06 出勤
ゴブリンキングと同じように、ノーガードからの急所タコ殴りで、コボルトキング(仮)も迅速に処理したわけだが。
「あ、ありがとうございます……もう、もうダメかと思った……っ!」
「あ、ああ、うん……よかったよ無事で」
よほど怖かったんだろうな。俺がコボルトキングを粉砕した直後に……安全になったと見るや、飛びついてきてそのまま抱き着かれた。そして、俺の胸に顔を押し付けて、そのままぽろぽろと涙を流し始めて……
女の子に抱き着かれるなんてのは、男としては嬉しいシチュエーションなのかもしれないが……ガチの命の危機で、ガチで怖かったわけだからな。邪な感想が出てくる余裕がない。
震えながら泣き続ける石栗さんに、黙って胸を貸しておくこと数分。
ようやく落ち着いたらしい彼女に話を聞くと……色んな用事であちこちを回っていた最中に、この異常事態が始まったらしい。
運悪く車から降りていたタイミングだったので、必死で逃げ隠れしていたそうだ。
そして、その車はこのすぐ近くに停めてあるらしいので、急いでそこに戻ることに。
俺が乗ってきた自転車を着けられるサイズの奴だったので、そのまま俺もそれに乗って、一緒に役場へ向かうことになった。
お互いに運がよかったな……俺は急いで役場に行く足ができて、彼女は単純に助かって。
ただ、役場に向かっている最中に、いくつか気になること、もとい、心配になることを聞かされたんだが……。
「え? 車……ってか、機械が?」
「はい。熊みたいなモンスターに攻撃されたら、動かなくなったみたいで……そのまま……。何が起こったのかはわからないんですけど、私の目には、攻撃されて壊れたように見えました」
数分前、彼女の目の前で起こったことらしいんだが……モンスターに攻撃された乗用車が、その場で煙を噴いて動かなくなったという。ゴスペルギアを持ってる生身の人間だけじゃなく、それとは何の関係もない機械まで、モンスターに攻撃されて影響を受けたってことか? ……データでしかないはずのモンスターの攻撃を受けて?
ますますわからなくなってきたな……本当に、一体何が起こってるんだ……?
幸いにも、俺達が乗る車は、モンスターに襲われることなく――見かけはしたけどそのまま逃げて振り切れた――そのまま役場まで行くことができた。
が、到着したその役場で、今まさにモンスターと職員達……俺達の同僚達が必死に戦っているところだった。
正面入り口にゴブリンやらコボルトが何匹も集まっていて、それを職員達が……色々な武器を使って追い散らそうとしている。
加えて、その辺から急遽持ってきたのであろう長机や椅子を使ってバリケードみたいなものも作ってるようだ。
「昔のゾンビ映画やモンスターパニック系の映画と同じようなことしてるな……状況が似たような感じだと、人間って取れる対応も似通ってくんのかね」
「のんきなこと言ってる場合じゃないですよ! 早く私達も加勢しないと……見るからに苦戦してる感じです。このままじゃ……」
「わかってる。……つっても、君戦えないだろ? 俺が行ってくるから、しばらくこのまま車で待ってろよ」
「は、はい……すいません、威勢のいいこと言っておいて、人任せで……」
「いいっていいって、適材適所適材適所」
さて……んじゃ、ちょっくら無双してきますか。
近くで見ると状況がもっとよく分かった。状況がすさまじく悪いということがよくわかった。
入り口で戦ってる職員達は、役場に備え付けの武器、あるいは武器になりそうなものを引っ張り出してきて振り回していた。
不審者対策用の『さすまた』や、資材庫にあったんであろう鉄パイプを槍みたいに使って、槍衾?を作って……作ってるつもり、何だろうなあれは。あんまり形になってないが。
防犯対策の訓練は定期的に行われてるし、俺も何度も参加してるが……不審者の取り押さえ方は訓練してても。こんなモンスターパニックへの対処法や、集団戦闘の方法なんて訓練するわけじゃないしな……。上手く動けなくても、当然といえば当然だ。
突き出して振り回して威嚇するも、何匹かその隙間を縫って近づいてくるゴブリンに刺されたり殴られたりして、悲鳴を上げてもだえ苦しむ職員が何人も出ていた。
同僚の痛々しい姿を前に、自然と俺の……棍棒を握る(握ってないけど)手にも力が入る。よーし……これ以上はもう好き勝手させねーぞ!
