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93.ドライリッターの残影

〈ユリアン・エルフィネス・ルセル〉


朝食後、お茶をしていると侍従がやってきて、本日午後2時に宰相が来られるとのことなので、城内見学を申し出た。

勿論オッケー。


侍女二人はまあまあ、詳しいのだが、少々偏った詳しさらしく、侍従に案内をお願いした。

勿論オッケー。


さぁ、探検だ。

但し、途中で宝箱を見つけても略取不可で宜しくね。


それ、ボクんちのだから。



偉そうな部屋は大概見たはずだから、前皇帝の部屋とかを見てみようということになり…………キツイモノを見せられた。


壁に飾られたいくつもの絵画。


・凌辱を受ける貴族令嬢らしき娘

・生きたまま切り刻まれる乙女

・男達に複数の穴を刺し貫かれる女

・獣姦される……男?

・皇帝を嫌そうな顔で舐めまわす乙女達


他多数、悪趣味。

写真がないから絵画なんだろうけれども、巧すぎてむしろえげつなさがより強く伝わる。

ふと気になりクラウディアを見ると…………ひょっとしたら元皇帝とはベストカップルになれたかも知れない。

あのバカにこの政治巧者を?


悪夢だ。



そして実に多彩な道具の数々……クラウディア、触っちゃいけません!

ばっちいから、ポイしなさい、ポイ。


ん? ルサルカ? あ、やべぇ。

マジ切れ5秒前だ。


「そろそろ次に行こうか」


そしてルサルカに触れる。


『今夜は憑依してクラウディアの相手してやってくれ。それで納めてくんないかな?』


『……分かった。ありがとう』


『もうお前のいない暮らしが想像出来ないくらい大事だからな、頼りにしてる』


『……本心なのが……もぅ』




次は元皇妃とか皇太子とかの皇族の部屋巡り。

何しろ金が掛かっている。

搾取と浪費が具現化した部屋部屋。


因みに彼ら彼女らは概ね死亡が確認されているそうだ。第二皇子だけは行方不明だそうだが、まず生きてはいまいとのこと。

哀れなる特権階級者。


どの部屋にも売ればなんぼかにはなりそうなものもかなりある。

よし、現金化して民へ還元だ。


祭りでもやるか?


建国フェス。



戴冠式、挙式、建国フェスのコンボ。


オレも歌で盛り上げよう。



その後も要所を見て回り、ソラに餌やりして、昼食。お茶。


そして宰相との会合の時間となった。

お? 昨日飛び出して行ったセバスがいる。


まあいいや、席につこう。


皆さん、臣下の礼を取る。

声掛けしてから着座。


「陛下、お待たせして申し訳ございません」


「いやいや、王都に居なかったんでしょ? 仕方ないよ。むしろこちらの都合で仕事の邪魔をしたのではと、こちらこそ少々申し訳ない気持ちだよ」


「陛下……そのような。臣には過ぎたるお心遣いにございます」


「うん、昨日そこのセバスからかなり話が聞けたんだけれどね、国の現況を知りたくて。明日から国内を見て回ろうと思っているからさ、その前に予備知識を。それといくつかの改革案をね」


「はっ、侍従長から何をお話ししたかは聞き取り致しました。そして何を聞かされたかも……まずはご下問にお答え致しましょう」


「うん、それじゃあ人口調査の件は任せるとして、無人化した街や村はどうするのかと、作付け面積の対応は……もう播種(はしゅ)が済んだ今言っても仕方ないけど、どうしたのかな? 辺りから聞きたい」


「なるほど。無人化した街や村のこともご存知であられましたか。止むを得ぬ仕儀にございましたが、全ては為政者側の失策から其処(そこ)に至ったこと。為政者が代わり、救世の御子様の導きにより、正常化が進められていることは王国全土へ周知してあります。移民や植民を奨励しつつ時間をかけて対応するより他ありません」


「人が少ないのだから他にやりようもないよね」


「はい。計画し、周知し、既に実施には至っております。次に作付け面積ですが、軍が対応致しました」


「軍? よく従ってくれたね?」


「ガイウスが号令を掛けまして……ドライリッターの国を軍が力を尽くし豊かなる豊穣の地とするのだと………警らや国境警備などの常備人員を除いたほぼ全軍が農地の整備と播種に従事しました。最盛期の作付け面積に劣らぬものとなっております」


全軍!?

