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12 夜

 


 空き地に行ってみると、犬や狼のようなモンスターの群れがいた。

 ボスは上位種の狼型モンスターだったが、これはゴブリンキング級というわけではなかった。普通に倒して、アイテムを回収した。


 何年も放置されている空き家――しかも無駄に庭の敷地が広く草が伸び放題――に行ってみると、虫系のモンスターがわらわら出て来てちょっと気持ち悪かった。

 ボスは2m以上の大きさのカマキリ。こいつはキング級で、空飛ぶ上に動きも素早いから苦労した。倒したら鎌型の武器を落とした。


 橋の下の空き地に行ってみると、いきなり上から蝙蝠の大群が襲ってきて超ビビった。飛んでるしすばしっこいし小さいから攻撃当たらなくて超面倒だった。

 けど犬と同じで、しばらく無抵抗でいると噛みついて血を吸いに来る=わざわざ止まってくれるので、それを待って1匹ずつプチプチ潰して殲滅した。

 ボスの巨大蝙蝠も大体同じ感じで倒せた。武器じゃなくてマント(防具)を落とした。


 検証してみたところ、コレを装備すると防御力が上がり、防御力が上がると、攻撃されてもあまり痛くなくなるらしい。

 硬直やショック死につながる危険が下がるという点では非常に重要な効果だろう。


 真田に装備してもらった状態で、ゴブリンナイフ(激弱)でちょっと刺してみたところ、『蚊に刺されたくらいの痛み』とのことだった。刺したのは、マントで覆っていない部分であるにも関わらずだ。

 その程度に抑えられるなら、一瞬怯むくらいはともかく、十分耐えられる範囲だろう。防御力と、それを上げる防具やアクセサリーの重要性が一層高まったな。


 それと、この黒いマントの他にも、いくつか防具やアクセサリーをここ数日で手に入れてる。

 ゴブリンやコボルトは落とさないようなんだが、動物系の敵を倒すとたまに手袋やマントなんかを落とすのだ。それを装備すると、さっき言ったように防御力が上がる。

 そうすると、先に説明した蝙蝠ドロップの黒マントほどではないけれども、痛みを抑えられる。これも真田に試してもらったんだが、『予防接種で筋肉注射された時くらいの痛み』とのこと。こちらもまあ……痛いことは痛いが、耐えられる範囲だな。


 物資の回収や運搬を行う人には、なるべく優秀な防具やアクセサリーを身に着けてもらえば、事故の可能性がぐっと低くなるだろう。武器以上に重要だな、防具の収集。


 そんな感じで俺達は、モンスターを倒してアイテムを回収し、それを対策本部に引き渡し、対策本部が必要に応じて人員に配布して使って……という感じで有効利用している。




 さて、突然だがここで、今の俺達の生活サイクルを一回見てみよう。


 朝、6時くらいに起きて身支度をし、出勤というか出動の準備を済ませる。

 その後朝食を食べたら、対策本部に一度顔を出し、総務課長に『今日はここ行け』という指示をもらう。


 そして出動。

 仕事の内容は省く。いつもと同じ、調査と戦闘と回収だ。

 なお、途中で食べる弁当が用意してもらえているので持っていく。


 大体夕方になるまでやって、帰ってきたら、『対策本部』に今日あったことの報告。

 回収したアイテムの引き渡しもこの時にやる。


 その後、用意されている夕食を食べる。

 この炊事……避難所の人達の分も含めて、毎日結構な大人数分必要になるわけだが、これをやってくれているのは、いつかに引き続いて、避難民の中から有志で手を上げてくれた人たちだ。

 家族に食事も作ってあげたいし、こんな時だから助け合わないと、ってことで。ありがたい限りだよ……毎日手作りの、心のこもったご飯が食べられるってありがたい。


 なお、食材はコンビニやスーパーから回収してきたものに加えて、農協とかと話がついて、管理施設に保管している米や豆、その他の物資を使わせてくれることになった。

 元々県内各地に流通させていくものだったわけだが、この事態だ、流通なんて機能してないし、だったら今目の前にいる、これらを必要としている人達を助けるべきだ、ってことで。


