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94.ヘルガ無双

〈クロエ・ルセル〉


王都ユリアナでの2泊は中々充実したものであった。


出立前にユリアンより魔力注入されたソラはご満悦だ。さらに大きくなっていないか?

まぁ、背中に余裕があり、移動すらできる……エイダが寝転がっているな。


うむ、広い。


ヘルガがユリアンに水魔術のスピアに、より質感を持たせるにはどうしたらよいか質問している。

なんだ? 少し気になり耳を傾ける。


「水は温度変化によっても重量は変わらないけど、体積を縮めるように圧力を掛けるのはどうかな?」


「圧力ですか?」


「大岩の破壊の時に炎に風を纏わせて引き絞ったじゃない。あんなふうに重量はそのままに、水に圧力を掛ければ密度が増して質感があがるかもね」


そう言ってユリアンが水球を出して実践してみる。右掌上に浮遊させてなにやら加圧しているようですが………


「あ、冷たい? でもそんなに固くなった感じはないね」


「人体くらいの質感を目指しているのですが」


「質感? どれくらいかなぁ、とりあえず100倍くらいを想像して……うん、冷たい」


「冷たいのは……温くできませんか? 人肌くらいに」


「火魔術を芯にして水の温度を上げて、圧力を掛けて質感を上げて……密閉するために空気圧縮膜でさらにコーティング……できた」


「なんだかスゴいですね。触っても大丈夫でしょうか?」


「ちょっとまってね」


ユリアンが強化を掛けた指先でギュインギュインと唸りを上げる球体に軽く触れると……指先が吹き飛んだ。


驚いて下の森に放り投げたソレは着地と共に轟音を上げて半径100mあまりを吹き飛ばした。

皆が沈黙してそれを見る。

ソラまでもがみている。だから自然と旋回し、現地の惨状が見て取れる。

理により構築された複合魔術。魔導ですらないソレはその術式の規模からは想像もつかない猛威を発揮した。


あ、ユリアンの指先……ヘルガが止血している。

ワタシが代わり、元通り生やした。


「ユリアン」


「……はい」


「アレはソラの上では止めよう」


「はい。ごめんなさい、ソラ」


「ゴルル、びっくりした」


「うん、ボクもだよ。ホントにごめんね」


「うん」


会話が成り立っている。


「あれって私でも出来るでしょうか?」


「ヘルガは水が魔術中級だよね? 多分出来るよ。魔力滞留多目にしておけばスピア状にして連発とか出来るかも。ただね、火炎封入はあんまり意味なかったかも。冷たかったし」


