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8.いろいろとオカシイ

〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉 


目を覚ますと眼前に形のよい乳首があった。

乳幼児の頃のクセというか条件反射でつい唇に含んでしまう。

「ん…」と、うめき声が聞こえた。

オレの脇腹に添えられていた彼女の手がオレの下腹部へと伸びて……寝起きの一発履修完了。


昨日とは違いしっとりとした、気遣いすら感じられる緩やかな行為だった。

衣服をまとい、クロエに結界の解除を依頼する。

隣室に控えているはずの従者か侍女に声をかけて湯浴みの支度を頼んだ。

ややあって2人で一緒に浴室へ行き汗と汚れを清め、自室へ戻りクロエとともに身なりを整えてから父の執務室へ赴いた。


まぁね、予想していたことの確認作業のようなものだった。

約6年前、クロエと父のあいだで既に話し合われて合意されていたこと。

ダークエルフとの婚姻は非常に名誉であり祖父である辺境伯の合意も支障なく得られたこと。

王家の許諾も既に取得済だそうだ。

ここでオレのほうからの申し入れをした。


「クロエ様との婚姻にいやはありません。ただし、貴族社会において純血のエルフ様を伴侶とする私がどのようにみられるかは想像に難くありません。過剰な干渉と奪い合い、権力闘争への引込と利用。他にも様々考えられます。それらから家を守るため私は嫡男から外れたいと思います」


「いや、現況でその判断は早計だ。お前は来年学院へ入る。これは決定事項だ。そこへはクロエ様にも同行していただく。なにかと事が起こるだろう。だがそこで見極められることもあろう」


「学院、必要ですかね?」


「必要だ」


「…………」


「お前1人で神聖帝国の全てを退けられると思うのか? 王家や派閥貴族の協力は絶対に必要だ。そのつては学院で得られる」


うーん、それを言われると弱い。


「わかりました。卒業までに答えを出しましょう。ただ弟には、ミハイルには嫡男に準じたそれなりの教育を」


「ああ、そうだな」


その後はクロエの処遇についていくつか話し合い、父の前を辞した。



貴族家では新婚でも夫婦別室だというのにクロエとオレは同室なのだそうだ。

あの野獣の如き淫魔が同室。あの夜があと二晩も続いたらオレは乾燥椎茸の様に干からびて風に乗ってどこかへ消え去ってしまうことだろう。若死にまっしぐら。


お互いの妥協点は見いだせないものか、本人に切り出そうとしたら向こうから話しかけてきた。


「お食事にしない?」


そういえば二食抜いてたわ。通りかかった従者に昼食の準備を頼んでから自室へと戻った。

グチャグチャに乱れていたベッドの上はシーツも掛ふとんもカバーも枕も全て取替られピシリと整えられている。一部の隙もない。

ふと見やると枕が2つになっていた。


あれぇ、家族だけでなく使用人までもが公認? なんだろう、この身悶えするような気恥ずかしさは。

屋敷内の誰もが知っている。昨日オレが童貞を失ったと。

これって女の子に置き換えるとかなり気不味いことない? 家人の多い家ほどキツイよね。

オレも気をつけなきゃ……って、なにをだよ。



クロエがこちらを見ている。こちらから視線を向けると顔を背ける。

そんで目線をもとの窓外へ向けて頭の中で素数を数え直しているとまた視線を感じて視線を向けると……こんなことを18回繰り返したところでドアノックが響いた。


「昼食のご用意が整いました」


との呼び声が。彼女を誘いダイニングルームへ移動する。

途中会話はない。が、なんか赤外線ビームでも照射しているのではないかというくらいの熱い視線を背中に感じる。

ガンマ線なら殺られていたかもしれない。


うーん、なんだろう。

今日はなんか思考が斜め方向へズレるような、妙な感覚が。『オレもう童貞じゃないんだぜ!オットナの側野郎なんだぜ!』的な高揚感がもたらす選民意識が思考を捻じ曲げアウフヘーベン的な……って、またおかしい。


これは……緊張感か? なにに対しての? クロエ、だよな。

彼女も昨日はかなり異常な精神状態だった。

自身の肥大化した欲求を満たすために暴力にも近しい実力をもって我が身を蹂躙しまくった。

死ぬかと思った。セ〇クスで。

なのに今朝はこちらを満たす為の献身的な行為で癒してくれた。

このギャップ、さらには今朝からほとんど言葉を発しておらず、ただただしおらしく側にいる。

何を考えているのかがまるで解らない。


人は理解の及ばない物事を本能的に怖れるものだ。

つまりオレはクロエに怖れを抱き、恐怖に基づく緊張を囲っているのではなかろうか? 多分正解だ。

未知なるモノへの怖れか。


身体を合わせたばかりの至高の女性が何考えてるか解らない不安と恐怖。

二晩どころか今夜にも逃げ出してしまいそう。どうしよう。

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