「お疲れ様でェーっす!!」
ゴブリンやコボルトの集団の背後から近づいて、なるべく多くを巻き込むように、思いっきり棍棒を振り抜いた。
そのたった一撃で、鉄パイプやさすまたでは倒せず、進行を押しとどめるのが精いっぱいだったモンスター達が、粉々に粉砕されて一掃される。
見晴らしがよくなった向こう側で、見知った連中が、いきなりのことに驚いてキョトンとした顔になっていた。
「おつ……おまっ、黒田か!? 無事だったのか!」
「おう! この通り元気だよ……そっちは大変そうだな、真田!」
『キョトン』からいち早く復帰して俺に話しかけてきたのは、短く刈り込んだ黒髪に、タレ目の目の下に薄い隈があり、色白の肌にそばかすが特徴的な顔の、若い男性職員。
名前は真田勝利。俺の同僚であり、同期でこの役場に入庁した友人の1人である。
手に持っているのは、さすまたでも鉄パイプでもなく……金属バットか。アレ確か役場の野球部の備品だな。長すぎる+重すぎる鉄パイプよりは接近戦に向いてるか。
「ははは、おかげさまで……お前確か今日休みだったよな。何、出勤してくれんの?」
「どう考えても休んでる場合じゃねーからな。とりあえず加勢するから、今いる怪物どもさっさと全部片づけるぞ」
「悪い、正直助かる……ってかお前、その手に持ってるえぐい武器何? どっから持ってきた?」
と、俺が持ってる棍棒を見て聞いてくる真田。まあ、確かに何ていうか……見た目からして蛮族御用達というか、近代国家でまず見る機会が無い見た目してるからな。
それに、パッと見だとこれが現実の物質じゃなくて、データの武器だってこともわかりにくいだろうからな。そりゃ、こんな銃刀法違反どころじゃない凶器、どっから持ってきたんだって思うだろう。
その辺の説明は……まあ後回しだ。まずは今言った通り、この場をどうにかしないと……ゆっくり話もできん。
☆☆☆
役場入り口前にいたモンスター達を全部片づけた後は、諸々の後始末――負傷者の救護とか、避難してきた市民への説明とか――は他の職員に任せて、俺と石栗さんは、奥に案内された。
疲れた体を引きずって『こっちだ』と先導してくれるのは、真田である。休憩も兼ねて一度後ろに引っ込むそうで……ついでってことで案内してくれてる。
歩いてる途中、ロビーや階段の踊り場など、あちこちに、力なくうずくまったり、恐怖に震えているらしい人達がいた。外で怪物に襲われて避難してきたんだろうな。
その人たちにチラチラ目が行っていた石栗さん。励ましたり声をかけたそうにしていたが……残念ながら、1人1人にそうしていたらキリがないレベルで多かったし、今は急いで奥に行かなきゃいけない。後ろ髪をひかれるような表情になりつつも、足を速めていた。
そんな石栗さんに対し、俺はというと……庁舎内を歩きながら見渡していて、別な感想を抱いていた。
というか、気づいていた。
「職員が少ないな……今日こんなにたくさん休みだったか?」
半ばすっとぼけたように言いながらも……俺は、当たってほしくない予想を頭から追い出せずにいた。
できれば、同じような軽い調子で真田にそれを否定して、笑い飛ばしてほしかったんだが……
「……各課から数人ずつ、これから行く『対策本部』に出てる」
「それにしたって少なすぎだろ……デスクが8割方以上空席になってんぞ。ロビーとかで人員整理してる人を含めても……」
「……帰ってこないんだよ」
……ああ、やっぱりか。
表情こそ大きく変わらないが、押し殺すような声音で、真田は語ってくれた。
「外の様子を見に行ったり、役場の窓から見つけた、襲われてる人を助けに行ったり……そんな風に外に出て行った連中が、ほぼ全員戻ってこない。……そいつらを探しに、あるいは助けに行った連中も、同じように戻らなかった。通信障害で通話アプリも使えなくなったから、そいつらの無事や状況を知る方法がねえ……」
「そんな……」
石栗さんがショックを受けたような顔になって、口元を手で覆ってるが……俺としては、ほぼ予想がそのまま当たった形だったため、意外とは思わなかった。
……できれば当たってほしくなかった予想だけどな。
