#5 雪宮さんと文化祭①
「それでは、私たちのクラス企画は、『劇 シンデレラ』で行きます!」
昼下りの教室に、委員長の声が響いた。僕たちは今、3週間後に控えた文化祭に向けて話し合いをしている。僕たちの高校は例年文化祭では、1年生は校内装飾と合唱コンクール、2、3年生はクラス企画をすることになっている。この3週間は学校全体で''文化祭''の空気になるのもあり、全員それに向かって一生懸命になる。僕は中学生の時から似たような行事は体験してきたが、あまり良い思い出がなく、僕としては正直なところあまり乗り気で無い。
「なぁ春樹」
この僕の前の席のコイツは白上 蓮。中学に入った時からずっと同じクラスかつ出席番号連続という、いわゆる悪友だ。
「お前は何の係やるんだ?」
「まあ、目立ちたくないし僕は裏方の何かが良いかな」
「お前ならそうだよな、 じゃあお前、小道具とか衣装とかいいんじゃないか?」
「その心はいかに?」
「だって春樹、意外と手先器用でしょ?」
「そうなのか?」
「あぁ、俺は器用なほうだと思うぞ」
「そうなのか〜、まぁちょっと考えるわ」
―僕って手先器用なんだ―
そんな新たな発見に驚きつつ、何の係に就くかに頭を悩まされる春樹だった。
「じゃあ今日は係決めしていくぞ! じゃあまずは⋯」
次々に係が決まっていく。僕的には結局小道具にしようと思ってる。この前蓮が勧めてくれたし、正直役に立てるなら何でも良かったって思ってる節はあったし。
「じゃあ次は、小道具が2人、これはなるべく男女1人ずつしてほしいのだが、誰かいるか?」
僕はそこで手を挙げた。そして同時に雪宮さんも挙げた。
このタイミングまでは良かった。雪宮さんが手を挙げたのを見た男共が一斉に手を挙げた。
「男子多いな、 女子は1人だし雪宮さん決定で、男子は、公平にジャンケンで決めるか、 人数多いしあいこの人も脱落で、 行くぞ!ジャンケン⋯」
そして、数分間の激闘の末
「よし、決まったな、 じゃあ小道具は代田君と雪宮さんで決定です、 じゃあもう次行くぞ、 次は⋯」
―まさか、僕が勝ち残ってしまった…―
「よろしくお願いします、代田さん」
「あっ、うん、よろしく」
意気消沈した男子どもの屍の山からの妬みの視線がすごく気になるところではあるが、そんな事に構ってはいられない。
「今週の金曜日から用意開始して良いらしいので、そこまでにどういうのを作るのかとか、それぞれの係で打ち合わせ等お願いしまーす!」
―じゃあそれなら早め早めで話しておかないとだよな、 結構大変かもだし―
「雪宮さん、作るのに必要なものって何がありますかね?やっぱり画用紙とかになってくるんですかね?」「恐らくそうなるかと思います、 あとは絵の具で色塗るものもあるかと」
「あ〜、それもありますね、 家に何か使えそうなものありますか?」
「絵の具は中学校の時のがあると思いますが、残っててちゃんと使えるかと聞かれると怪しいですね」
「僕も同じ感じですね、 取り敢えず使えそうなものをリスト的にして明後日あたりに持ってきてみましょうか」
「そうですね、 何作るかは、おおよそは予想できますが、台本とかが出来てからでもいいですかね?」
「それでいいと思いますよ」
「わかりました」
「じゃあそんな感じで」
自分でそんなこと言いつつも、中学生までの荷物が入ったクローゼットを思い出し
―少しヤバいかも、明後日までに色々探して見つけなければ―
と考え、次々に試練が舞い込んでくる代田であった。
こんにちは、小鳥遊 雪音です。 この度は「#4 雪宮さんと文化祭①」を読んでくださりありがとうございます。
今回から文化祭編が始まります。 クラス企画で同じ係になった春樹と雪宮。2人だけでの作業となったことに対する不安や緊張などの気持ちや、周りの男子勢からの妬みの視線などの数多の試練が舞い込んでくるが、どんな結末が春樹を待っているのか、 ぜひ楽しみにしていてください!
相変わらず不定期になりますが、これからもよろしくお願いします!