77.相棒
〈ユリアン・エルフィネス・ルセル〉
学院の新学期が始まった。
初日の今日は全校集会? と、同期生顔合わせと今期のオリエンテーション、昼食会で解散だ。
そして昼食会あと。お茶を飲むおれの周りにはクロエは当然として、エイダ、ヘルガ、そして……何故かルサルカが侍っている。
「此奴はルサルカ。上位精霊だ。人ではないのだ、立入禁止ということもなかろう?」
と、全校集会前の学院長へ一方的に述べて許可を得た。
学院長がものすごく何かを聞きたそうにしている。
ホントに聞きたそうにしている。
クロエ? 少しくらいは学院長に話しを……
「アウグストよ、午後から時間はあるか?」
「あけます!」
「では後でな」
良かったね、学院長。
そしてルサルカ大人気!
なにしろ常時浮いている。
周りからではなく、地面から。
食堂でいろんなヤツから声をかけられる。大体は遠巻きに見ているのだが……
今の位置取りは……左側にクロエ、右側にエイダ、膝上にヘルガ、後頭部にルサルカだ。
隙なし!
最早立錐の余地なき鉄壁の……ハーレム?
ヘルガたん、みんな見てるよ? 膝上は流石にはしたないんじゃないかな?
「ヘルガ? そこはちょっとさ、周りもみているし……君の評価的にいろいろと……」
「ヘルガはユリアン様の側室入りが決まっています。他人からどう思われようとかまいませんわ」
「全くもってそのとおりですわ。ヘルガ。わたくしも同意見です」
エイダ?
……そ、そうかも知れない……かな?
「エイダ、ヘルガ、間違えてはいけませんよ。側妃です」
「クロエ? イヤだなぁ、側室だよ。昨日話したじゃないか」
「もう宜しいのでは?」
「ダメ」
昨日はみんなでヘルガんちにお泊まりして、そこから馬車2台で登校した。
国から使節団が来るまでは今のままでいようと話し合ったんだけど……
クロエお姉様が聞かん坊。
因みにハンナは新居のほうで生活環境整備に励んでいる。大金と共に。
そしてエイダんちの家人や傘下の商会がいろいろと補佐をしてくれている。
だから今週末は新居へ帰る。
エイダとヘルガも転居するそうだ。
気が遠くなる……
とにかく……
学院長室へ。
「お待ちしておりました。さ、どうぞ」
ここにも全員できた。何とか座れた。ヘルガも着座した。
「今から話すことをどう扱うかはお前に一任する。まず、ユリアンが自領へ帰参する際に盗賊に襲われたところから始まった……」
全容をかなり詳しく話して聞かせた。ヘルガやエイダも知らない部分があり、みんなが驚きつつ聴き入っていた。
「…………それでは……神聖帝国はすでになく、新生王国が誕生し、ユリアン様が初代国王に就いたと、そうおっしゃるのですね?」
「あぁ、そうだ。あ、コレを」
そう言ってクロエが仰々しい書簡を学院長へ手渡した。
「ユリアヌスルセル王国、宰相からヴァン・ヘルムート王国への正式な書簡だ。今月末頃、約500名からなる使節団がくる。その知らせと、ユリアン・エルフィネス・ルセル国王の地位保障依頼書でもある。王へ渡し、閣議にかけよ」
震える手でかしづきつつ受け取る学院長。
「ハハッ! しかと承りまして御座います」
住まいや家名の変更手続きを依頼して学院長室を辞去した。
なんかゴメンね。学院長。
風の曜日。
武術実技の日だ。長期休暇明け、久し振りに師範達と顔を合わせた。
他の学生はいつもの素振りなのだが……
「ユリアン、お前、実戦を経験したな?」
何故判る!