ガイウス、スゲェな。

いや、ドライリッター人気がスゴいのか?

悩ましいところだ。


「帰ったらガイウスに礼を言わなきゃね」


「心酔する陛下からの謝意とは、アヤツも喜ぶでしょう」


「そうだといいね。クラウディア、エイダ、何か聞いて置きたいことはない?」


「では、よろしいでしょうか?」


「うん、クラウディア」


「南部にはまだ既存の貴族が多く残留していると聞きますが、何か対処なされるご予定は?」


「まさに今現在進めている案件でございます。極一部を除き、不当な民への搾取と無体な犯罪行為を(とが)として粛清(しゅくせい)致します」


「そうですか。その後は如何なさいますの?」


「……街や村ごとに長が据え置かれておりますが、それらはほぼ任命者である貴族どもの手先です。よって、それらも排除し、新たに……一先(ひとま)ずはそこを出身地とする文官を長とし、数年ほど領地経営を任せます。中央の体制が整いましたら、試験と選挙を経た長を置き、民会という行政監視機関の査察を受けながら領地経営を陛下より委任される。そんな制度を考えております」


「まぁ、それは陛下から聞かされた新国家プランそのものですわ。でも宜しいのですか? 反発するのは貴族のみではないと思うのですが……」


「そうでございますな、徴税官、地方軍閥化した国境警備隊、貴族より利権を与えられた商人達、他にも抵抗しそうな者達は多々ありましょう……ですが何も問題ありません」


「何故でしょう?」


「陛下の思想の実現であり、御下命であると周知すれば誰がそれに異を唱えましょう? そのようなことをすれば、我々が手を下さずとも軍や民に潰されましょう」


「得心いたしました。ありがとう御座います」


クラウディアは納得したようだ。


「ではわたくしからも宜しいかしら」


「どうぞご下問下さい」


「人口減による拠点の減衰と一部無人化により流通は寸断されてはいませんか? 来年の収穫期までに立て直さなければ重大な危機に陥りかねません。何か施策はごさいますの?」


「これは……さすが陛下が選ばれた俊英の方々。臣は感服仕りました」


オレは選んでない!

全部クロエお姉様のお眼鏡だ。


「そちらにつきましても軍の全面協力の元、街道の整備、村や街の屯所化、地方への警らなど、細々したところまで軍役として運営されることが決まりまして、こちらも既に動いております。1年掛からずにエイダ様のご懸念は解決するかと」


「クラウディアからの話もそうですが、軍からの協力が何やらスゴいですね?」


「ええ、何しろ彼らは『ドライリッターの使徒』を自認しておりますから」


「「「「ドライリッターの使徒?」」」」


三人娘に加えてオレまで参加してしまった。


「軍に於いて最早神格化されていると言っても過言ではないドライリッターが自身の国の新王であり、王妃や側妃であるというのは……血が沸き立ち魂が熱く(たぎ)る事実であると。私が一言『陛下のお望みで』と言えば何でも通ります。畑も耕せば、軍閥を解体し、貴族を捕縛し、街道を整備し、治安を回復し、流通の安全を保障し……なんでもです」


脳筋の極み。

その実質トップがガイウス。



その後もいろいろと聞けた。


そして34個まで増えた改革案を提示して会合を終えた。


「陛下、老婆心ながら申し上げますが……軍の屯所には不用意に立ち寄られぬ方が宜しいかと存じます」


あ、行き過ぎた大歓迎とか? かな。


「うん、分かった。ありがとうね」



ちゃんと聞いておけよ。

このときのオレ。

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