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19 サイクロプス

 


 運命の最終ステージ。五分の五。

 前4回と同じく、空間から大量のモンスター達が滲み出すように現れたわけだが……その一発目の光景から、俺達は目を見開いて驚愕することになった。


 現れたのは、またしても亜人系……ゴブリンやコボルド達だった。

 第三ステージと同じように、上位種も最初から混じっていた。


 それに加えて……豚鬼(オーク)大鬼(オーガ)蜥蜴人(リザードマン)といったさらに強力な亜人種族や、その上位種も混じっている。


 さらにさらに、まだずっと後ろの方にいるが……それぞれの種族のボスモンスターも最初から出現して控えているのが見えていた。

 出現してはいるけど、動き出しては来ないようで……まずは手下たちだけをけしかけて高みの見物のようだ。こっちとしてはまあ、来たら倒すだけだし、どっちでも……いや、コボルドジェネラルは俺達を無視して行っちまうから、対応がきつくなるわな。うん、すぐに動かないでくれてよかった。


 ……しかし、それらがかすむくらいにヤバいのが最後に1体、控えていた。



 ―――WARNING!! WARNING!! WARNING!!

 ―――WARNING!! WARNING!! WARNING!!

 ―――WARNING!! WARNING!! WARNING!!



 襲撃イベント発生当初にも響き渡った、うるさいくらいの警告音声。

 それをBGMに……ボスモンスター達の後ろから、信じられない化け物が姿を見せた。


「なんだよ……あれ……?」


 誰かがぽつりと、思わずと言った感じで呟いたのが、ここに居ても聞こえた。

 そのくらいに……まだ戦闘が始まっていないせいだろうが、不気味なまでに静かだ。


 その静寂を、ずしん、ずしん、という重量級極まりない足音で踏み荒らして現れたのは……巨人だった。

 何mあるのかってくらいに巨大。こないだ戦ったあの『がしゃどくろ』よりも巨大。


 ボスモンスター達をも踏みつぶしてしまえそうなその巨体は、どう見ても10m近い、あるいは超えているようにすら思える。

 筋骨隆々で、顔には目玉が1つだけついている。手に持った棍棒……いや、『金棒』は、一振りでビルだって粉砕してしまえそうな大きさと、迫力だった。


 名前を付けるなら……『単眼鬼(サイクロプス)』ってとこだろうか。

 非常に分かりやすい……わかりたくなくてもわかってしまう、この防衛戦のラスボスだった。



 ―――GAAAAAAAA――――ッ!!



 空を仰いで、サイクロプスが咆哮したと同時に……現れていた亜人モンスター達のうち、ボス級を除く全員が一斉に動き出し、役場目掛けて進軍してきた。


「おかしいでしょあれ! 人間が相手していいサイズじゃないって絶対!」


「泣き言言ってても仕方ねえだろ! とにかく今は……っつーかアレ抜きでも普通にやべえレベルの大軍が来てるんだっつの!」


 悲鳴に近い声で叫ぶ麻里奈にそう返しつつ、今回も『呪いの鈴』を使う。

 魔者達のヘイトが一斉に俺に向いたが、これでもまだ安心できない。何割かは俺を無視して後ろの……真田達が守る防衛ラインに向かうだろうし、狙撃だけでは削り切れないだろうからな。


 実際俺もあんなバケモン、生身の人間が相手するような存在じゃねえと思うし、アレと戦うならこっちはロボットか何かに乗る必要があるとすら思う。

 ましてデスゲームにあんなガチの災害生物を登場させるんじゃねえと切に思う。


 しかし、言ってても仕方ないので、頭や口より手を動かすことにした。

 やることはいつもと同じだ。襲いかかってくる敵を片っ端から殴り、1匹でも多く倒す。


 幸いと言っていいのか、ステージが進んでも魔物自体が強くなるわけではないようで、相変わらずゴブリンもコボルドも一撃で砕け散ってくれる。上位種でも同じだ。

 視界の端で、同じように麻里奈も薙刀で無双している。


 しかし、さっきよりさらに多い軍勢は、少なからず俺達2人の横を素通りしていってしまう。やはり仕様的に、一度にヘイトを向けてくれる数には限りがあるようだ。

 だが、こうなることは半ば予想できていたので……備えは一応、してある。



 ―――ズドドドドォン!!