「……まぁ、はい」
「刃を潰した剣だ、取れ」
「これで?」
「ああ、やるぞ」
レギオス師はパパ伯爵よりもう1段か2段強い。
休み前ならギリあちらのほうが上だった。今は……
瞬殺だった。
いや、殺してはいないけど。
「……どんな戦だったんだ?」
「……丸2日間ほど、兵士、騎士、ハンター、影らとずっと戦い続けました」
「どこの国だ?」
「ノーコメントで……」
「次回からお前は師範側だ。学院長にはオレから言っておく」
「……それは……ちょっといかがなものかと……」
「いいな!」
「……はい」
「よし、木剣持ってそこに立て」
「あれっ? 次回からって……」
「今回は助手だ」
酷い。授業料払ってる側なのに。
あ、授業料も払わなきゃな。
シュワルツクロイツ家からの独立には必要。
週末、新居での5人からの責め苦に回生術での無限地獄。心を病みそうな変態塗れに耐え抜いて、更には安息日の変更要求。
「わたくし達には土と闇の曜日しか与えられていないのに、闇の曜日がダメなんて酷すぎます。我々は機会の平等化を強く要求いたしますわ!」エイダ
「……アレを2日間連続では……ボク早死するかもしれないよ?」ユリアン
「英雄王ユリアン様なら大丈夫ですわ」エイダ
「私はかけるだけでも……」ヘルガ
「ユリアン様のご負担にはなりたくありません……でもユリアン様さえ宜しければ」ハンナ
「ワタシはどちらでもかまいませんよ」クロエ
「毎日できるように祝福しようか?」ルサルカ
「「「「「祝福?」」」」」
「上位精霊が守護精霊として憑依すれば、魔力を変換して精力へ還元できるわよ?」ルサルカ
「「「「詳しく!」」」」
「わたしの実体化はユリアンの魔力で維持しているけれど、さらに注いで貰えればユリアンに体力とか、気力とか、精力に変換して還すことができるのよ!」ルサルカ
「はい! それは例えば私の魔力でもよいのですか?」ヘルガ
「うん」ルサルカ
「ワタシが1年分くらいまとめて……」クロエ
「それは無理。多分弾ける。わたしが」ルサルカ
「では毎回……ユリアン様の25回分くらいを……」エイダ
「待って! 25回!? ホントに殺す気? 家出するからね!!」ユリアン
「25回か、ヘルガの魔力ならほぼ全部必要かな? クロエのなら1%も要らないよ」ルサルカ
「「「クロエお姉様、お願いします」」」
「それじゃあクロエ、ユリアンの守護精霊になるからね?」ルサルカ
「しかたありませんね、許可します」クロエ
「なんで? クロエはなんか気に食わなくてルサルカがボクの守護精霊になることを許さなかったんでしょ? なにかリスクがあるんじゃないの?」ユリアン
「……憑依はユリアンとルサルカの一体化を意味します。つまり、ユリアンに抱かれているのに、ルサルカにも抱かれているという……」クロエ
「え、それって操られている的な?」ユリアン
「意識を一時的に移譲とかすればわたしがユリアンの身体を動かせるわよ? でもあくまでもユリアンが主体だから。そこは安心して」ルサルカ
「でもそれじゃあルサルカ様はユリアン様に抱いて貰えなくなるのでは?」ヘルガ
「先にしてもらうわよ。それから憑依すれば問題なし。それにユリアン側の快楽も味わえるしね」ルサルカ
「ボクの快楽?」
フ、フフフ、よおし、やってみろ。体験してみるがよいわ!
そして、むしろあとで感想を聞かせて欲しい!
「分かったよ。やってもらおうかな。そして今日はボクに成り代わってルサルカがみんなの相手をして」
「え、いいの? じゃあいくよ!」
質量があるはずの身体がオレと重なっていくのがわかる。
あ、人格とか記憶とかバレるかな?
ま、いっか。あとで口止めしとこう。
あぁ、居るのが解るわ。
『ユリアン、聞こえる?』
『うん、聞こえる』
『なんか秘密がいっぱい詰まった魂ね』
『内緒にしてもらえると助かる』
『うん、任せて』
『そんじゃあ任せた。オレは寝る』
〈ルサルカ〉
「ユリアン?」クロエ
「ユリアンはさっさと寝たわ」ルサルカ
「ワタクシ達はどうすればよいでしょう?」ハンナ
「まずはクロエ、魔力ちょうだい」ルサルカ
魔力が注がれる。こうして繋がって見ると……怖っ! どんな魔素の量生みだしているのよ。人が個人で発生させる量じゃないでしょ、これ。
練られた魔力も……そのうちテラにも届くのでは?
文字通り人ならざるモノ。
暴走したら天人にしか止められない。それもいずれは……
ユリアンが産まれた意味か。なるほどね。
って、やだ、気持ちいい!
ハンナがあそこを舐めて……
ヘルガ? わたしに跨ってアンタなにやって……ガボブブッ!
エイダが後ろへ……アグゥ! なに? この脳天に突き抜ける衝撃は!? や、だ、だめっ! そんな突かないでぇ!
ちょっ、クロエ? どこに入りこんで……え? これって……クロエの中? キッツイ! ちょっ、なによ、こんな……ちぎれる? ちぎれちゃうからぁ!!
や、ちょっと、前後から……ま、まって、落ち着いて……あぁぁぁ! で、出るぅぅぅ!!
ハァハァ……エイダ? お、お願い! 止まって、一度止まってぇ!
ダメ……死、死ぬぅぅぅ!!
ヒィーー!
ユリアン、
ユリアン!
替わって、お願い! 戻ってぇ〜!
プツン…………………………
〈ユリアン・エルフィネス・ルセル〉
朝、憑依が解けて横たわる精霊がすぐ脇に転がっていた。
そっと手で触れると……緩やかに意識と記憶の同調が……ふむ、快楽という名の地獄を体感したようだな。
これからは分かち合おうな、相棒。
頼りにしてるぜ?




