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76.至福の刻、新たなる誓い

〈ハンナ・フェルナー〉


ゼーゼマン様の所領を出奔してからのひと月余りは怒涛の日々でした。

気が付けばユリアン様は神聖帝国の新王となられ、王者の義務を果たす為に食料の大量調達の旅に出られました。

飛竜に跨りまるで物語のような旅をして、各国を股に掛ける……さすが我が主。

ワタクシはいつだってユリアン様の為に死ねます。

ですが、この頃になると、ユリアン様の行き着く先を見て見たいと想うようになり始めてきました。


ユリアン様を一度は死に向かわせようとしたワタクシ如きには過ぎたる望みですが……


人の欲望は底が知れません。ワタクシ自身のことではありますが。


幾つもの交渉を経て、ラーテルズ共和国へたどり着きました。


ここで聞いた共和国の成り立ちの秘話は……破国の闇女帝の逸話の更に前に貨幣製造を守り、その後の建国にまで関与していたとは!


つくづく伝説の英雄にして、歴史の(しるべ)たる人物なのだと思い知ります。

そんな偉大なお方がユリアン様に共に仕える僚友(りょうゆう)とは。

やはりワタクシは出逢いに恵まれた生を天より与えられていると感じます。



その後は帝国全域を覆う凶作をもたらせた聖女様の守護精霊様に会いにゆきました。

一瞥して悟りました。

コレは無理だと。

薄暗い聖堂の中、自身から放たれた闇を纏い周囲を、世界を呪うが如き深い怒りと憎しみ。

それが「見て判る」程に……


ん? ユリアン様を見た?


フワリと浮き上がり……こちらへ飛んできますね。

ユリアン様に抱きつき……匂いを嗅いでいます。


瘴気のような闇はいつの間にか解消し、何かキラキラし始めました。


あぁ、なるほど。

堕ちましたね、ユリアン様に。

瞬時の出来事でした。


以前ユリアン様がおっしゃっていた「ちょろい」というやつですね。


何故か苛つくクロエ様に散々に嬲られる精霊様。自身の欲求に非常に正直で、真っ直ぐな性格のようで……余計にクロエ様の怒りを買っていますね。



協力を求めるまでもなく、ついてくるという精霊様改めルサルカ様はクロエ様により、守護精霊ではなく、側女という位置づけに。

側室未満ですか。少し哀れです。


まぁ、精霊相手では性行為が成立しませんし、ましてや子を成せないならば側室にする意義もありませんから…………ユリアン様の魔力を注がれ実体化?

触れる精霊?

あり得るのですか?


後日知りましたが、まぐわいも出来ていました。ユリアン様曰く、膜もあったそうです。



さぁ、再びソラに乗って共和国から東にある山岳地帯へ向かいます。

紛争地は直ぐに見つかりました。

交戦地の幅が狭く大規模な戦闘になり難いようで、上空から見る限りでは小競合いと言った趣きです。


直ぐにユリアン様が戦術を組み立てます。

双方に停戦の使者が到着するまでの膠着状態を創り出し、戦局を他の谷筋に広げられぬよう、「皆が挑める」戦況の創出を目指します。

生かさず殺さずとユリアン様はおっしゃっておられました。


さて、ルサルカ様の風弾と共にソラから飛び降ります。

着地し、クロエ様の口上を待ちます。

フフフ、矢張りユリアン様の名を掲げましたね。当然です。我らが誉れ高き主なのですから。


戦場に轟くユリアン様の御名、快楽にも似た震えが背筋に走ります。


あぁ、遂に我が神たる主と共に戦場に立ち、剣を振るう時がきたのですね。


漲り(みなぎり)ます!



「女! 貴様はご紹介に預かれんようだなぁ! 主に股開くくらいしか能がない端女(はしため)が、戦場へ躍り出るなど片腹痛いわ。どれ、味見してやる、そこで脱げ!!」


そんな安い挑発に乗る馬鹿はいないでしょう。

全く、知性の低い低脳なる下衆はどこにでもいるも……


「闇女帝にくっついてる主とやらも可愛ければオレが味見をしてやろうゲヒャヒャヒャヒャ!」


ビキッ!

ユリアン様を(けな)した!


パンッ!

瞬動で間を詰め、右手ショートソードの抜き打ちにて股間下から上に切り上げて性器を立て斬りにしてやりました。

左手ショートソードの柄で胸椎を打ち据え、左廻し蹴りで10mほど後方へ飛ばしてやります。


「閣下!」とか聞こえますが、どうでもよい。


ご命令です、生命までは取りません。が、我が神を(おと)める発言は断じて赦しません!


「貴様如き矮小(わいしょう)なる小物が我が主を語るな! 死を乞い願うような罰を与えようぞ!!」


魔力滞留が暴れる!

弾けよ!!


全方位へ高圧縮した風膜を展開、解放します。



ドンッ!!