 俺達を無視して先にすすもうとした奴らが、すぐそこに置いてあった地雷を踏んだ。

 その爆発に巻き込まれて、結構広い範囲のゴブリン達が一掃される。俺や麻里奈も巻き込まれたが、当然ダメージはない。


 しかし、地雷は爆発してしまえばそれまで。いくらか多くの敵を倒せこそしたものの、モンスターはまだまだいて、次々に押し寄せてくる。

 せっかく地雷で吹き飛ばしても、その隙間を埋めるようにまた押し寄せてきて……同じように俺達を素通りし、後ろに抜けていく。地雷はかなりレアなアイテムで、数がもともと少なかった。さっきので全部使ってしまったので、二度目はない。


 今度は遠距離武器の出番だ。進んでくるモンスター達を、弓矢やライフルで射抜いて近づかれる前に仕留めていく。

 ある程度近づいてきてしまった奴らには、バリケードの向こうから手榴弾が、なるべくまとまっているところを狙って放たれる。


 バリケードのところまで来てしまった奴らには、単体相手なら槍でけん制しつつ接近戦で、まとまって来てしまったらショットガンで一気に倒し、とにかく突破させずに倒していく。


「どんどん使ってけ! 温存しようとか思うな、ケチってて突破されたんじゃ意味ねえぞ!」


 真田が檄を飛ばしているのがここからでも聞こえる。ショットガンの発砲音や、手榴弾が爆発する音も頻繁に聞こえる。全部使い果たすつもりで総攻撃してるんだろう。

 さすがゲーマー、正しい判断だ。この物量じゃ、『後から来るボスに備えて温存』なんて生ぬるいこと考えてたら、そこに行く前に突破されてすりつぶされる。今、この瞬間来ている連中をとにかく倒すために、全弾打ち尽くすつもりで使ってくれ。


 ボスなんて俺達が何とかするから。ただ単に『強い』だけで、数が少ないならどうとでもなる。




 もともと数なんか数えちゃいなかったが……それでもなお『もう何体倒しただろ』って思わず思ってしまうくらいに亜人モンスターを倒し続けた。

 ゴブリンも、コボルドも、オークも、オーガも、とにかく片っ端から倒し続けて……ようやく、後ろに控えていたボスモンスター達も動き出した。


 ゴブリンキングにコボルドジェネラル、リザードマンロードにオークキングにオーガロード、5体一気に動き出してこっちに向かってきた。

 どいつもこいつも2m越えの巨体なので威圧感が尋常じゃないが……そんなもんは気にしないようにして……はいわかってたお前だよお前!


 コボルドジェネラル! お前俺達のこと無視して後ろに行こうとするよな! さっきもそうだったもんな! させねえよ!


 横を通り抜けて行こうとする犬畜生を止めるために、虎の子のレア武器……閃光手榴弾(スタングレネード)を使う。目の前にたたきつけると同時にすさまじい光が広がって……それがおさまると、コボルドジェネラルは目を抑えて悶絶していた。

 ついでに他のボス達も同じようになっていた。半ば狙ったというか、巻き添えを期待してたんだが、上手いこと5体とも止まってくれた。運がいい。


 そしてもう1つここでレアアイテムを使う。

 夜勤でゴースト狩りをしてた時にドロップしたアイテムの1つで、『レッドポーション』。使うと一定時間、攻撃力を上げることができるアイテムだ。


 それを飲む……ことはできないので、瓶を握り砕いて俺の頭にかかるようにして……と。

 ……よし、俺の体が赤く光り始めた。問題なく発動できたらしい。


 攻撃力が上がっているうちに、動けないコボルドジェネラルの顔面や喉を拳で滅多打ちにする。

 ただでさえ攻撃力が高い『タイラントクロー』をさらに強力にし、さらに全弾急所部位に打ち込むことで高倍率のダメージやクリティカルが連発。

 ボスであるコボルドジェネラルも、あっという間に体力を削り切られ砕け散った。


 そのまま俺は、今度は……その次に厄介なオーガロードへ向かう。デカい上に攻撃力が高いので、こいつにバリケードの方に向かわれると、大威力の攻撃にさらされる防衛メンバーがヤバい。


 オーガロードの身長は3m以上……というか、4m弱、といった方がいいくらいの大きさだ。

 弱点である顔面を殴ることはできないので、狙うのは膝。ここは、顔や喉元ほどではないが弱点の1つになってて、大ダメージを与えると転ばせたりうずくまらせて動きを止めることができる。


 スタングレネードの効果が切れる前に倒せれば一番よかったが、目を抑えていたオーガロードは、目を開けて動き始めてしまい……しかし、ほぼ同時に俺が膝に蓄積させたダメージが一定値以上になったのか、うめき声をあげて膝をついた。

 そのおかげで、ロードの顔が殴れる位置に来た。待ってましたとばかりに拳を叩き込む。さっきのコボルドジェネラルと同じように、急所目掛けてとにかくラッシュラッシュラッシュ!!


