表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/283

64.家出、但し祖父の家から

〈クロエ・ルセル〉


ここの大ホールは学院の大講堂にも劣らぬ広さ、但し、人も多く集まり少し息苦しさを感じますね。


お義祖父様の血族は中央付近から奥側の一角を占めて集っています。

ワタシやユリアンもその集団の一部と化しており……人が多い。


その中にはヘルガやその家族もいます。血族だったのですね。


おや? お義祖父様が一番奥に設えられた舞台の上へいきましたね。

開始の挨拶でしょうか。


「皆のもの。幸いなことに今年も豊作であった。農民の働きと皆の献身あってこその豊作であり、創造神様のお恵みなのだと思う。しかし……ここで皆に伝えねばならぬ大事がある」


あの件ですね。まだ整理も付いていないというのに公表ですか。

せっかちですね。


「陣営内に複数の裏切り者と間者が入り込み、神聖帝国の軍を我が領内へ誘い込む奸計(かんけい)が発覚した!」


ざわざわと五月蝿い(うるさい)ですね。


「この奸計を洗い出し、裏切り者と間者を割り出し、更に捕縛と神聖帝国軍を見つけ出したという、比類無き活躍をしたのは……まぁ、本人の希望で伏せるが、それは僅かな配下を連れた至高の武人である」


もう、ユリアンは……この手の栄誉とかにまるで興味がないんだから…………

ワタシと一緒。


「敵の目的は収穫物の略奪であったようだ。だが、発見された帝国軍はほぼ壊滅状態であり、生き残りの数人への尋問によると『天罰を受けた』と証言したそうだ」


まぁ、そう表現するより他ない攻撃でしたね。


「まだ総数は判明していないが、数千人はいただろうとのことだ。もしそのまま侵攻されれば国境警備隊は真っ先に壊滅だ。3日後にはこのマルキアスブルグまで迫ろう。パーティーどころではないな」


力ない笑いがさざめく。

むしろ中止すべきであったはずなのだが、ユリアンがやろうと言ったのだ。自分達がなんとかするからと。


「しかし、至高の武人は言った。厄災は自分が引き受ける、貴方達は日常を過ごされよとな。そして言葉通りの働きをして見せた。彼の者は褒美も辞去した。自らの為すべき事をしたのみであると言ってな」


だいたい合っている。無欲というより面倒なのだろう。

ワタシと一緒。


「せめてもの慰みに、なにも受けようとしない彼の名を………これより先、収穫祭後に執り行なうこの謝恩パーティーの名を『ユリアンの恵日』と呼ぶことを定める!!」


あれ? 隠すはずでは? 

あ、ユリアンの顔が引きつっている。初めて見る表情だわ。

うん、コレはコレで。


「皆のもの! 盃を取れ! 英雄に感謝を! ユリアンの恵日を忘れる事なかれ!! 乾杯!!!」


「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」


五月蝿い。

ユリアン? よろめいている?

そっと手を出し支えてあげる。


あら、ワタシにしなだれ掛かってきて。周りに見せつけるのね?

可愛い。



隅にある二人掛けのソファにユリアンと腰掛けます。ユリアンはさっきからずっとワタシにもたれかかったまま離れようとしません。


近づこうとする者達が何人も来ますが邪魔なので結界で排除です。

そんな愚か者どもにも二人の仲を見せ付けつづけるユリアン。

幸せです。




〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉


爺さん!?


な、な、なに言ってんだテメェ!

秘匿するって約束したよな?

貴族離脱するし、栄誉とか要らないって、オレ言ったし、アンタも「うむ、仕方なし」とか言ってたよなぁ!?


どーすんだよ、これ!

アンタ関連でユリアンとか、オレしかいねぇじゃんかよ!


あぁー、もぅやだ。ホントに嫌だ。

もぅ辞める。何を? なにをだろ?

よし、孫だ。

あのジジイの孫を辞める。


もう二度とお祖父様とか呼んでやんね。

お前なんかゼーゼーマンでえぇわ!

風邪でも引いてろ、バーカ!


あ、人目が集まり始めた……聞こえる


「ユリアンってお孫さんの」


「アソコに居る人?」


「やだ、可愛い」


「家に嫁にきてくれないかな?」


「新たな英雄伝説の始まりか」


「どうせハッタリだろ?」


「本当はクズに違いない、でも嫁に……」


好き勝手言い始めた…………も、ダメ……

よろけると誰かが支えてくれた。

抱えられてソファに座らされた?

あー、もうイヤだぁ。

隣にもたれる。暖かい。

このままでいいや……



え? オレどうしてた?

ここは?

与えられた部屋か。

両脇にはクロエとハンナが寝ている。


失神したわけではないと思うけど……意識が飛んでたかも。


はぁぁぁ、ジジイめぇ~どうしてくれよう。


…………よし、明日一番で飛ぼう。

なにも言わず家出同然に神聖帝国へ飛ぼう。

そしてジジイとは口利いてやんね。



朝、クロエとハンナに希望を伝えると、直ぐに準備に取り掛かってくれた。

小一時間後、正規ルートではない経路で街の外まで出て、飛竜を呼んだ。呼べば応えてくれる。

ジジイよりも上等な存在ではなかろうか。

三人で乗り込み、さっさと南へ飛んでいく。


もうジジイには何も出来ない。


部屋には置き手紙を残してある。

「約束も守れない人の側には居られません。もう口も利きません。さようなら」と。


愕然とするがいい。そして婆さんに叱られるがいい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