外に跋扈している、バーチャルの怪物達。
ゲームの中ならただの雑魚であろうゴブリンやコボルトなんかでも、この現実に現れた日には、一般市民にとってどれほどの脅威であるか……今見て来たところなのだ。
抵抗らしい抵抗もできず、連中の牙や凶刃にかかって倒れ、動かなくなってしまった人が、そこら中に転がっているという地獄絵図の中を、俺達は進んできた。
そして、町役場の職員と言えど……その他大勢の一般市民よりもわかりやすく強い、なんてことはない。
であるならば、あの中に飛び込んで無事かって言われると……な。
(どこかに立てこもるなりなんなりして、生きててくれることを祈るしかないか。今は……)
そうしてたどり着いたのは、会議室。
普段は何の変哲もない、名前通りにいろんな会議が行われるだけの部屋だが……今は、刑事ドラマで見たような『捜査本部』みたいなのが設置され、職員達がせわしなく動き回って、この未曾有の事態への対応に追われているところだった。
縦横無尽に行き交う人にぶつからないように注意しつつ、部屋の前の方に向かう。
すると、向こうも近づいてきた俺達の存在に気づいたようで……部下からの報告を聞いている最中だったっぽいが、俺達を、見るや否や、がばっと立ち上がった。
「! 無事だったか、石栗……と……」
「黒田、お前も来たのか!」
そこに居たのは、俺の直属の上司である小林係長と……もう1人。
石栗さんの所属する、総務課のボス、成田総務課長だった。
小林係長の方は、天然パーマの黒髪を、男性にしてはやや長めかな、程度に伸ばしていて、眼鏡をかけた温和そうな雰囲気のおじさん。仕事ができるのはもちろん、面倒見もよく物腰も柔らかで、俺を含む部下達からの人気も高い。
それに対して成田総務課長は、180㎝を超える長身に、年齢相応にしわの寄った、しかしだからこそ威厳というか威圧感?のある顔が特徴的。目は鋭く、なんというか『叩き上げの猛者』感がある、役場職員のトップと言われて納得する存在感の持ち主だった。
真田が言っていた『対策本部』。そのトップに総務課長が座っていることは何も違和感はないが……どっしり構えているように見えた2人のフットワークは存外軽く、俺達2人の姿を見るや否や、周囲の人を押しのける勢いで歩み寄ってきて、
「無事でよかった、2人共……よく帰ってきてくれたな!」
「総務課長、一応真田君もいますよ」
「ああ、もちろんわかっている。彼の無事ももちろん嬉しいとも。だが、この2人は事情が違う……別に、特別扱いや差別とかではないが……わかるだろう?」
俺の両肩をばんばんと叩きながら、ちょっと暑苦しいくらいの勢いでよろこんでくれる総務課長。顔はちょっと怖いけど、いわゆる『気は優しくて力持ち』を地で行く人格者であることを、ここで働いている者なら皆知っている。
名指しで色々言われていた真田がちょっと苦笑しているが、まあさておき。
総務課長、それに小林係長も一緒になって俺と石栗さんに向き直り、『まずは座れ』と言ってくれる。そのとおりに、近くにある椅子に座ると、同じように2人も席について……話し始める。
「さて……黒田、石栗、今言ったばかりだが、本当によく帰ってきてくれた。この目で見たわけではないので、そこまで詳しく知ってはいないが、大変だったことだろう。そのすぐ後で疲れているであろうところにすまんが……外の話を聞かせてほしい」
「外の、話」
「真田君から聞いてるかもしれないけど、色々な理由で外に出て行った職員たちが……軒並み帰ってこない。帰ってきた者もわずかにいるけど、話を聞ける状態じゃなくてね」
「怪我、でもしたんですか?」
「怪我……と言っていいものか」
思い出しているのか、その表情を忌々しげなものにゆがめながら、総務課長は口から……絞り出すように話す。
「体に怪我、外傷は1つもない。いや、転んだ時にできたのであろう擦り傷や切り傷くらいならあるが……本人が訴えるような、泣き叫び、気を触れさせる原因になるような大傷はどこにもない。にも関わらず、彼らは動けなくなり、意識を手放し……死んだ者も、いる」