 ダウン状態から復帰する直前に、とどめの一撃でHP全損に追い込むことができて……コボルドジェネラルに続き、オーガロードも砕け散った。


 ふと横を見ると、麻里奈がリザードマンロードを倒すところだった。

 麻里奈の武器は薙刀……長物だから、相手の背が高くて急所が高い位置にあっても狙いやすいのが少し羨ましいな。その分俺のは攻撃力がバカ高いわけだから、まあ、文句はないが。


 残るボス敵は2体。しかしこれは問題ないだろう。

 ゴブリンキングとオークキングだが、どちらもきちんとヘイトに誘われて俺達を襲いに来てくれてるからな。




 そして、ボス級モンスター5体も俺達が全員倒しきり、ところで……とうとう、最後の敵が動き始めた。


 第五ラウンド始まりの時と同じ雄たけびを上げて……10mを超える大きさの『サイクロプス』が、ズシン、ズシン、と地響きのような足音を立てて進軍を始める。

 歩くスピードはかなり遅く、5秒に1歩程度だが……大きさゆえに歩幅がえげつないくらい大きい。1歩で数m進みやがる。


 しかも、大きすぎて膝すら狙えねえ!! 足のくるぶしとかちまちま殴って攻撃するしかないんだが……コレちゃんと効いてるのか!?

 ゲームなら、足だろうが背中だろうが、体のどこかに攻撃を当て続けてHPを削り切れれば倒せるんだが……こうして現実に巨大モンスターを前にしてそれやると『こんな足先ばっか殴って意味あるのか!?』って思っちまうわ、どうしても。


 そんでさっき言ったように、1歩歩くとその足が何mも動くから、追いかけて殴るの地味に疲れ……ちょっと待て何してんだコイツ?


 サイクロプスは、手に持っていた金棒をズドン、と地面に突き立てるようにして置くと……突然しゃがみ込んで地面に手を突いた。

 かと思ったら、まるで地面から引っこ抜いたかのように、その手に超巨大な岩をもって立ち上がった。そして、それを大きく振りかぶって……おい待てまさかお前!


「逃げろォ―――!!」


「総員退避ィ―—―!!」


 俺が咄嗟に叫んだのと同時に、真田も向こうで絶叫するような勢いで声を張っていて……バリケードのところにいた連中が雲の子を散らすように逃げて行った。

 そこ目掛けて……サイクロプスが、持ち上げた大岩をぶん投げる。



 ―――ドッ、ゴォォオオォン!!



「「「うぎゃああぁぁぁあっ!?」」」



 逃げ遅れた何人かがその大岩投げに巻き込まれて当たってしまい、喉が裂けるような悲鳴を上げて地面を転げまわる。

 アクセサリーで防御力上げてるはずなんだが……それでもこれか。


 慌てて回復班が駆け寄ってポーションをぶっかける。……よかった、全員きちんと生きてるようだ……動きはまだぎこちないが、立ち上がってよろよろ歩いて避難していく。


 つーかコイツ重ねて厄介だな!? 足元にプレイヤーがいても無視して、拠点や、人が多く集まってるところを攻撃してくるタイプかよ!?

 さすがにあんな、十何メートルも上の方を投げられて飛んでいく大岩なんて止めようがない……『呪いの鈴』も効いてる様子ないし。さすが大ボス、これまでの戦い方が通用しねえ。


 一応、完全に俺達を無視するわけじゃないようだ。

 大岩投げの後は、少しの間俺達を踏みつぶそうと足を踏み鳴らしたり、金棒で薙ぎ払ったり叩きつけて攻撃してくる。全部効かないが。


 しかしある程度そうやって暴れたと思うと、また歩き始め……ある程度歩くとまた岩を持ち上げた。

 今度は、真田達がいるバリケードのところよりもさらに奥、これまでまだ出番が来ていない、第四防衛ラインを狙って投げ込まれた。

 幸い、さっきの光景を見てたから対応も早く、岩が出てきたタイミングでさっと左右に分けて逃げていたので、今度は被弾者はゼロ。

 しかし、バリケードはその一撃で『破壊』されてしまった。……まあ、あってもなくても一緒だろうけどな、コイツ相手じゃ。


「暴れる、歩く、岩を投げる……ってのを繰り返して近づいてくるっぽいな。つか、さっきから足殴りまくってるのに一向に怯んでくれねえんだが……」


「この図体だし、攻撃力が高くても単純な力押しじゃ戦えないってことなんだろうね、たぶん……となると、頭使って戦わなきゃいけないわけか。行動パターンは大体見れたけど……どう? 何か突破口的なの、思いつく?」