 なので、足りなくなったりはしておらず、むしろ全然余裕がある。

 が……さすがに生鮮食品が手に入らない。今は缶詰とか加工食品で代用しているが、このままだと足りなくなるので、今まだ畑やハウスの中にある分の野菜その他の収穫が急務ってところだ。


 その後しばし休憩や雑談でリラックスして、寝る前にシャワーを浴びる。

 まだまだ暑くて汗もかく季節だ。そのまま放っておくと衛生的によろしくない。病気になったらそっちの方が困るので、最低限体をきれいにしておかなきゃいけないからな。

 水も電気も節約しなきゃいけないので、原則1人5分。交代で浴びる。


 その後は、午後10時で消灯なので、あとは寝るだけだ。電気の節約もそうだし、速めに寝てきちんと翌日に疲れを残さないようにしないといけないからな。




 これが今の俺達の、基本的な生活サイクルなわけだが……最後のところで言ったように、俺達の1日は、消灯時間である夜10時で基本的に終わっている。

 それ以前に、午後6時には帰ってくるようにしている。

 何度も言うように、電気も、体力も、大切に適切に使わなければならないから。


 しかし今日、今、俺達は、もう夜8時にもなる時間だというのに、まだ役場には戻らず……町の中を回っていた。

 うっかりして帰るのを忘れたとかではない。強敵が出現したり、その他不測の事態で帰れなかった、というわけでもない。


 きちんと目的があって、こうして帰りが遅くなっているのだ。

 元々予定されてたことだから、昼のうちに受け取っておいた弁当をさっき食べたところ。ここから今日の俺達のメインクエストが始まる。


 場所は、町の中にあるかなり大きなお寺。その境内。


 まだ日が長い時期だから、まだこの時間でもある程度明るいが……さすがに8時台となると暗くなってくるな。

 一応、街灯の光が届いて多少は明るい。それに加えて、デバイスの暗視機能を使えば暗い中でもある程度は見えるし……戦える(・・・)


「さて……今のところは昼間と同じ、普通のモンスターしか出てきてないが……」


「10時まで粘って変化がなければ帰るんだっけ?」


「ああ、さすがにそれ以上は疲労的にきついし、寝る時間は絶対にある程度は確保しないといけないからな」


 今日の俺達の任務。それは……『夜にしか出てこないモンスターがいるのかどうか』の確認だ。


 割と最初の時期から懸念されていた、『時間帯によって出現するモンスターが違うんじゃないか』という点。

 これについて、今のところは、そういうのは確認できていない。


 これまでも実は、役場の周辺で夜遅くになってから俺達『仮想害獣対策室』が近場を回り、昼間と違うモンスターが出てきてないか探してみたりしていたんだが……結局見つかっていないのだ。

 なので、時間帯で変化はないんじゃないかと結論が出かけているんだが、念のため、『それっぽい場所』ででもきちんと調べてみようってことになった。


 夜、闇の中で出てくるモンスターって言ったら……夜行性の動物とか、あるいは、ゴースト系が真っ先に思い浮かぶ。

 ゴースト系……すなわちお化けがでそうなところと言えば、ちょっと不謹慎で申し訳ないが、墓場とかお寺だと思うわけだ。


 ここの寺には、裏の方に墓場も隣接しているので、検証にはちょうどいい。

 なので、この時間にこうしてお邪魔しているというわけだ。


「や、やっぱり夜のお寺とかお墓って怖いですね……なんだか言い表すのが難しい孤立感とか恐怖をあおるというか」


「わかる。ひとり取り残されてる感じがやたら不安にさせるよな。街灯とかの明かりが……いや、明かりがなくても人工物があると『人類の生活圏だなあ』って割と安心する部分あるよな」


