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#15 代田くんと内山さん

「麦茶ですが、どうぞ」

 今ここは僕の家である。そうして目の前には机を挟んで向かい合って座る雪宮さんと心葉。

「ありがとう、春樹くん、 じゃあ君も座ろうか」

「はい」

 どうしてこんな状況になったのか、その理由は少し前に遡る。


「えっ!? 雪宮さん!?」

「あっ」

「あっ」

 3人の間に沈黙が流れる。

「えっ、 いやだって、 ここ春樹の家じゃ、 えっ!? どういうこと?」

 もう心葉は完全に戸惑っているようで、状況を整理しようとしているが、上手く出来ていなかった。

「えっと、 私の家がここでして」

 そう言って2人の前を通り、隣の家の鍵を開けてみせる。心葉は"ポカーン"という文字が見えそうなぐらい、口を開けて固まってしまった。

「言ってなくてごめんな、心葉、 別に心葉の事を信じてないわけではないんだけどさ、もしこれが広まったら大変なことなるだろうなって思って、なるべく口外しないようにしてたんだよ」

「はい、 私も代田さんと同じ理由ですね、 私も自分が学校でどのような状況にあるかは分かっているつもりですので、 まさか代田さんも同じこと考えていたとは思いもよらなかったですが」

 その言葉で、 ―そういや僕、雪宮さんにどうしたいか言ってなかったっけか。結果的には良かったけど、最悪知らず知らずの内に学校全体に広まってたなんてこともあったのか。でも雪宮さんならそんな事にはならないかな― などと頭によぎっていた。

「ちょ、ちょっ、 ちょっと待って、 ちょっとうまく話を掴めてないからさ、 中に入って話さない?」

 心葉は僕の家のドアを指を指して言った。

「ちょっ、待て心葉、 何言って…」

「雪宮さんもその荷物置いて準備できたら来て」

「ちょっ、待てって、 雪宮さんもこいつの言う事、聞かなくていいk」

「わかりました、 冷蔵庫に入れるものもあるので少し時間かかるかもしれないですが」

「おっけい、 じゃあ先に入って待ってるから」

 そう言うと雪宮さんは雪宮さんの家に、心葉は何故か僕の家に入って行った。1人残された僕も、すぐに自分の家に入った。


 急に雪宮さんが来る事になってから、僕は急いで、客人用として出せるコップを探すために食器棚を漁っていた。するとソファに座る心葉から声が飛んでくる。

「なに~、 雪宮さんが来るってなって慌てて準備してるの〜? 私の時は何もしないくせに〜? 春樹も雪宮さんに特別扱いですか〜?」

「そんなんじゃねえよ、 一応初めてくる人にはもてなすのが礼儀だろ、 てかお前、もう動揺とかしたりとかないのかよ」

「いや〜、もうね、 考えても分からなかったから、説明してもらうまで考えなくて良いやって思って」

「なんだよ、それ、 それにお前に何もしないのは『私の時は何もしなくて良いよ〜』ってお前が前に言ってたからだよ」

「あれ? そうだっけ? 私はてっきり、雪宮さんの事が好きだからかな〜って思ったけど」

 突然そんな事を言われ、僕はバッと心葉の方に振り向いた。

「お、お前急に何言ってるんだよ」

「あれあれ〜? 動揺してるんですか〜?」

 心葉は両手で口を隠して、わざとらしそうな顔でこっちを見ている。

「そ、そんなわけねえだろ」

「そうなの〜? でも頬も耳も赤いですよ〜、 やっぱり図星でしたか〜?」

「お前、ここ追い出してやろうか?」

「やーん、 春樹がイジメる〜」

 そう言いながら心葉はソファで丸くなって頭を隠す素振りをした。『お前なぁ』とは思ったが、もう心葉に構うのは辞めて僕はコップ探しに専念することにした。それを見た心葉は構ってくれなかった事に拗ねたのか、起き上がって頬を膨らませていた。


 しかしその顔はすぐに戻ることになった。

"ピンポーン"