「……あてずっぽうでよけりゃ、いくつか思いついた」


「私も。よし、片っ端から試してみよう、迷ってる時間ももったいないしとにかく当たって砕けろで行こう!」


「乗った!」


 そしてまた、足元の俺達をしばらく攻撃した後、さらに歩いて……そのあたりまで来ると、弓矢やライフルの射程範囲内になる。

 図体がでかいので命中させること自体は余裕だが、これも効いているようには見えない。


 ライフルはどうやら、わかりやすく弱点……っぽく見える眼球目掛けて撃ってるようだが……おっと、少し嫌がるように顔をこすってる。やっぱり弱点は目か……明らかに他の部位と比べて浮いてる感じだもんな、あの単眼。


 おかげでやや歩みが遅くなってはくれたものの、しばらくするとまたかがんで地面から岩を持ち上げる。ここまで近づかれると……次かその次くらいで、この岩直接役場にぶつけられるかもしれない。そうなったらどれだけの被害になるか……考えたくもない。

 一か八か……ここで、これで止められれば……。


 サイクロプスが岩を持ち上げ、放り投げようと頭の上に振りかぶったそのタイミングで……今だ!


「どりゃああぁああっ!!」


 俺は、サイクロプスの目の前にまで飛ぶように、思いっきり『閃光手榴弾(スタングレネード)』を投げ上げた。

 岩を投げるまさにその直前に、それは爆発し……至近距離でその光を見てしまったサイクロプスは、思わず目と顔を両手で覆ってもだえ苦しむ。


 しかし、今サイクロプスは、岩を放り投げようとして頭の上に振りかぶっていたところだったわけで……その状態で両手を放したりしたもんだから……



 ―――ガゴォオォン!!


 ―――GYAAAAAOOOOO!?



 振りかぶっていた大岩がそのまま落下し、サイクロプスの脳天を直撃。クリティカルのエフェクトまで出して大ダメージを受け……仰向けにひっくり返って倒れこんだ。よっし、このやり方で正解だったか!

 そして千載一遇のチャンス! 顔が、単眼が、弱点が……殴れる位置に来た!!


 体が大きすぎてそこまで走って行くの一苦労だったが、気合で走り抜けて……走りながらレッドポーションをもう1回使って攻撃力を上げておいて、到着したら眼球目掛けてひたすらラッシュ。

 麻里奈も同じように、上下左右から薙刀で滅多切りにする。


 しばらく殴って切り刻んでいると、サイクロプスがぱちくりと瞬きしたので、『あ、そろそろ起きる』と直感した俺。

 そこで殴るのをやめ、もう1つ試してみたかったことを実行に移す。ストレージから残り少ない手榴弾を取り出し、ピンを外して……サイクロプスの口の中に投げ入れた。


 直後、サイクロプスは起き上がって立ち上がり、雄たけびを上げて怒りをあらわにするが……それとほぼ同時に口の中で手榴弾が起爆。

 口から炎と煙を噴いて、またしても大ダメージを受け、膝をついた。倒れはしなかったが……しばらく動きが止まった上に、片方の膝が殴れる位置に来たので、そこを殴る。……おっ、オーガロードと同じでここも弱点のようだ。ただ足を殴るよりダメージエフェクトが大きい。


「やっぱデカい化け物には爆発物がよく効くな」


 モンスターパニック系の映画見てると、明らかに銃火器じゃ倒しきれないようなデカブツを倒すには、爆発物を使うパターン割と多いからな。

 特に爆弾やダイナマイトを食わせて内側から吹き飛ばすやり方は割と定番というか鉄板だ。サメとかワニとか、よくそれで仕留めてる気がする。


 さっきの大岩ほどはダメージはないようだが、怯んでる間にダメージ蓄積できたと思うし……もう少し、だと思いたい。


 そして間もなく起き上がるサイクロプス。また雄たけびを上げて……大口開けてるので手榴弾とか放り込みたいところだが、さすがに厳しいな……そこまでコントロールよくないし。

 それに、手持ちの手榴弾はあと1個しかない。もう1発はさっきと同じで、チャンスが来たら確実に口の中にぶん投げる形で使いたい。


 するとサイクロプス、みたび……いや4回目か、大岩を地面から持ち上げ……っ!?


