#6 雪宮さんと文化祭②
「こんな感じですかね」
今日は金曜日、文化祭準備の開始日だ。僕と雪宮さんは小道具の係になっている。今日は家にあった使えそうなものを持ってこようという日だった。
「僕の家には、画用紙と折り紙がそれぞれ数枚ずつありましたね、 中学校の時の絵の具も持ってきたけど、恐らく中身が少ないのが半分以上あるかと」
「私も似た感じですね、 プラスでモールとかリボンも少し持ってきました」
「さっき完成した台本貰ったので、それ見て何を作るか考えましょうか」
そう言って二人の席を近づけた。そして台本を、僕がメモするから、少し雪宮さん側に寄せて置いて読み始めた。そして二人で「ここはこれがいるんじゃない?」みたいな会話をしながら進めていった。
話し合いに熱中してきた頃、僕は逆に集中出来ていなかった。
―近い、、、―
今までちゃんと女子と話したことが少ない僕にとって、2人でこうやって席を近づけて話す、という経験は皆無だった。ましてや、あの雪宮さんだ。この状況で何も思わない方が難しい。極めつけは雪宮さんが何も気にしていないから、距離関係なく来ることだ。
そんな事を考えているうちに1つ疑問が浮かんできた。
―なぜこんなに近づいてくるのか―
最初話しかけたときはあんなに冷たかったし、そもそもこんな接し方をするような人ではない。そして別に大して何かあったわけでもない。では何でなn
「…さん、 …たさん、 代田さん」
「はっ、はい、何でしょうか?」
「話聞いてなかったんですか?」
「うっ、聞いてなかったです、ちょっと考え事してて、」
「ちゃんと聞いてください」
「すみませんでした、、、」
「はぁ、ここの場面なんですが・・・」
「ふぅ、やっとこれで終わりだね」
「そうですね、 改めて書き出してみると、作るもの多いですね、 これ材料足りますでしょかね?」
「これだけだと足りなさそうですね」
そう言いながら自分たちが持ってきたものたちを見ながらどうするか考えていると、
「代田さん、今週の日曜日空いていますか?」
「えっ? あ、空いてますけど、、急にどうしたんですか?」
急な問いに戸惑いながら理由を聞くと、
「一緒に材料買いに行きませんか? 買い足さないといけないのなら、2人で話しながらの方が良いかと思いまして、 どうですか?」
もっともな理由が返ってきた。
「い、良いですよ、 行きましょう」
「では、13時に駅前で良いですか?」
「わ、わかりました、 じゃあ何がいるかまとめましょうか」
そう言って春樹は紙と向き合った。だけど、誘われた事の戸惑いに頭を支配されたままで、何も考えられない。
―これは、文化祭の材料を買い足すために行くんだ。周りから見たらデートに見え、、、ることはないだろうが、それでもこれに他意は決してないんだ―
それを脳内で反芻してその場をかろうじて乗り越えられた春樹であった。
こんにちは、小鳥遊雪音です。「#6 雪宮さんと文化祭②」を読んでくださりありがとうございます。
さて、今回の話は前回に引き続き文化再編です。そしてなぜか最初と人が変わったような距離感(物理)で接してくる雪宮さんと、それに戸惑いを隠せない代田くん、そして材料を買いに行くことになった2人、果たして何事もなく文化祭を終えることができるのか。乞うご期待下さい。