 チャイムの音が聞こえると、心葉の膨らんだ頬もしぼんで、新しいおもちゃを買ってもらった子供みたいな表情になった。

「雪宮さん来たみたいだよ! はーい、 鍵開いてるから入ってきて良いよー」

「だから、なんでお前が言うんだよ」

 ちゃっかり突っ込みながら玄関へ向かって雪宮さんをお迎えした。

「お邪魔します」

 雪宮さんを見た途端、学年1、もしかしたら学校1美しいと謳われる美女が自分の家の玄関の中にいるという、世の男子が夢にも見ないであろう状況が今目の前で再現され、否が応でも緊張してしまう。

「ど、どうぞ、、」

 そんな緊張した動きをする僕を、心葉は横目に見てニヤニヤしている。

「そんなかしこまらなくて良いよ、雪宮さ〜ん、 靴脱いだらこっちおいで〜」

 そう言いながら戻っていく心葉。『だから何でお前が』とは思ったが、今回ばかりは助かったので良しとしておこう。


「雪宮さんはそっちに座っていいよ」

 そう言って誘導した心葉は、机を挟んで雪宮さんと反対側に座った。

「麦茶ですが、どうぞ」

「ありがとうございます、代田さん」

「ありがとう、春樹くん、 じゃあ君も座ろうか」

「はい」

 麦茶を置くと雪宮さんの隣に座った。机に2人とも入るように座ったが、なるべく雪宮さんに当たらない程度の距離を保っている。心葉は並んだ僕と雪宮さんを交互に見てから話を始めた。

「はい、 じゃあ早速本題に入ろうか、 なんでこうなっているのかの元凶について、春樹説明して」

 心葉が僕の方に目線を固定させて言ってくる。その表情からだと怒っているのか怒っていないのかは分からなかった。ただ少し怖く感じた。

「はい、 少し前にお隣さんが引っ越しまして、いっとき誰も住んでいなかったんです、 それで今年度に入ってから間もなく、そこに雪宮さんが隣に引っ越してきまして」

「はい、 雪宮さん、今のところで違うところはある?」

 今度は雪宮さんに目線を移してから言う。

「はい、 こちらには4月上旬頃に来ました」

「わかった、 それで? 春樹」

 今度は再び僕に目線を合わせる。

「えっとですね、 流石に隣に雪宮さんが住んでいるということを広めるのはリスクが大きすぎるということは心葉さんもわかりますよね、 だから僕は誰にも教えてないし教える予定もなかった、というのが事の発端です」

