78.第二王女殿下
〈クロエ・ルセル〉
9月中旬。国王からの招待状が届いた。
閣僚も交えて会談がしたいと。
これは予定していたこと。勿論承諾した。
ユリアンもワタシも王と王妃としての威厳を衣服に纏い、威風堂々と王宮へと赴いた。
あちらも門衛始め、他国の王侯に対する礼を持って応対した。
「ようこそユリアン・エルフィネス・ルセル王、クロエ・ルセル王妃。ヴァン・ヘルムート王国は貴方がたを友として歓迎いたします」
国王の挨拶が芝居掛かっている。
「この度はご招待頂きありがとう御座います。陛下にはご機嫌麗しく、本日の邂逅を心待ちにしておりました」
ユリアンが返礼の挨拶をする。
「……近々使節団が参られるとか、ご滞在の目処は立っておられますかな?」
「我が家をと」
「……歓迎の式典並びに晩餐会、夜会などを予定しておりますが、ルセル王並びに王妃は勿論ご参加なされますな?」
「勿論にございます」
「それは……楽しみなことに御座いますな」
もうよかろう。
「ヴァン・ヘルムート王よ、社交儀礼はもう良かろう、本題へ入れ」
「……そうですな、ではこちらへ」
閣僚会議用の間か? あっちの国ほどは内装が五月蝿くない。
あちらも王妃が出張り、向かい合うように席次を用意された。
アウグストとチラリと目が合う。
今回もあやつは裏で良い仕事をしている。
「それでは外交事前打合せの会合をおこなうこととする。外務卿、頼む」
「わたくしは外務卿の任にありますヘンリック・フォン・リーベルトと申します。以後良しなに」
ユリアンが挨拶を受け取る。
「リーベルト卿、良しなに」
「まずは8月下旬にありましたルーメル神聖帝国による越境軍事行動についてお聞きしたい」
ここからはワタシが。
「ふむ、目的不明の軍が謎の壊滅をした件だな。ルーメル神聖帝国は既にこの世のどこにもなく、軍の責任者も死んだと聞く。我々にも分からんな」
「……では、数年に及ぶ凶作のつけを国民に転嫁し、農民の逃散と盗賊化が進み、我が国にも流れてきているとか、なにか対策は講じておられるか」
「凶作の原因は王の人徳により既に取り除いた。民へ施すに充分な食料も用意した。さらに言えば王は民衆の圧倒的支持を得ておる。帝国時代のようなことはもう起きまいよ」
「……ルセル王は我が王都内に広大な土地と御立派なお屋敷を既にお持ちとか。新国家として未だ外交関係を確立していないうちにそのような買い物は少々軽率ではありますまいか?」
「あれは陛下の住処にして陛下のモノに非ず。そこに居られる財務卿のご令嬢の持ち物である」
「そちらの陛下が我が国の王立学院へ在籍している件についてはいかがなものかと」
「もうネタがないならそろそろやめてはどうだ?」
「……質問を終わります」
「それで、どうしたいのだ? なにか希望があるから呼び付けたのであろう? 我が受講生達よ」
「経緯につきましては内務卿から聞いております。こちらからの質問にお答えいただきたいのです」
王妃か。
「下らん質問ならば無視する。それでも良いならば答えてやろう」
「軍務卿のマクシミリアン・フォン・メーベルトです。ラーテルズ共和国軍との紛争に介入し、停戦させたとの報があります。内務卿からは概要を聞いておりますが、詳細を是非お聞かせ願いたい」
「いいだろう………」
結局のところ心くすぐる名場面の一つ一つを知りたいということか。
しかたない、教えてやろう。
ユリアンの活躍を!
なかなか楽しいひと時であった。
「ユリアン殿、クロエ殿、朕より一つ提案がある。両国のより強い紐帯を作り出し、関係を発展させる為に、血縁を結んではどうかと思うのだが、如何であろう?」
「ほう、血縁とな。生憎と我が陛下は初代にして唯一無二の王家ゆえ、婚姻の宛となると陛下しかおらぬ。正妃はワタシだ、当然立場は側妃となるが?」
「かまいませぬ。我が第二王女クラウディアならば年嵩もあうし、知己でもございましょう。いかがかな?」
「ほう? あの姫か。陛下、どうですかな?」
「……后に任せよう」
まだ躊躇していたか。「これ以上はホントに生命に係る!」とか言っていたしな。ルサルカがいるから良いのではと散々話し合ったのに。
「では、その話を進めてもらおう」
使節団の歓迎式典での発表が取り決められた。
これで予定していた四人目の側妃も決まりだ。
あの娘の情報収集力と政治力、調整力はかなりのものだ。
感覚強化による聴き取りにより判明している。
性癖などは未だ明らかではないが、ユリアンならばどんなものでも受け止めよう。
あとは……戴冠だな。来年2月に挙行だ。
国を挙げての正式な挙式も執り行なおう。全員でな。
楽しみだ。ね、ユリアン。




