#11 代田くんと文化祭 〜上編〜
今日は土曜日。
そう、 今日は皆が待ち望んだ文化祭当日である。皆「どこ行こうか?」や「ここ後で行ってみようや」などの話し声が、四方八方から聞こえてくる。 既に校内は賑わっており、一般公開も行っているため、いつも以上に人がごった返している。 皆各々の回りたい人と一緒に回っている。
―僕の文化祭は、クラスのシフトから始まるのか。 他の人はさ、それぞれの部活での動きもあるし、劇自体に出演する人もいるから、僕みたいな帰宅部かつ劇に出演しない人がシフトが多くなるのはわかる。わかるよ。わかるんだけどさ、これは多すぎないか?―
そう言って自分のシフト表に目を落とした。それを見ると殆どの時間がシフトで埋まっていた。辛うじて文化祭終了の1時間前からは入っていないものの、それ以外は全時間何かしらのシフトに入っていた。
僕的には大して行きたいところも無さそうだったから問題はないけど、強いて言うなら3年生のクラスの1つが"謎解きの舘"ってのをしているらしいから、それは少し気になっている。僕、結構そういう謎解きとか脳トレとか好きなんだよね。でも、この調子じゃ厳しそうかな。
だけど、、、
〜文化祭 開始15分前〜
僕が、することが無く手持ち無沙汰になって、小道具の最終確認をしていた時のことだった。
「おーい、はるきー、 少しこっち来てくれ、 少し話しとくことあるから」
「蓮、どうしたんだ?」
「実行委員が春樹にごめんな、シフトこんな入ることなってって」
「あー、それね、 全然大丈夫だよ」
「春樹ならそう言うと思ったよ、 それで、折角の文化祭でこうなって悪いから、代わりと言っちゃああれだけど、呼び込みながら色々回って良いだとよ」
「良いのかよ、 僕だけそんな事して」
「良いんだよ、 折角の文化祭なんだし、お前も一緒に準備してきたんだからさ、しっかり楽しめよ、 それに他のシフトの人にも了承を得ているらしいから」
「ありがとう、 それならお言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
と一応回っていいよと了承は得ている。
あの時はあんなこと言ったけど、自分だけというのは実際気が進むわけではなかった。だから、なるべく見回り優先で行く予定だ。
そんな事を考えている内にシフト1回目が終わった。すると、向こうから雪宮さんが歩いてきた。
「雪宮さん、雪宮さんもシフトだったんですか?」
「あぁ代田さん、 そうですね、 校内回って宣伝をしてきました」
「そうだったんですね、 お疲れさまです、 雪宮さんはこの後どこに行く予定なんですか?」
「私はずっと教室にいようかなと」
「えっ?」
僕は目を丸くした。
「どうしてですか?」
「行きたいところも特にありませんので、 それにいつも回ってると、色んな人から声をかけられるんです、 だからあまり回りたくないんですよね、 だからそれなら呼び込みとかをしておこうかなと」
「そうなんですね」
春樹は何とも変な気持ちに襲われた。雪宮さんは回りたくないと、そう言ってる。
だけど本当にそうなのだろうか。 雪宮さんは、自分から小道具作りという影で劇を支える係に立候補し、遅くまで残って小道具を作ってきた。 それを僕は知っている。 そんな人が文化祭を回りたくない、 そんなことがあるだろうか。
しかし、僕に出来ることはあるのだろうか。 この気持ちを晴らす方法は無いのだろうか。 わからない。
でも
『折角の文化祭なんだし、お前も一緒に準備してきたんだからさ、しっかり楽しめよ』
と、蓮は言ってくれた。 それは僕に対してだっただろう。 だけどこれは皆に当てはまるはずだ。 もちろん、僕以上に頑張ってくれた雪宮さんにも、その楽しむ権利はある。
そう思った僕は自然と、言葉を口にしていた。
「雪宮さん、 一緒に文化祭回りませんか」
こんにちは、小鳥遊 雪音です。「#11 代田くんと文化祭 〜上編〜」を読んでいただきありがとうございました。最近、欲しいものや行きたい場所が増えていくものの、それにお財布が間に合わず、ほぼいつも金欠状態にある今日このごろです。
さて、今回もお題を出します。前回は「得意なスポーツ」でしたので、今回は逆に「苦手なスポーツ」でいきます。前回は「他よりも比較的得意なスポーツ」みたいな感じで選びましたが、今回の話はこれだと確信して言えます。それは「水泳」です。 他に鉄棒や跳び箱など苦手に感じるものもありますが、泳ぎだけはズバ抜けてできません。まず、私の人生での泳ぎの自己最長記録は中学3年生の時の約10mです。 それも壁を蹴って、いわゆる「蹴伸び」をして進み、「バタ足」と言えるかわからない程度の「バタ足」をして少し進むだけという、ちゃんと「泳ぎ」と言えるかも危うい物になりますが… クロールをしようとしてこれなので、勿論平泳ぎや背泳ぎはできません。さらに私の通った高校は水泳の授業は無く、中学以降泳いでいないので、今では殆ど泳げないと断言できます。 元から水が怖く、小学校まででまともに泳いだ記憶がありません。 最近驚いたのが、風呂で洗顔するときに、お湯だと顔にかけても何ともないのですが、冷たい水を顔にかけると、脳が拒絶しているのか、どうしてもキツくなってしまって出来ないという事を最近になって知りました。 これからも何もない限り、水泳を上達しようと思う可能性は限りなくゼロに近いです。 ということで、私が苦手なスポーツは「水泳」でした。
さて、ようやく文化祭当日をむかえ、クラスのシフトから文化祭が始まったという春樹は、色んな人に話しかけられるからと回りたくないという雪宮さんを、一緒に回らないかと誘います。 文化祭を一緒に回るというのは少し意味を持ってくるような気もしますが、この先2人の文化祭はどう進んでいくのか、 ぜひお楽しみください。