「『超情報化社会』なんて言われる時代になっても、いくつになっても、人間こういうのは怖いんだっての……あーもう、さっさと終わってほしい。早く帰りたい」


「え、麻里奈お前こういうのダメだっけ?」


 何気に初めて知ったんだが。

 麻里奈ってお化けとか怖いの? ……ホラーゲームとかは普通にやるって聞いてるが。


「あれは画面の中だけだし、ARでも、きちんと作り物だってわかってるから平気なのよ……こういうリアルな舞台でお化けが出るかもしれないのはちょっと無理かも……」


「いや、もしここで何か出たとしても、それもきちんと作り物だろ。データだよデータ」


「それはわかるけどさあ……あ゜っ」


 と、突然麻里奈が、どうやって発音したのかわからない変な言葉を発したかと思うと……俺の背後を見て、ひきつった表情になった。ゆっくりと、そっちの方を指さしている。


 振り返ってみると……一発でその理由がわかった。


「……マジかよ。出やがった」


 薄暗い闇の中……さっきまで何もなかった空間に、青白く半透明の人型の『何か』が浮いていた。下半身はなく、蛇みたいに伸びているのでラミアみたく見えるが……あれ、足がない幽霊の演出というかデザインでああなってるんだろうな。

 顔は割とのっぺりしていて、目鼻口はあるものの、人間っぽくはない。目は赤く光っている。


 こちらに気づくと、『あ゛あぁぁあ゛~~~』ってうめき声を上げながら、飛んでゆっくりと近づいてきた。


「ゴースト系モンスター……マジで出たな。見た目は普通に、ファンタジー系の敵としてのゴーストだけど……どうだ麻里奈?」


「……うん、びっくりしたけど……アレなら大丈夫。あんまり怖くない、いける」


 それはよかった。

 それならやることは1つというか、いつもと同じというか。


「じゃ、やるか。麻里奈、暗いから足元だけ気をつけてな」


「わかった! ……怖くはないけどあんまりこんなとこ長くいたくはないから、さっさと終わらせるわよ!」


「ああ、うん」


 そうしてゴースト系モンスターとの戦いが始まったわけだが……戦闘能力的には雑魚だったので、苦戦はしなかった。

 ゴブリンやコボルト同様、殴れば消し飛ばせたし。幽霊だから物理攻撃無効、なんていうような特性は持っていなかったようで助かった。

 ドロップアイテムも、昼間の普通のモンスターとは違うものをいくつも落とした。


 吉報とは呼べないだろうが、収穫としては割といいものだったと言えなくもないと思う。夜になると、場所によっては夜間限定のモンスターも出る。そいつらからしか手に入らないアイテムもあるという情報は。