「ふ〜ん」

 心葉は少しの間考えてから言った。

「わかったよ、君たちがどういう状況にあったのか、 それで、私もこの事については口外禁止ってことだよね」

「うん、そうしてくれると助かる」

「わかったよ」

 心葉がわかってくれて良かった。と思ったのも束の間、

「その代わり、 春樹には貸し1ということにしとくね」

「えっ、 何で、」

「別に貸しにしなくてもいいよ、 だけどその時、その隠してきた秘密はどうなるかな?」

 『コイツ』とは思ったが流石にそれは困る。広まってしまったらどうなることか。

「貸しということにさせて下さい」

「それでよろしい」

 そう言ってニコッとすると僕の方から雪宮さんの方に目線を移動させた。

「それで雪宮さん、春樹に何もされてない?」

「あっ……はい、何もなかったですよ」

「その間は何かあった人の間だよ、 いや〜春樹、 いくら隣だからと言っても、流石にこんなに可愛い子にするのは良くないよ」

「いやいやいや、 可愛いってのは認めるけど、ホントに何もしてないから! 雪宮さんも何ですか、その間は!?」

 そう言って雪宮さんを見たが、彼女は何故か少し下を向いていた。よく見ると彼女の顔が少し赤くなっている。

「あれ、雪宮さん、もしかしてちょっと暑いですか? 顔が赤くなってますけど、 窓開けてきましょうか?」

 雪宮さんにそう聞いたが、そっぽを向いたままだ。

「大丈夫ですよ」

「でも、顔があk」

「本当に大丈夫です!」

「あ、はい、 わかりました」

 結構食い気味に来られて少し驚いた。

「そ、そういえば、内山さん」

「心葉でいいよ」

「では、 心葉さんはどうしてここに来られてたんですか?」

 無理矢理話題を雪宮さんに変えられた気はするが、本人はまだ顔の紅潮が収まっていなくて、表情に少しの動揺が残ったままである。

「あぁ、それはね、 私が料理教えてもらってたの」

「代田さんにですか?」

 雪宮さんは紅潮した顔から驚いた表情に一変して聞いた。

「そ、 春樹ね、意外と料理上手なんだよ」

「意外とは何だよ、 僕の父親が料理上手で、それで教えてもらってたから、一応味はそこそこではあるけど作れるよ」

「私も一人暮らししてみたいな〜って思ってるんだけど、今まで料理とかほとんどしてこなくてさ、全然分からないんだよね、 だからこうやって教えてもらおうかなって、 雪宮さんも1回春樹の料理食べてみなよ、 それかもういっその事、春樹が雪宮さんのご飯作ってあげたら?」

「材料が増えるだけだし、別にそれでも良いけど」

「えっ、マジ? 結構冗談のつもりで言ったんだけど、 だってよ、雪宮さん」

「そこまで言われていると、少し食べてみたいですね」

「それなら言ってくれたら作って持っていくよ」

「ありがとうございます」

 そんな感じで3人は他愛も無い会話で盛り上がっていた。


 話に花が咲き始めた頃、ふと時計に目をやると、時計の針は8時を回ろうとしていた。

「あっ、もうこんな時間じゃん! 私そろそろ帰るよ」

「そうですね、 明日もありますし、私もお暇させていただきます」

「それなら心葉、家まで送るよ、 外暗いし、流石に1人で夜道歩かせるわけにはいけないから」

 そうして3人は揃って外に向かう。

「それじゃ、じゃあね〜雪宮さん、 また明日〜」

「さよなら、雪宮さん、 また明日ね」

「はい、 さよなら代田さん、心葉さん」

 雪宮さんは歩いていく2人を見送ってから家に入っていった。その顔には少し寂しそうな、そんな面影が残っていた。


 人影は無く街灯も少ない通りを、春樹と心葉の2人は歩いていた。

「いや〜春樹と2人で歩くなんて久しぶりだね〜」

「そうだね、 ホントいつぶりだろう」

 心葉を見ると、これまでの思い出にふけているような表情でいた。

「いや、まさかね、 春樹の家の隣にあの雪宮さんが住んでるだなんて、最初見た時びっくりしたよ」

「僕も最初は驚いたよ、 最初雪宮さんが挨拶に来たんだけど、その時本当カタコトでしか喋れなかったもん」

 そうして再度心葉に目をやると、先程の思い出を懐かしんでいるような表情とは一変、ニヤついた顔でこちらを覗き込んでいる。

「それで? 春樹は雪宮さんのことどう思ってるの?」

 急にそんな事を聞かれ、思わず「えっ」と声が漏れてしまう。

「な、なんでそんな事、急に聞くんだよ」

「なんでって、 あんなに可愛い子が隣に住んでるんだから、春樹も気になったりしてるのかな〜って思って」

「…残念ながら、思ってるような返答はないよ」

「え〜 面白くないなぁ」

 そう言うとニヤついた顔を戻し、再び前方に顔を向けた。

「じゃあこの話は春樹に免じて終わってあげよう、 そういえばこの前の文化祭、雪宮さんと春樹が、私達の役の代わりしてくれたんでしょ」

 僕はそれを聞いて、今の心葉が言った「文化祭」と「雪宮さん」というワードに、この瞬間にあの出来事の事を思い出された。ステージの上で僕と雪宮さんが一緒に倒れて覆い被さられた、あの出来事だ。