「攻撃魔術としての転用ですか。それは(たぎ)りますね!」


うむ、向上心があって宜しい。


しかし、ユリアンの思考方法は独特だな。空間収納もユリアン発案だし。

防御結界も「敢えて教えなかった」のに、自力で顕現(けんげん)させるし、うん。さすが我が伴侶、油断がなりません。



1泊で東方国境地域へ来ました。

今のソラならばもっと速く飛べますが、敢えてユックリと進みました。

ソラに気が付いた地上の者達が手を振っている姿が何度も見られます。

本当に周知されているようでなによりです。


国境の森に沿って南下すると城壁を備えた巨大な都市が見えて来ました。宰相から貰った地図によるとガイウスブルグという……ガイウスの領地だそうです。

家名ではなく、名前が……代々の領主が引継ぐ名なのだとか。


ここは略奪も間引きもなく、混乱前のままを保った土地だそうなので、立ち寄る予定をしていた街です。


一応外門の外に着地。



まだ日が高いので門はひらかれています。

この辺りは通商破壊が起きておらず、まぁまぁの数の中人族が入門待ちをしていますね。

あ、獣人がいます。東に多いですからね、この辺りも取り引き範囲なのでしょう。


うん、皆がこちらを見ていますね。

ソラは目立ちますから。


門の方から騎士らしき一団が駆け足でこちらへ向かってきます。

敵意は感じられない。


「陛下と……ドライリッター様御一行でしょうか!?」


「あぁ、我はユリアン・エルフィネス・ルセルである。余のものは我が妻達と侍女だ」


臣下の礼か。面倒だが、ユリアンに対し礼を省いたら殺す。


「……当ガイウスブルグは陛下の最側近ガイウスの領地に御座います。どうかご自由にお振る舞い下さい。足らぬ物、人、なんでもご用意いたします」


「あぁ、ありがとう。済まないが一夜の宿を頼む」


「承知! ディアス、城へ先行し、貴賓室と晩餐の支度を急がせよ!」


「はっ、(うけたまわ)りました!」


走り去る騎士。

遅い。


「この飛竜を同伴したいのだが?」


「御随意に」


ソラに乗って行こうかとしたらユリアンに止められた。


「せっかくきた初めての街だよ? 歩いてみていこうよ」


ユリアンがそういうならば。


歩き出したワタシ達にソラが徒歩でついてきます。

門は大きく、ソラも潜り抜けられました。

上位種に変化してから前脚が生えたので、四足歩行も可能です。

普段は二足歩行ですが。



沿道には民衆が集まり始めました。それでもユリアンは気になった店を覗いたり、屋台の焼き物に興味を示したりしながら暢気(のんき)に歩いています。


マグダは人混みに消え、隠形(おんぎょう)での警備に移行しています。

ベアトリクスは先頭に立ち、分かりやすく殺気を放って警戒しています。

これで近づく馬鹿は「あまり」いないでしょう。最後尾にはソラが居ますし。


「うおっ! 何? この行列。美人さんや可愛い子ちゃんばかりじゃん! 誰か一人くらい俺と遊んでくんない?」


…………? 強さの検討がつかない?

いや、違うな。ワタシよりはだいぶ落ちる。だが、魔素量や魔力滞留の量や強度がまるで掴めん。


どうなっている? あ、あれか。魔力無効化か。


む、男がユリアンへ手をかけようとしている。


ベアトリクスが抜剣し斬り掛かった。縦の剣筋を瞬動で脇へ(かわ)した。

ベアトリクスは身体を捻り無理矢理に剣筋を横薙ぎに。


「うおっ!」


男は紙一重で……躱せなかった。


脇腹を数cmほど斬られている。


「なんだよ! なにマジになって斬り掛かってくんだよ!? 俺が何したっていう……」


ベアトリクスの連続する回転蹴りを躱しながら……合間に入った斬撃で左腕を斬り飛ばされる。


「待って、まっガハッ!」


心臓に一突き。


中々によい問答無用でした。


おや? 男の足首に寸鉄が刺さっていますね。マグダの仕事か。


やっと兵士や騎士が駆けつけてきた。


「これは……」


「この馬鹿は御一行へ不躾なる声掛けをし、ユリアン様へ近付いてきた。だから斬った。処分しておけ」


ベアトリクスが受け答えしている。


「おい、コイツって……」


「あぁ、ヤバいな」


ん? なにを気にかけている?


「なんだ。コイツがなんだというのだ?」


「あ、すみません。この男は恐らく国喰い旅団の幹部かと思われます」


「なに? あの国喰い旅団? 何故分かる」


「この襟の徽章が旅団幹部のものなので」


「……この街が喰われると?」


「報復はあるかと……」


ベアトリクスがワタシを見る。

その目が「どうしましょう?」と言っている。

うーん、面倒だな……


「その国喰い旅団ってなに?」


あぁ、ヴァン・ヘルムート辺りの者だと知らないか。特にユリアンは保護され過ぎて世間知らずだし。

だからワタシが付いていないと。


もう、それじゃあ……


「陛下、私からご説明いたします」


ベアトリクス!?


「元は遥か東方より流れてきた傭兵団で、正式名は『暁の明星』というそうです。ただ行状が非常に悪く、赴いた先の小国等に居座り、盗賊まがいの悪事を繰り返し、その国が立ち行かぬほどに疲弊(ひへい)すると次へ移りまた悪事を、ということをここ十数年は続けております」


「大勢いるの?」


「推定ですが、200人くらいと云われております。ただ、奴等の幹部クラスには何か特別な能力があると人伝に聞き及びます」


「これも幹部なんだよね? あんまり強そうじゃなかったけど?」


「……陛下はそのようにお見立てに?」


「うん。多分一太刀で首ポン」


「さ、さすがドライリッター様」


「やだなぁ、もう。やめてよね、その呼び名」


ザワ!!