 でも1つ、いや2つ、こいつらは厄介な性質を持っていることも判明した。


 ゴースト……実体を持たないモンスターだからだろう。こいつら、壁をすり抜けるのだ。

 普通のモンスターなら、『破壊』判定になっていないと建物の壁は突破できないが、ゴースト系はそういうの関係ないらしく、お寺の中と外をすり抜けて移動していた。


 さらに、車の中に閉じこもって隠れていた石栗さんが直接狙われたのは焦った……大回りして俺や麻里奈、さらに車を守ってた真田もスルーして直接車の中に入ってさ。

 驚愕と恐怖、そして攻撃されたダメージによる彼女の悲鳴が聞こえた時は、本当に焦った。


 幸い、彼女には探索途中で手に入った優秀馬房具を装備させていたので、ダメージ自体は大したことはなく、驚いたってのが大部分の理由だったようだ。

 しかし、その『ダメージ』がもう1つの厄介な性質だった。


 その攻撃を食らった真田と石栗さんによると、ゴーストの攻撃は『痛い』ではなく、『寒い』『冷たい』という感覚だったらしい。

 肉体的なダメージではなく、精神的なダメージをイメージしたものだろうか。


 激痛でショック死するようなことはなさそうだけど、体温が奪われた(と錯覚するほど冷たかったらしい)ために、手足がかじかんで動けなくなるかも、と思ったそうだ。

 さっきも言ったように、防具で防いだおかげもあって『冷たぁ!?』で済んでたらしいが。


 ……でも、冷たい水をかぶったとかでショック死するケースって実際にあるんだよな……これも危険と言えば危険だな。特にお年寄りとかは。


「ごめんな石栗さん、ちゃんと俺達が全部会相手してればそっちに行かせずに済んだのに」


「い、いえ、気にしないでください。大したことなかったですから! ちょっと冷たかっただけで、痛みすらなかったんですもん。……びっくりして大声出しちゃっただけで」


「麻里奈、もしこいつらがドロップしたアイテムが有用な奴だったら、今後も定期的に狩らなきゃいけないかもだが……大丈夫そうか?」


「うん、大丈夫。純粋に暗いのはちょっと嫌というか怖いけど、アレ系のゴーストモンスターならもう怖くないわ。戦える。……これがリアルに人の形した、ジャパニーズホラー系の奴だったら……ちょっと考えたくもないけど。井戸から出てくるアレとか」


「ああ、それ聞いて思い出したんだけど、この寺、向こうの方に井戸あるんだよな」


「何でそれ今思い出すのよ!?」


 いらんことを! とでも言いたげに真田に食ってかかる麻里奈。


「そうなのか。……じゃあこのあとちょっと見に行ってみるか」


「そしてどうしてこの話の流れで見に行くってことになるの!? 嫌よ! 私行かないわよ! 何か出たらどうすんの! 大丈夫じゃない奴が出たら!」


「その出るかどうかを確かめに行くんだろ……でもまあ、わかったわかった。俺と真田で行ってくるからお前は車で待ってろ。石栗さんと一緒に」


「え、あんたらは行くの!? マジで!?」


「マジだよ。確認しとかなきゃだろそういうのは、ありそうなんだったら余計に。墓場で幽霊が出たんだから、井戸からもそういうの出て来てもおかしくないもんな」


「えー……俺も一緒に行くのかよ? 怖くはねえけど面倒なんだが」


「その井戸の場所俺が知らねえんだから仕方ないだろ。案内してくれよ」


「それもそうか」


「き、気を付けて行ってきてくださいね……あと、なるべく早く帰ってきてください。私も……怖くないわけじゃないので」




 ―――15分後。




「「ただいま」」


「おかえり……ど、どうだった?」


「出た」


「出たの!? マジで!?」


 マジマジ。しかもボス扱いだったみたいで結構強かった。


 ただまあ、色々と予想外だったんだよな……ツッコミどころが多かったというか。

 ジャパニーズホラーはジャパニーズホラーでも、もっと古典的なのが出てきたんだよ。




 10分ちょっと前くらいに遡って……俺と真田は、その『井戸』にたどりついたんだが、そこで待ち受けていたのは……



『1ま~い、2ま~い……』



「「番町皿屋敷!?」」


 呪いのビデオとかで井戸から這い出して来る系の女性怨霊を予想してたんだが、もっと歴史あるビッグネームというか、井戸に住む幽霊のレジェンド的なのが出てきた。

 白装束に……額につけるあの三角の布(名前知らん)をつけて、皿の数を数える女幽霊。その姿が暗闇にぼんやりと浮かび上がってて……なるほど、怖いわこれは。麻里奈連れてこなくてよかった。


