73.新国家成立へ
〈クロエ・ルセル〉
帝都へと三度の来訪です。
未だに宿泊をしたことのないよそよそしげなユリアンとワタシとハンナの巣。
今回はお泊り致しましょう。
宰相のえーと、……マテウス、そう、マテウスが甲斐甲斐しくユリアンやワタシ達を王の間へ誘います。
そこで食料の分配計画をかいつまんで説明されました。それに伴う穀物の保管場所の説明も。
軍の再編と保管場所の警備体制確立、粛清対象となる貴族と聖職者、軍人などの洗い出し。
さらには資産の接収。
駆け足で上申されました。
「ボクはやはり部外者ですよ。今の話しを聞いていても固有名詞が全くわかりませんでした。ここは貴方がたの国です、どうか貴方がたでお治め下さい」
「恐れながら申し上げます。陛下がご不在の間に僭越ながらいくつかの行政立法を通しました。勿論陛下のご裁可を経て施行となりますが、既にいくつかの呼称変更につきましては定着してしまったものがあります」
「呼称変更? 何かの呼び名ですか?」
「まず国名ですが、シュワルツ・ルセル王国が仮称として定着化しつつあります」
「クロエと合体!?」
「まぁ、合体だなんて、ユリアンったら!」
マテウス、なかなか良い仕事をしますね。
「次に帝都改め王都はユリアナと民たちが呼び親しんでおりますな」
「待って、それ偽名だし!」
んーー、女の子版ユリアン名。マテウス、流石アヤツの子孫。やり手だ。
「天恵の美貌と美声を携え都を、そして国を救いし救世の御子様は戦場にて破国の闇女帝と並び、劣らぬ武威を両軍へとお示し為された。伝送鳥によりもたらされた戦慄と驚愕を以て恐れられし武人こそが陛下その人であったことは広く庶民にまで知られております。その似姿絵とともに」
「……かっはぁ、待って……お願いだから待って。クロエはものすごく手加減してただけだし、戦慄されていたのはどちらかと言えばハンナの方だし、そ、それに、似姿絵って」
「こちらにごさいます」
黒騎士装備の一目みてユリアンと判る美少女の凛とした立ち姿の絵。しかも女装版!
こ、これは……
「マテウス、その絵、下さいな」
「勿論にごさいます。絵画も制作中にございますれば」
「あ、私も欲しい!」
「……そちらのお嬢様はお初にお目にかかりますが、宜しければご紹介頂けますでしょうか」
「名はルサルカ。元は聖女の守護精霊ですよ」
「な、なんと!」
マテウスがその場で両膝を着き赦しを乞う姿勢をとった。
「我らが至らぬばかりに聖女様をあのような事に。悔やんでも悔やみきれない大失態でございました。身勝手な願いにございますが、平にご容赦くださいませ」
「……あの元皇帝は今どうしているの?」
「……陛下により捕らえられ、民衆へ下げ渡されまして……手足の腱を切られて、虫や雑草などを食事として与えられ、日に1時間、民達に嬲られる義務を負わされ、最下層の囚人達と夜を共に過ごさせております」
「最後のは何か意味があるの?」
「囚人達には自慰も含め一切の性行為が禁じられております。但し、その芋虫にだけは何をしても良いとの許しがなされております」
「……わかった、それでいい。1年後にまだ生きていたら私にくれる?」
「承ります」
「凶作は今年で終わりね。だってこれからここはユリアンの国になるのでしょう?」
「左様に御座います。今現在、既にユリアン陛下の国に御座います」
「じゃあ、来年は豊作になるわね、私が言うからには間違いないわ」
「は、ははぁ! 有り難き幸せにて!」
まぁ、こんなバカ精霊でも使いどころはあるということか。
「逃げ場なしかぁ……父様母様になんて言えば……」
おや、まだ諦めていなかったのですか、ユリアンったら。
ユリアンの国、繁栄させねば。
うーん、あとはここでのユリアンの後継を産む有能な女を見つけなければ…………ハンナの子を次期国王としましょう。
ハンナに子が産まれたら皆で育てて、次代を担わせるのです。
そうと決まれば……避妊の術式を解除しなければいけませんね。
どうしましょうか、ユリアンの卒業を待つのかどうか。
うん、ハンナに決めさせましょう
その後も法体系や国家体制、外交基本方針など、多岐に渡り話し合われ、ユリアンの政治に対する思想信条の先進的かつ合理的な考えに触れ、マテウスなども驚愕し、前のめりに聞き入っておりました。
しかも、それらは長い年月の中で少しずつ実現してゆけばよく、あくまでも目指すべき目標でしかない。今は下地としてこんな政策はどうかと、新機軸だが現実的な法案を複数提示していた。
立憲君主制、議会設置、代議員選出制度……まずはおバカな子孫があの皇帝みたいなことができないように制度で縛る。
欲塗れの貴族などが権力を握れないように利権を分散し、意思決定機関の長には監視体制が敷かれるなどの施策は国家の根幹の根腐れを効果的に予防できるのではないか。
ユリアン、本当に貴方は何者なの?
まずはベッドで問いましょう……
そ、そんな。闇の曜日だからダメとか……
三人で全方向から執拗に愛撫し、ハンナのショーツ2日モノで鼻と口を塞ぎ……やっと堕ちました。
流石ハンナショーツ。ワタシのよりも勝率が高い……なにか釈然としませんね。ユリアン?
まぁ、我が手に堕ちたのですから良しとしましょう。
全く、手間を掛けさせます。
それから4日後、紛争地域から早駆けしてきた軍の一部が王都へ帰還しました。ガイウスとやらもいます。
翌日、再び民衆代表らを集めて今後の方針を決め、憲法の草案を開示しました。
これをたたき台とし、この会合を複数回開き話し合いながら補正を加え仕上げる作業を彼ら全員に申し付けました。
そして、
「ボクはヴァン・ヘルムート王国の王立学院へ戻らねばなりません。次の長期休暇は冬季の2月です。それまではこちらへは来られませんので、皆さんは憲法草案の協議とそれに沿った法律の見直しに注力願います」
「陛下の御決断に従います。粛清の方はどういたしましょうか?」
「マテウス宰相、貴方に一任致します。どうぞご随意に」
「畏まりまして承ります」
事前に打ち合わせた通りだ。
皆の前で勅を得た。
これでマテウスは自由に大鉈を振るうことが出来るであろう。
王都へ飛ぶ途中、一応シュワルツクロイツ領に寄ることにして、国を出立した。
そうそう、いろいろと正式名が制定されました。
国名は「ユリアヌスルセル王国」
王都名は「ユリアナ」
初代国王「ユリアン・エルフィネス・ルセル」
エルフとともに在るユリアン・ルセル。ユリアンはワタシと姓を同じくした。
そして、謁見の間において正妻及び側室との仮婚姻の儀を挙行した。
ワタシ達は正式な夫婦となったのだ。
ついに夫婦になりました。