凄まじい音と共に前後双方の兵達が弾け飛びました。


「我はユリアン・フォン・シュワルツクロイツが使徒、ハンナ・フェルナーである! 覇気ある強者よ、進み出るが良い!! すり潰してくれるわ!」



日没までに100を超える兵や騎士を討ち取りました……いえ、討ってはいませんね。みんな生きていますから。


夜間も臨戦待機です。

クロエ様の結界は使いません。


兵士は来ないのですが、影や高位のハンターなどがチラホラ襲って来ます。

バレバレですが、隠密行動からの不意打ち狙いで。


夜間に死なせないよう戦うのは中々に骨折りです。


翌日、昨日も正規兵は動かなかった共和国でしたが、ハンターらも含め不動となりました。更に戦線を数百メートル下げています。

停戦の使者が到着したのでしょう。


一方で帝国側は先陣を入れ替えたようで、前線の兵や騎士は元気一杯ですね。

速やかに地の底へ叩き落としてやりましょう。


その日は250から先は数えていませんが、かなりの数を打ち倒しました。


クロエ様、ユリアン様は相変わらず立ち位置をほとんど動いていません。

素晴らしい技量です。


二度目の夜が来ました。


こちらの疲労を期待してか昨夜よりも多くの影やハンター、それに騎士までもが連携して攻めてきました。

連携ならば昼間の方が効率が良いと思うのですが、思いは人それぞれですね。一人残らず叩きのめし、陣方向へ投げ返してやります。

甘やかし過ぎでしょうか?


そして二度目の朝。

遂に戦闘は終わりました。

帝都で会った将軍が停戦の使者としてこちらへやってきました。


ユリアン様、クロエ様とお話しされ、共和国との終戦協定を締結する運びとなり、やっと戦闘終了です。

しかし、ワタクシは気を抜きません。

ユリアン様の護衛、周囲への警戒はワタクシの務めですから。


全てが片付き双方の全軍が退去した後、傍らの渓流で身を清めました。

ルサルカ様、ソラも一緒です。

クロエ様の空間収納からパンや果物を出していただきお食事をしました。

そして結界の中、みんなで眠りました。警戒の必要もなく、熟睡です。



翌朝はみんなでユリアン様のお情けを頂戴致しました。

ルサルカ様も。


…………ユリアン様、お疲れ様で御座いました。



その後、帝都へ飛び、100,000tの穀物を引き渡し、また直ぐに出立です。

フランシア王国での穀物引取り、ヴァン・ヘルムート王国での穀物引取りを経て3度目の帝都へ。


ここでユリアン様がやっと国王を引き受けるお覚悟を決められました。

ワタクシにはかなり難しい政治の話しをユリアン様が宰相やクロエ様達とされています。

ほぼなにをおっしゃっておられるのか理解出来ないことをユリアン様が発言するたび、皆さんが驚き、感心され、引き込まれておられます。

ユリアン様が凄いということは伝わって参ります。

それがワタクシにはなにやら誇らしいのです。


……会合の流れの中でユリアン様が13歳におなりだとのお話しになりました。9月1日、旅の途中でした。例年はお誕生日のお祝いをするのですが、それどころではないとおっしゃってそのままになっています。

王都へ戻ってからやろうということになったのですが……婚姻ができる?

帝国では王族ならば13歳から?


クロエ様のご様子が……


そこから会合の皆々様方が盛り上がり、明後日には王国へ立つと言うユリアン様へ「明日挙式を」との声が強まります。


クロエ様が


「では、正妃がワタシ、側妃がハンナということで、三人による婚姻の儀を執り行いましょう」


ワタクシも!?


ワタクシがユリアン様と婚姻?


そんなことが許されるのでしょうか。ワタクシはシュワルツクロイツ家の家人に過ぎません。

ユリアン様のお情けを頂けるだけでも過ぎたる幸せだというのに、婚姻?


ダメです。頭の中がグルグル回ります。考えが……


「ハンナ、ハンナ? 大丈夫ですか?」


「クロエ様。ワタクシなどが……」


「ハンナ、前にも言いましたよ。貴女がどうしたいかだと」


「…………クロエ様、お願い致します」


「あの時と同じ答えですね」


そう言ってクスリと微笑まれました。

見惚れてしまいました。



翌日、先代皇妃の所蔵だという純白のドレス2着を手直ししたウェディングドレスをクロエ様共々着用し、数百人の家臣達に祝福され仮挙式が執り行われました。

クロエ様のドレス姿は垂涎の美しさです。

こんな花嫁を娶るユリアン様はなんて幸せ者なのでしょう。

そんなユリアン様のもう一方の隣にワタクシなどが並ぶなど……


「クロエは相変わらず綺麗だね。そしてハンナ。これまでそうした装いをする機会がなかった君がまさかこんなにも麗人だったなんて……ボクは気後れしてしまうよ。すごく綺麗だ。ボクの花嫁さん」


あぁぁぁ……なんという、なんという……身に余るお言葉。

ダメよ、今は泣いてはダメ。

でも、こんな幸せがこの世に有るのでしょうか、ただの侍女が神たる主と並び婚姻などと…………そうです。

最もお近くでお守りするのです。その為の立場。


どのような場にも、外交の場であっても帯剣し、侍る側妃として、最後の盾となりユリアン様をお守りする。

それこそが、このような至福の立ち位置を下されたユリアン様へお捧げする我が至誠。

ユリアン様の妻として。

ユリアン様の盾として。

ユリアン様の剣として。


使徒たるワタクシの使命を果たしましょう。


「ユリアン様、改めまして我が忠誠と愛を貴方様へ捧げ仕ります。末永くお側に置いて下さいまし」


頭を垂れて申し上げました。


「こちらこそ、いつまでも側にいてボクを支えてね。ボクのハンナ」


至福!

天にも昇るとはこのことか!?


ワタクシは今日の日を生涯忘れまい。

我が主にして夫となられたユリアン様。



永遠をここに誓います。

ユリアンの誕生日訂正しました。

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