 ……念のため、一瞬だけ俺がデバイスを外して肉眼で井戸を見てみると、その幽霊はいなくなっていたので、ちゃんとデータモンスターの類であることは確認できた。

 いや、まさか別にマジの幽霊出るとは思ってなかったよ? ……なかったけど念のためにな。


 そして、皿を9枚まで数えたところで、その幽霊は……


「足りない……1枚足りないぃいい……!!」


 身の毛もよだつような慟哭を響かせると、ぐりん、と気味の悪い動きでこちらを振り向いて、血走った目でにらみつけて来て……そのまま襲い掛かってきた。


「返せ、返せ……! 私の皿を返せぇええぇっ!!」


 そう叫びながら、手に持った皿を投げつけて攻撃してきた。


「うおっ、危ねっ!?」


「そんな大事な皿攻撃に使うなよ!?」


 しかも結構なスピードで飛んでくるから普通に迫力あるんだが。フリスビーみたいに高速回転して、しかも時々弧を描くように変化球みたいに動くし。いい腕してるなあの幽霊。


 しかし、皿は9枚しかないんだから、全て投げ切れば弾切れになるだろう。その隙に近づいて……と思ってたら、最後の1枚を投げたと同時に、袖の中から新しく9枚皿を取り出して続けて投げつけて来た。何が『足りない』だ10枚以上皿持ってんじゃねーか!


「というか、さっきの『私の皿を返せ』って部分も何気に突っ込みどころだよな」


「なんで?」


「『番町皿屋敷』ってたしか、主人が大切にしてる10枚の皿を、屋敷で働いている女中が1枚割っちまって、それを責められて自殺したとか殺されたとかそういう話だったと思うんだが……すくなくともあの幽霊自身の皿じゃなかったはずだ。まあ、細かい話だから気にしても仕方ないかもだけどな」


「そうなのか……ったく、誰があんなボスキャラ作ったのか知らないけど、商業用のゲームなら、設定どうこうでネットで叩かれそうな話だな」


 呆れつつ……俺は皿を無視してずかずかと幽霊に近づいていく。

 どうせ効かないんだから、よけたり防いだりする必要もなかったんだよな。ちょっと様子見しようとか考えて時間使っちまったけど、さっさと終わらせときゃよかったわ。


 近くに行くと今度は皿で殴ってきたけど、それも無視してぶん殴って倒した。

 ゴーストと同じで、脆いな。ボスなのに1発で倒せた……いや、コイツの場合は皿の弾幕のせいで近づくのが難しいだけで、懐に入れれば後は楽なのかもな。




 そんな感じで、戦闘はやたらアクティブだったから、そんなに怖くはなかった気がする。……登場した時が恐怖のピークだったな。


「ちなみにコレドロップアイテムな。『10枚目の皿』って名前だった」


「色々ツッコミどころがあるアイテムだぁ……っていうか、皿? どういうアイテムなの?」


「結構有用だぞ? どうもアクセサリーに分類されるみたいで、もってるとゴースト系から受けるダメージを一部カットしてくれるっぽい」


「あ、ホントに有用なアイテムだった」


 というわけで、本日の業務(夜勤)、これにて終了な。さー、帰ろう。かえって早く寝よう。

 夜勤やった分、明日はゆっくり起きていいって言われてるけどな。



 ☆☆☆



 翌日。


 夜。


「何で2日連続で夜勤なの!? しかも別な場所で……」


 夜のお寺や墓場で怖いのを我慢してあれこれやるのは昨日だけだと思ってた麻里奈が、今日も夜の仕事(言い方悪いな)だったと知っての絶叫。


「いや、場所変えて調べないともっと正確なデータにならんし……あと普通に夜限定のデータドロップアイテム優秀だったからもっと欲しいって言われて」


「それに昼のボスと同様に、夜のボスもきちんと倒しておかないと、近くの避難所の人達が安心できないだろ? ついでに帰りに昨日の寺にもっかい行って、リポップしてないかどうかも調べて来てくれってよ」