「職員にも……町民にも、ね」
「っ……!」
……いるのか、死者。職員の中にも。
ここに来るまでに、倒れて動かなくなってる人達を何人も見て来た。
その人達全員について確認したわけじゃないからわからないが、その、町中で倒れてた人達の中にも……脈がなくなって、息をしていない人は、いた。
急いでの確認だったから、ワンチャン俺の勘違いだって線もあったけど……総務課長がここまではっきり言い切るとは……
……死ぬんだな。人。
この、わけのわからないパニックの中で……おそらくは、モンスターの攻撃で。
小さな町役場だからな……数年も務めてれば、職員は全員顔見知りと言ってもいい。
……誰が死んだんだろう。知りたくないし信じたくない……。
「一応、限りなく不安定ではあるけど、ネットがまだ生きていてね。広報企画課の連中に張り付いてもらって、ひたすら情報を拾ってもらってる最中なんだ。だから、ある程度のことはわかるんだけど……真贋確認の方法がない。知っての通り、ネットって言うのは嘘も真実も当たり前のようにそこらへんに転がってるからね」
「君達がここに来るまでに何を見て来たのか。……あとは、黒田、お前の手にあるそれを見る限り……何をしてきたのか、も話してくれるとありがたい。おそらくそれらの情報は、この緊急事態下において値千金のものであるはずだ」
俺達としても、今の状況は整理して、情報や考えをまとめたかったこともあって……1つ1つ、話し漏らしのないように語っていった。
俺達が語ったことに、総務課長達が教えてくれた、ネットなどから拾った情報を足してまとめると……以下のような感じになる。
今日の午後、何の前触れもなく突然、ARで投影されたデータの怪物達が町中に出現した。
そしてそれらは、まるで本物の怪物のようにふるまい、人々を無差別に襲い始めた。襲われた人は、まるで本当に魔物に攻撃されたかのように悲鳴を上げ、倒れ、動かなくなった。
攻撃されても傷ができるわけではない。見た目は何も変化はなく、無傷なのだが……それでも死んでしまう。法で定められたレベルを超えるダメージフィードバックにより、激痛や体内の違和感でショック死するのではないか、という見方が大勢を占めるようだ。
違法なARゲームないしアプリケーションを使った無差別テロかとも思われたが、詳細は不明。今のところ何もわかっていない。ネット上に犯行声明なども特に出ていない。
ゴスペルギアのシャットダウンや、別プログラムの起動による上書きなどの対処法は全て効果がなく、このモンスターパニックは、ゴスペルギアを持っている者は子供から大人まで全員強制参加であるらしい。さらにこの町だけでなく、世界中で同じことが起こっているらしい。
ログアウト不能のデスゲームに、全世界が叩き落されてしまったに等しい状態。
モンスターの扱いやそれを倒した時に起こることは、それこそゲームそのものである。
モンスターは無敵ではなく、攻撃すれば倒すことができ、倒せばアイテムなどをドロップする。それは武器であったり、素材であったり、通貨であったり、薬であったり、その他まだよく用途のわからないものであったりする。……本当にゲームそのものだ。
なお、素材や通貨――単位は『ゴールド』だった――は、今のところどんな風に使うのか、用途のようなものは見つかってないが……ドロップするからには出番があるんだろう。
また、現実の武器や道具を使って攻撃するよりも、データとして存在する武器を使った方が、モンスター達に与えられるダメージは大きい。
例えば、真田が使っていたような金属バット。わかりやすく攻撃力が高そうな『凶器』だが、それよりも、ゴブリンがドロップしたナイフの方が、与えられるダメージは大きい。
役場に来るまでの道中で、色々と試す機会があったので知っている。車で引いても死ななかったゴブリンが、ナイフで刺すと2~3回で死んだからな。
その他色々こまごまとしたことも話したが……一番重要なのはこれだろう。
このモンスターパニックは、さっき言った通り、ゴスペルギアを持っている者は、誰も逃れることのできないデスゲームであり、モンスター達の攻撃が死に直結する。