「代役してくれたのホントに助かったよ、 ありがとね」

 一気に思い出されるあの時の記憶と感覚。思わず顔が紅潮してしまっているのを悟られないように、そっと顔をそらした。

「でも私も春樹と雪宮さんの劇見たかったな〜、 ってあれ、 春樹どうかしたの?」

―てか、この紅潮なんだ? これは雪宮さんの顔が急に近くなったのを思い出したから赤くなってるだけだよな、 決してそういうわけ(恋愛感情)とかそんなんではないよな―

「ねぇ、 はるきって、 ねぇ」

「僕はそういうのじゃないよ!」

「ビックリした、 春樹、急にどうしたの?」

「あっ、ごめん、 何でもないよ」

―落ち着け、 いつも通りにいこう、 いつも通りに―

 そう言って自分に言い聞かせて、僕はどうにか平常運転でいようとしていた。


「ねぇ、春樹、 テスト勉強してる?」

 急に心葉がそんな事を聞いてきた。

「心葉がテストの話振ってくるなんて珍しいね、 どうかしたの?」

「今回の範囲、分からないところ多くてさ、 春樹は今回のテストどう?」

「僕は理系科目はそこそこって感じだよ」

「え〜 春樹も同じ苦しみ味わってると思ってたのに〜」

 そう言って心葉は肩を落とした。

―数学とか理科は、雪宮さんに好印象をと思って勉強してたからね、 てかそういえば最近そんな事全然考えてなかったな、 もう印象とかそんな事は大丈夫だろうから良いんだけどね―

「それなら放課後一緒に勉強会しない? 明日から私の部活、テスト前で休みだからさ」

「いいね、 じゃあ明日からテスト日まで、できる日は勉強会しよう」

 そう言うと、心葉は落としていた肩を上げた。

「よし!決まり! あ、今日はもう送るのここで良いよ、 それじゃ明日から勉強頑張ろうね! また明日〜」

「また明日〜」


 心葉をある程度見えなくなるまで見送ると、Uターンして今来た道を戻っていく。

―勉強会なんて初めてだな、 よし、 今回のテスト頑張るぞ!―

 テストで憂鬱だった足取りは、気付けば軽くなっていて、僕は無意識にも明日からの勉強会を楽しみにしているようだった。

 こんにちは、小鳥遊 雪音です。「#15 代田くんと内山さん」を読んでいただき、ありがとうございました。最近は土日や祝日まで忙しいことがあり、小説の方まで手を回せることが少なかったですが、なんとか書き終える事ができました。一応風呂場などで内容を考えようとした事は多々ありましたが、風呂から出ると頭のなかで考えたストーリーがスッキリした気持ちと共に出て行ってしまいます。その結果、そもそも風呂の中でストーリーを考える事を諦めかけている今日この頃です。


 さて今回は私の最近の趣味の内の1つについて話そうと思います。「サイクリング」ですね。私今ピチピチの高校2年生なのですが、去年の夏ぐらいに友達に釣りに誘われて自転車で少し遠い所に自転車で行ったのが始まりでしたね。そのグループで色んなところに行くことになって、直近では往復で約100kmを漕ぎました。少しずつ行く人数も増えてきて、最初4人だったグループも今では倍の8人になって、結構賑やかになってます。今他の人はロードバイクとかサイクリング用の軽いクロスバイクなのですが、私が5年物の重ためのクロスバイクなんですね。なのでもう少し走りやすい自転車を、お金を貯めて買いたいと思っているのですが、なんせ高いので、その目標はまだまだ先になりそうですが…。ということで、私の趣味「サイクリング」の話でした。


 今回の話はいかがだったでしょうか。心葉の尋問(?)によって、遂に雪宮さんと「お隣さん」という関係である事を伝えてしまった春樹。そして、ずっと隠してきた秘密を心葉にも秘密にしてもらうために得た、心葉への「貸し1」。果たしてこの「貸し」は春樹と雪宮さんに関係するのか、そして明日からのテスト勉強会はどうなるのかこうご期待ください。 

 投稿は不定期にはなりますがこれからも何卒よろしくお願いします。

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いつも楽しく読ませていただいてます! 続き、めっっっちゃたのしみにしてます!!!
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