「くっ、どっちも正論……でも連続はせめて勘弁してほしかった」


「調べてほしい場所はあと7カ所あるそうなので、今日から1日2カ所調べるとして、最短で明々後日まで夜勤の予定になりますので……」


 がくっとうなだれて『ちくしょお……』とうめきながらもきちんとついてくる麻里奈。ごめんな、ホラー系苦手っぽいのに……。

 あ、でも夜勤っつっても必ずしもホラーばっかり出そうなところに行くわけじゃないから。


「? ホラー系じゃないなら、何が出そうなところに行くの?」


「夜行性の動物とか昆虫が出そうなところ。虫取りスポットって有名な……名前忘れたけど、自然公園っぽい場所が2カ所入ってたな」


「ああ、あそこか……そこならまあ、幽霊は出なさそうだし、怖くはなさそうね」


「まあ、代わりにリアルの虫……カブトムシとかはもちろん、蛾とか気持ち悪いのも出るし、あと地面気をつけて歩かないとたまに蛇でるけどな。草も木もめっちゃ生えてるせいで」


「別な危険あるじゃん……」


「あと、昼間に行ってみたけど不自然なくらい何もなかった……それこそ、昼間タイプのモンスターの1匹すら出なかった場所あったじゃん? 2か所。そこ、夜になったら何か変わるんじゃないかって予想立ってるから確認しないといけない」


「なるほど。もっともね」


「それと……昨日と同じ、お寺や墓場で調査しなければならない場所もあと2カ所ありますので……そこは我慢してもらわないといけないです。わ、私も頑張りますから……」


「ああ、うん、そうだよね……わかった、私も覚悟決めるよ。むしろ私は敵の攻撃効かない無敵体質なんだから、私がむしろしっかりしなきゃだもんね! ……ところでさ、7カ所中6カ所はわかったけど、残り1か所はどこなの? 夜に確認したほうがよさそうな場所」


「「「…………」」」


「え、何で黙るの?」


「……もう十年以上前になるんだけどな、『お米の美味しい隠れた名所』だの『静かで平和に老後を過ごすのに最適』とか何とか言われて、一時期……本当に一時期だけ、うちの町が移住先として注目されたことあったらしいんだよ。一過性のブームだったらしいけど、その間にこっちに来た移住者もわずかだけどいたみたいで」


「そういえばそんな時期があったようななかったような……それがどうかしたの?」


「そのごく一時期のみのブームの中で移住してきた人がさ、建売とか空き家リフォームでの入居じゃなくて、完全な新築で、しかも自分の趣味で建てさせた……めっちゃ場違いな『洋館』っぽい建物あるじゃん? 町はずれのあたりに」


「……あの、自然がいっぱいとは名ばかりの、手入れされてないだけで草も木もボーボーに生えまくってる無駄に広い庭があって、その真ん中に立ってるあの洋館?」


「その洋館」


「前の持ち主が出て行ってから所有者不明のまま施錠もされずに放置されてて、ボロボロで不気味すぎてAR災害とかゲームとか関係なくお化け屋敷扱いされてて、ダメだって言ってんのに時々子供達が肝試しに不法侵入するあの洋館?」


「その洋館」


「サバイバルホラーの金字塔って言われてるあのゲームの舞台にどことなく似てて、夜行くとマジで出そうで怖すぎるあの洋館?」


「だいぶ主観とかイメージ入ってるけど、たぶんその洋館」


「………………マジで?」


「すまん、マジ」


「…………(涙)」


 なお、その洋館に行くのは明々後日……最終日にしました。

 せめて限界まで後回しにしたいらしい。断る理由もないので、了承した。


 ……個人的には、後回しにするくらいなら今日さっさと終わらせた方がいいと思うんだが……嫌なことってさっさと済ませて早く終わらせるに限るし。

 ……心の準備とか覚悟する時間が要るから無理? ハイハイわかったわかった。





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― 新着の感想 ―
面白かった。 洋館は状況に適しすぎてる場所だ。なんだ実はアンブレラの支社があるのかこの街は
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