で主に手に入ったんだが……もうちょっと早く入手出来てたら、さっき話した鳥型モンスターとの戦いで大いに活躍してくれただろうに、と思う。


「で、こっちが弓を手に入れた途端、普通のドロップに加えて矢もドロップされ始めました。結構貯まりましたんで、見張り番の職員達に配るのがいいんじゃないかと思います」


 ゲームによっては……持っている武器やアイテムに合わせて、敵モンスターが落とすアイテムが変化するものもある。


 例えば、武器として拳銃を持っている場合、その拳銃に装填できる弾丸をドロップしたりするが……持っていなければドロップしない、とか。

 新たに追加でショットガンを手に入れると、今度はショットガンの弾をドロップするようになったりとか。そういう、プレーヤーの今の状況に都合のいい法則があったりするのだ。


 今回のこれもそうなんだろうな。武器として弓を手に入れたから、その武器とセットで使える矢がドロップされ始めた。

 ……ということは、明日以降、ストレージに弓を持っていないと矢はドロップされないんだろうか。調べてみる必要があるかもだな。


 あと、今の例え話でふと思いついたんだが……できれば銃火器とか出て来てくれないもんかね? あると多分、防衛戦闘がすげー楽になると思うんだが。フレンドリーファイアが怖いけど。

 ……今のところ、ファンタジーな世界観の怪物とばかり出くわしてるから……望み薄かねえ。





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― 新着の感想 ―
ここまで読みましたが ゴスペルギアを切除する必要があるって周知されるまで 不適合者とまだ埋め込んでいない子供以外死にそうですね
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