「やばっ……!」


「? え、響平、どうし……」


 麻里奈が隣でちょっと驚いた表情になってるが、俺は構わず……まだ岩を持ち上げている最中のサイクロプスの目の前に、さっきと同じようにスタングレネードを放った。

 恐らく、麻里奈は『まだ早いよ!?』とでも言いたかったんだろうが……違う。多分これでいい。


 サイクロプスは、さっきよりも早く岩を持ち上げ、振りかぶって投げ飛ばそうとしていた。持ち上げるスピードがさっきよりも明らかに早かったから、それに気づけた。

 持ち上がったところでスタングレネードを投げようと悠長に待ってたら、おそらくは間に合わなくて、岩は投げ飛ばされてしまった後だっただろう。意地の悪い設定しやがって……!


 幸い、ドンピシャのタイミングでまたスタングレネードを炸裂させられたので、もう一度サイクロプスを脳天直撃からの転倒に追い込むことができたが……ここで俺はもう1つ、さっきと違うところがあるのに気づいた。


 持ち上げた岩が、さっきのよりもさらに大きかったのだ。

 そして、脳天にぶち当たって砕けた岩の破片は、さっきはそのまま消滅したんだが……今度は時間差で回りに破片が降り注いできた。


 本当に意地が悪いな!? これ、俺と麻里奈じゃなかったら、急いでサイクロプスの近くに駆け寄ろうとしたところで、岩の破片にあたってダメージ受ける奴だろ!?

 危なかった……俺達がARDでよかった。なんてトラップだ。


「せこい真似しやがって……さっさと倒れろこのデカブツがぁ!!」


 『もしも』を想像して冷や汗かかされた分も含めて、怒りそのままに拳を振り下ろして……サイクロプスの単眼に叩き込む。叩き込む。叩き込む。


 同じように麻里奈も薙刀を振るい……さらに後ろの方から弓矢やライフルの狙撃も飛んでくる。

 放物線を描いて、グレネードランチャーの炸裂弾も飛んできた。

 ……それら全部、俺と麻里奈も容赦なく巻き込む感じで放たれているが……いやまあ、効かないから全然かまわないんだがな。元々『そうしろ』って言ってあったし。


 拳が、薙刀が、矢が、銃弾が、グレネードが、顔の周辺に、あるいは眼球にあたってダメージを刻み込んでいき……そろそろまた『瞬き』して起き上がるんじゃないか、と思った時だった。


 何発目か、あるいは十何発目か、俺の拳がクリティカルのエフェクトを叩きだしたその瞬間……倒れこんでいたサイクロプスの体が大きく震えて、のけぞって……口からは騒音レベルの叫び声が響き渡った。

 それはまるで、悲鳴……いや、断末魔のように聞こえて……その後すぐに、実際にそれが断末魔だったんだと気づくことができた。


 しばしの間、海老ぞりになってびくびくと痙攣していたサイクロプスの巨体。

 その姿勢のまま……ピキピキピキ、と手足の先からひび割れが入って広がっていく。まるで、体が陶器か何かでできているかのように。

 そして、そのひびが眼球にまで届いたところで……



 ―――ガシャアアァァアアン!!



 脱力し、地面に体が叩きつけられ……その衝撃で割れたかのように、サイクロプスの全身が一度砕け散った。

 呆気にとられる俺達の目の前で、砕け散った後のポリゴン片が、他のモンスターの時と違っていつまでも消えず、まるで紙吹雪のように空中に舞って、なんとも幻想的な景色を作り出していた。


 いきなりのことでぽかんとする俺達。

 俺や麻里奈はもちろん、後ろの方にいる真田達も呆気に取られて動けないでいたが……そんな俺達の目の前、というか視界の中に……それは、現れた。




 ―――FAINAL STAGE CLEAR!!



 ―――CONGRATULATION!!

 ―――MISSION COMPLETE!!





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― 新着の感想 ―
面白かった。まさにゲーム的なギミックだが本来は負けイベントじゃないのというレベルで無理ゲー感がすごい
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