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98.星の王子様

〈ルサールカ・エルフィネス・ルセル〉


ユリアンの中は居心地がいい。


居るだけで魔素が湧き立ち、魔力が供給される。

わたしたちの様な者が聖地と呼ぶ力湧く土地よりも遥かにスゴい。

だからかな、もうすぐ進化しそうだと判るんだ。


天人からは(ほとん)ど影響を受け付けない身体になったけれども、全く切り離された訳ではない。それが嫌だった。

だっていざとなればその僅かな繋がりから支配されるかも知れないから。

そうしたら……ユリアンと引き離されるかも知れない。

いえ、敵対させられることだってありえる。


完全に縁を切るには……ユリアンの眷属(けんぞく)になってしまえばいい。

思い至れば躊躇(ちゅうちょ)は無かった。

ユリアンの中でユリアンと魂を少しだけ分け合うの。


わたしの一部をユリアンへ、ユリアンの一部をわたしへ。

なんと心地良い。


ユリアンの本性とは何度も接して来た。怒りと後悔に塗り込められた前世。

受動的だけど愉しげな今生。


転生して良かったと想い生きている今の生。


その良かったの中にはわたしもいる。役立ててもいる。


ユリアンはわたしの主となり、わたしは守護精霊から眷属精霊となった。

意識の深いところを検知する。

うん、天人とは完全に縁が切れた。


ユリアンの増幅し続ける魔素と紡ぎ出される膨大な魔力はいつかユリアンを人ならざるモノへと変えるだろう。

わたしはソレを遅らせることになる。それがユリアンにとってよいことかどうかは分からない。

少なくともクロエを超えさせてはならないと本能が言っている。気がする。


ユリアンの一部を貰ったからだと思う。賢者の権能を得た。

全属性、全外法も獲得した。

スゴい! なんでもできる。組み合わせれば不可能なんてないんじゃないかな?

電気? これは発現していなかっただけで、わたしも具備していたっぽい。

これも秘めた可能性がスゴい。


なんなのよ? 今更ながらユリアンがスゴすぎる!


でもあんまり使いこなせていないよね。わたしがいろいろと試してユリアンに遣り方を教えてあげる。

二人で強くなろうね。



あ、進化が終わる。


また新しくわたしが始まる。上位精霊から大精霊へ。この上には天人しかいない。

ユリアンと共にあり続ければテラに至るかも知れない。


無私の者へと成り変わるのは絶対にいやだから気を付けなきゃ。



さぁ、余剰となる力を放出しましょう。そして新しいわたしをユリアンに愛でてもらいましょう。


隠すことなく全てを見せてくれるユリアンの信頼にわたしは応え続けるの。


永遠に。




〈ユリアン・エルフィネス・ルセル〉


絶倫無双は寝不足と凄まじい体力の消耗には余り付与をくれなかった。

あの紛争地での2日間よりも過酷な二晩を生きて乗り越えた朝、何もかもを忘れて何処かへ飛んで行きたい、そんな気持ちになったんだ。


だから、飛んだ。


つばさをくだ……なくても飛べた。

自由だ、フリーダムだ。融合炉搭載型だ。

女の子が信じてくれたからだ!


楽しい、もうね、楽しいの。お空をキューンって、ウフフ。

ルサールカのお陰よね。

ありがとうルサールカ。大好きだよ、ルサールカ。

ひょっとしたらあの中で一番かも知れない……!?


クロエから威圧感が!

何故判るんだ!?

オレの魂はあの絶対強者ともリンクしているのか?


思考が読まれて……いるわけはないな。

未だにオレの本質に気がついていないし。ならば勘か。


うーん、怖ぇ。



降りたらヘルガが


「あの、私を抱いて飛べますか?」


え? 出来そうな気がする。

やってみた。


「きゃあ! スゴいです。飛んでいますよ、ユリアン様!」


うむ、この無垢なる反応がさっきまでのササクレだったオレを癒す。

まぁ、この子もオレを追い込んでいた(むれ)の内の一人なんだけれどもね。


「ユリアン様〜、次はわたくしも〜」クラウディアか。


良かろう。


順番に抱いて飛んだ。最後はクロエ。


「行けるだけ上へお願いします」


ほえ?

うん、まぁ、オレもやってみたいな。

よし。


鉛直に一直線。クロエが風圧球で囲んでいるから圧力は感じない。

前ではなく、後からオレを抱きしめる形の彼女は足を絡めて身体を固定し、空いた手でいろいろと(まさぐ)っている。いつものセクハラだ。

相変わらず愛されてるなぁー、なんて考えながら上昇を続ける……蒼天が暗くなり始めた。

呼吸できるし、寒くもない。風圧球のお陰か。

更に上がると……多分成層圏を超え……られない。

重力が……いや、ルサールカが言っていた、「大気との相性がいい」と。大気圏外は無理ということか。風、つまり空気がなきゃダメなのね。

でも、眼前には宇宙だ。


上昇を止めた。二人で全天を眺める。そして足下を……

やっぱり地球そっくりだ。この高さでも充分に判る。東ヨーロッパや中東が一望だ。まんま地球。


やはり作為ある世界なのだな。

誰かがこのように創ったんだ。

やったのが誰かは判っている。創世神だ。


用意された擬似地球の世界に地球人はオレだけなのだろうか?

多分「今は」そうなのだろう。

救世の御子とは、つまり地球からの転生者。

オレで7人目の転生者。か。


「ユリアン?」


目を向けるとすぐそこに憧れの麗人の顔がある。

やっぱりいい女だな。

まだ手が動いてるけど。


「降りようか」


「ええ」


元いた場所は分かる。ルサールカが居るから。

ほぼ自由落下で降りて行き、音速超える前に減速、静かに着地した。


「すごい上に行きましたね。どれ程上がられたのですか?」クラウディア


「星の世界までだよ」


「まぁ、星ですか?」


「うん」



全員にせがまれた。

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