あー五月蝿い。


ワタシからユリアンに言おうとしてたのに奪うし、余計なことを言うし……舌を切り離してやろうか。


「クロエ、ダメだからね」


クッ、ワタシをお見通しなユリアンが……好き。



とりあえず城へと移動した。

晩餐後、茶を飲んでいると城外に闘争の気配を感じる。



「国喰い旅団の復讐対策は大丈夫?」


「陛下の御心をおさわがせするようなことでは御座いません」


「そうは言うけど強いんでしょう? 君達にとっては」


自称武人達が固まっていますね。


「部隊の居場所は分かる?」


「それが……この街に滞在中でございます……」


「なぁんだ、早く言ってくれれば……しかも、もう来てる?」


「既に城門2箇所が100人ずつ二部隊に包囲されておりまして……被害者も出ております」


まぁ、把握していたが。圧されていたのか。情けない。


「えーと、クロエは一人でいいね。ボクとベアトリクス、マグダで裏門へ行こうか」


「待って下さい。ワタクシも出ます」


「私も魔道士としてお役に立てるはずです!」


「えーと……二人はクロエと行って。クロエ、お願いね」


「……ユリアンと一緒が……」


「クロエ、お願いね!」


「はい」




正門前。


「うちのゴルターぶっ殺した遣手はどいつだ? ソイツを引き渡せば今日のところは引き上げてやっても……」


「ヘルガ、燃やしてやりなさい」


爆炎魔道範囲攻撃術式発動(広域火炎爆裂)

暴風魔道範囲攻撃術式発動(燃焼効率上昇)

光熱集約化光矢連続形成発動(発光収束高熱化レーザー多発)


全展開、発射!


ドゴォォ……ゴォォボウン!

ピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュン



ヘルガ、成長しましたね。

ただ、少しやり過ぎ感も否めません。堀の壁がだいぶ壊れて……おや、生きているのが何人か居ますね。


ああ、あの幹部に感じていた妙な気配と同じですね。


「くらぁ! 問答無用でなんて攻撃しやがる! あ、あーぁ、(ほとん)ど死んじまったじゃねえか。俺様の愉快な馬鹿野郎達がよぉ」


「お前等は何故生きている?」


「なんだよ、愚痴も聞いてくれねぇのかよ。俺たちゃあよ、魔力無効を持ってんだよ。賢者の魔道術式だってききゃあしねえよ」


「ヘルガ、ユリアンと練習したアレを」


水流袍縛加圧、風圧添加、圧縮追加圧縮追加圧縮追加圧縮追加圧縮追加圧縮

分化分化分化分化分化分化分化


展開、追尾(高圧水・圧縮空気・圧密・先鋭触手化・多数分岐・追尾襲撃)


シュルルルルルルルルルルルル

ツィィィィィィィィィィィィ


「触手? キモっ!」


「ウネウネがいっぱい……く、くる!」


「あづっ! 熱い! なんだぁ、こりゃぁ! 穴!? 身体に穴! おい、逃げるぞ!」


「無効化わぁ!? クソッ! 痛てぇ!!」


ツパパピゥン


「カフッ……」


「ガァ、」


「ゴブフ…」


「……」



「もういいですよ。大変良く出来ました」


「わ、私、お役に立てたでしょうか?」


「充分に。実戦では同期のあの二人はほぼ役立たずだから。なにかあればお前が護ってやりなさい」


「はい!」


うーん、やはりヘルガは可愛いな。

それにこの複合術式は魔力無効にも物理的に効くのが証明された。

恐らくは魔力無効の膜に接触した時点で先鋭化した先端の風圧が消え、実体として先端から噴き出した高圧水が超高速射出され摩擦で高温化し、人体に穴を穿つのだろう。

或いは超高速で人体を突き抜ける際に「熱い」と感じるのか。

いずれにせよ再現可能だ。ワタシの手持ちスキルがまた増えたな。



さて、あちらはどうかな?




「暫くは二人に任せてたんだけど、最後の方はバテちゃって」


「面目ありません」トロン……


「お仕置きを下さい」ハァハァ……


「残りの40人くらいはボクがね」シン……


「「惚れ直しました」」


さてと。


「返り血を浴びた不心得者はいませんか?」


「「大丈夫です」」


「では寝室へ参りましょう」


従者に案内させて、貴賓室とやらへ。

中を見回す。うむ、充分だな。

明日はメイドの仕事が大変だろうが、知ったことではない。


従者を追い出し、二重結界を張り、開始だ。

今日は侍女二人も入れてやった。

狂喜していたな。

ユリアンの衣装は花柄の8番に決まった。大体エイダが決める。

ユリアンの身支度にはあの二人も喜々として参加している。


特にベアトリクスの表情がかなり妖しい。


面白い奴だ。



あぁ、そう言えばユリアンからエクスカリバー2号を頼まれていたな。


「もうさ、ボクの下着は供給するから、女の子同士エクスカリバーで何とかしてよ。ボクの聖剣は一本だし、物理的にもう無理だよ」


まぁ、そうだな。少し増やし過ぎた。流石のユリアンでもキツイか。



よし、明日から素材集めもするか。



視察の旅は続く。

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