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#4 雪宮さんと放課後

「会計お願いします」

「ガーゼと湿布とブロック氷ですね、合わせて650円になります」

「700円でお願いします」

「はい、50円のお釣りです、ありがとうございました」

 なぜ僕がこんな物を買っているのか。事の次第は20分前に遡る――

 今は正午過ぎ。といっても今日は授業が午前中だけだったから、もう放課後だ。今日は清々しいほど天気が良いし明日は休みだから、少し遠回りをして帰っていた。そして、家の近所の公園の前を通ったところで、見慣れた人が1人、ベンチに座っていた。それはもう、動く気配もしないまま。「何をしているのか」僕はそれがとても気になり、つい声をかけてしまった。

「雪宮さん?何をしているんですか?」

「代田さん? 別に何でもないですよ」

 そう言われた春樹は、ますます不思議に思ってしまい、目線を下に向けた。すると、雪宮さんの足首が腫れているのが見えた。更に雪宮さんに目をやると、制服の上にいつも着ているカーディガンに、白や茶色の毛がついているのもわかった。

「もしかして、猫を助けて足を痛めたとかですか?」

 すると雪宮さんは、図星だったらしく、少し気まずそうに「はい、」とだけ答えた。

 僕は雪宮さんに

「そこで待っていてください」

 とだけ伝えて走り出した。

 ――そして今に至る。運よく近くに薬局があったから、いるものだけ買って雪宮さんのもとへ戻った。

「戻りました、待たせてしまってすみません」

 僕はまだ息が整っていない声で、さらに続けた。

「雪宮さん、足出してもらってもいいですか?これ使って良いので」

 そう言って着ていた上着を渡して後ろを向いた。

 雪宮は困惑した声色で

「わかりました、」

 とだけ言った。

 僕は後ろを見てしゃがんでから、買った氷を袋に入れて、簡易的な氷嚢(ひょうのう)を作った。

「代田さん、出来ました」

「わかりました、ありがとうございます、」

 そう言って僕は、雪宮さんの足首の腫れている部分に作った氷嚢を当てた。

「当てるの痛くないですか?」

「はい、大丈夫です」

「良かったです、腫れの痛みが引いてきたら湿布貼るので教えてください、あ、アレルギー的なのありませんでしたか?」

「はい、それも大丈夫です」

 手際よく熟す(こなす)春樹に雪宮は驚きつつも、されるがままに腫れた足を春樹に任せていた。


「はい、これで簡単な応急処置は出来ました、今痛みはどうですか?」

「今は引いてきてます」

「それは良かったです、じゃあその上着着てもらっていいですか?」

「えっ?」

「それと、悪いんですけど、出来れば僕のリュックを背負って欲しいんですが良いですか?」

「すみません、どういうことですか?」

 僕は雪宮さんがとても困惑しているのが見て取れた。

「僕が雪宮さんをおぶって帰りますよ、 上着の方は、もし見つかったらマズイ事になるかもなので」

 そう言って春樹は雪宮の前にしゃがみ込んだ。雪宮は言われた通り上着を着てリュックを背負ってから、自らの体を春樹の背中に任せた。

「乗れましたか?行きますね」

 そう言って立ち上がった春樹は家の方へと足を進めた。

 雪宮さんは春樹の背中の上でずっと困惑していた。しかしそれが、突然の春樹の行動からなのか、はたまた、感じたことの無い程に早くなった鼓動からなのか、それは誰にも分からなかった。


「よし、着いたので下ろしますよ、足の方は大丈夫ですか?」

「はい、もう歩ける程度には和らいだので大丈夫だと思います」

「わかりました、ただまぁ、明日明後日は休みですし、しっかり休んで下さい、 僕もこの休日は予定なくて家に居ますので、何かあったら助けるので言って下さいい、 では、僕はこれで失礼させていただきますね」

 そう言って、家のドアに手をかけようとしたとき、

「あ、あの」

 そう声をかけられた春樹は再び雪宮の方を見た。

「あ、ありがとうございます、とても助かりました」

 そう言われ、少し驚いた春樹だったが、すぐに

「これぐらい大した事ないですよ」

と返した。

 「いえ、本当に助かりました、 あっ、そうだ」

 何か思いついたらしい雪宮は、突然に自分の荷物を探していた。出てきたのはスマホだった。

「あの、PEIN(ペイン)やってませんか?もし連絡を取るとなった時に連絡先繋いでた方が取りやすいかなと思いまして」

 そこそこ大事なことを雪宮に気付かされ、ハッとした春樹は、慌ててスマホを取り出して、連絡先を交換した。

「ありがとうございます、代田さん」

「いえ、こちらこそ」

「あ、あの、今更にはなるんですけど、本当に頼っても良いのですか?」

「勿論ですよ、雪宮さん、 むしろ頼って欲しいぐらいです、 まあ、頼りになれるか分からないですけど」

「本当ありがとうございます、とても嬉しいです」

 そう言って雪宮は代田に微笑みかけた。

 春樹はその笑顔を見て、一瞬時が止まった。そしてふと我に返った春樹は少しの挨拶を交わして、それぞれの家に入っていった。

 家のソファに座った春樹は、先程の感情に戸惑いつつも、その正体はまだわからないままだった。

こんにちは、小鳥遊 雪音です。 この度は「#4 雪宮さんと放課後」を読んでいただきありがとうございました。この話から、私が元々書きたかった内容を書けるようになりました。元々、私がラブコメ好きというのもあり、自分でラブコメを作ってみたいという思いがありました。しかし、なんと言っても私には絵心がない。書こうにも結構な時間をかけて、やっと1枚できる。しかもそれも上手くない。じゃあどうしようか。そう考えた結果が今のこの形でした。ただ小説を書くのも初めてなので、まだまだおかしい部分も多々あるので、書きながら色々学んで上達していきたいです。 そして、この後書きももう少し面白みのある物にしていけたらなと思います。 さて、ただの「お隣さん」だった2人の関係がこれからどのように変化していくのか、楽しみにしていてください! これからも不定期投稿にはなりますが、よろしくお願いします。

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