が……ゴスペルギアを持っていない者には、その攻撃は一切通じない。
すなわち、俺のような『ARD』の人間は……モンスターの攻撃に対して常時無敵であり、ガードも回避も考えず、一方的に攻撃できる。
そのことを話した時には、総務課長も係長も、あと真田も、目をまん丸にして驚いていた。
どうやら、まだネットに出ていないか、見つけられていない情報だったらしい。
……とまあ、こんな感じで今の状況を整理できたわけだが……これを受けて今後、俺達は公務員としてどう動いていくべきか。
まず大前提として、ここ(役場)を離れて個人で独自に動いていくなんて選択肢はない。
俺がこの事態をおおよそ把握できた時に思ったのは……多少不謹慎な感じになることを承知の上で、『モンスターパニックものの映画とかみたい』『ゾンビ映画みたい』というような感想だった。
未知のウイルスだの生物兵器の脱走だの、そういうトンデモ要因でおよそ日常が崩壊した世界で、ゾンビだの怪物だのから時に逃げ、時に戦いながら、あちこちから物資を集めてサバイバルしていく……っていう感じの。
一昔前は、ネット小説とかコミックとかでも流行した、人気のジャンルだったようだ。結構な割合で、その世界で無双できるチート能力を持った主人公がセットで。
しかし、そういう世界を我が物顔で闊歩し堪能できるのは、今言った通りチート能力を持ち、自分1人で並みいる敵を倒し、あらゆる危機を乗り越えられるような反則級のサバイバビリティを持ってるような奴に限る。
当然、俺にそういうのはない。だから、見知った人達と協力してこの事態に対処し、乗り越える……っていうのが一番安全で確実だと思う。
モンスターの攻撃が効かないのはチートじゃないのかって?
確かにまあ、そう言えなくもないが……あくまでそれは、モンスターとの戦いっていう一点に限定された『チート能力』だ。
戦闘以外にも、食料の確保、電力その他インフラの保持、その他色々、人間が健康で文化的な生活を営む上で必要になる要素っていうのは割と多い。そして、そっち方面には俺の『チート能力』は何も役に立たない。
皆で協力して、自分にできることをやって、支え合って生きていく……人間っていうのは、それができる、むしろそういうやり方が得意な生き物だ。だったら、協力できるならした方がいい。
幸いというかさすがというか、既に総務課長達が動き始めていた。
この非常事態に対処するために、情報を集めつつ今後の対応を検討する『対策本部』に加え、町内の各学校や社会福祉協議会、農協なんかの関係機関とも連絡を取りながら、人員、物資、労力を結集させて事態を打開するために動き出す準備を進めていた。
まだ計画立案の段階で、問題点は山積みのようだが……俺や石栗さんじゃあ、方針を定めることすらできなかった。本当に、ノウハウがある人ないし組織の存在はこういう時頼りになる。
対応の第一段階である、役場周辺のモンスターの掃討については、さっき終わったところだし、その際に得られた情報その他も参考にしながら、今ある案を微調整しつつ動いていくことになるだろう。
けど、『まず今は休め』と、総務課長達に言われた。ここに来るだけでも大変だっただろうから、疲れてるだろうからって。人手が必要になった時のために、休める時に休んでおけってさ。
そう言われてみれば……肉体的にもそうだが、精神的にもだいぶ疲れた……気がする。割と必死にここまで突っ走ってきたから、気づかなかったというか、気にならなかったというか……。
ここは、お言葉に甘えることにした。総務課長達の言うように、本当に必要な『出番』が来た時に、万全の状態で力を発揮できるように。
役場職員として、大雨や大きめの地震の時に、被害確認や避難所の設営と、災害配備で色々対処に動いたことは何度かあるが……これまでのどんな災害よりも大仕事になりそうだ。期間的にも、果たして短期間で改善ないし解決するのかまるで予想がつかない。ハードな仕事になりそうだ……覚悟、決めておかないとな……色々な意味で。




