56.ヘルガ・フォン・シュトルツ②
〈ヘルガ・フォン・シュトルツ〉
もうじき長期休暇に入ります。
ユリアン様に帰郷日を聞くと8月1日だそうです。
あの一件以来、なにもかもを吹っ切ることが出来ました。
クロエ様の殺気すら恐れなくなりました。
ユリアン様か死か。
ユリアン様に添えないのであれば死しかない私に殺気は無意味です。
結局は死にたくないから殺気を恐れるのですもの。
ユリアン様の為ならば死を恐れない。そう割り切れるようになったのもあれをやったからこそです。
ロッテには感謝しきれませんね。
なんとか旅の同行を取り付け出発です。
勿論ユリアン様の馬車に同乗して。
因みに、出発の2日前に股から出血しました。
性教育は受けていたのですぐに理解しましたが、対処は一人ではできず、またロッテに頼ってしまいました。
股にガーゼで包んだフカフカのモノを宛てがい身体にぴったりなショーツという下着を履きます。
これからは下着はショーツ、宛てがいする生理用品の日常所持を義務付けられました。
女は面倒ですね。でも女で良かったです。あんな気持ちいい……
馬車に乗る前、ロッテが
「余人がいては不可ですが、隙あらばユリアン様を誘惑なさいませ。そして男女の仲におなりあそばせばよろしいかと」
そう言ってロッテはうちの馬車へと乗り込んだ。
ロッテの意図するところはクロエ様が教えてくれた。
またロッテは……
いつだって私の味方ですね。
私を弄るクロエ様によって生理用品を仕込んだ私の下半身がまたユリアン様に晒されたことは密かな歓びです。
クロエ様からは散々に貶されましたが、私がユリアン様に相応しいがどうか試験してくれることに成りました。
私の歳で魔導士というのは他家にとってはかなり注目される利点です。
ですが、クロエ様のお力は私など比べるべくもありません。ユリアン様も実は魔導士に至っているのではとの噂があります。
現状で私が魔導士というのはこの馬車内においては何ら注視されるところではないのです。
でも、無視も出来ない筈。
その試しを乗り越えて見せましょう。
数百メートル離れた丘の上に巨大な大岩が聳えます。
アレを破壊しろと?
実家の魔術大隊の集合魔術と隊長格の魔導士の制御を経た大魔術でも壊せるかどうか……多分無理です。
魔導士とはいえ私単独の力では……ホーンの魔導士はアレを単独で壊すと?
信じられない。クロエ様は無理難題を押し付けているだけでは……
それでもこの課題を乗り越えればユリアン様に侍ることができる。
やるしかありません。
距離があるならより収束させましょう。破壊力が必要なら火を増幅する風を纏わせましょう。当たらなければ無意味です。杖で狙いを絞りましょう。
もっと力を、もっと鋭く、もっと固く、もっと定めて……これ以上は保持出来ない限界点に達したところで……放ちました。
一直線に延びる火線は尾を引きながら目標へと到達します。
轟音と共に爆裂炎上。
今放てる精一杯の更に上…………
2/3程が残っています。
あぁ……
クロエ様がユリアン様に残りの岩の破壊を指示しています。
雷撃? なんでしょう。聞いたことがありません。
数瞬後、突如雨雲? が空を覆い尽くします。雷光が幾度か走る! 危険です。退避しなければ!
直後。巨大な稲妻があの大岩へ落雷しました!!
凄まじい爆音、衝撃波で腰が抜けます。
あ、また……
あれをユリアン様が?
そんな……ヒューマン、いえ、人族にあんな力はありません。
無いはずです。
天恵の人。近頃そう呼称されるユリアン様。
そうか、そういうことなのか。
お父様が時折口にしていた御子という言葉。クロエ様に選ばれし伴侶。
私などでは……
馬車へ戻り下着を替えました。
それから昼食も共にしました。馬車へも同乗しました。
でも……
役不足な私。おいて行かれる私。分不相応な私。
ただ胸の内にあるのは幼き頃よりのユリアン様への純粋で強い想いだけ。
知らず、吐露し始めていました。
何故ユリアン様を知ったのか。
何故ユリアン様に惹かれたのか。
何故ユリアン様に固執したのか。
何故ユリアン様でなければならないのか。
切々と語りました。
あんな圧倒的なユリアン様ご自身のお力を見せられては、私がお力になれると言ってもまるで現実味がありません。
もうダメなのでしょうか?
やはり私ではお側においていただけないのでしょうか。
なんということでしょう。
クロエ様がユリアン様への誓いを立てろとおっしゃいます。
しかもその内容は全て私の中に既にある想いばかり。
一切の躊躇なく受け入れ誓いを立てました。
これからはユリアン様のために在ることができる。
なんという幸福感なのか。
ふと隣のユリアン様を仰ぎ見ると、隙がございました。
つい感謝と誓いの接吻を捧げてしまいました。
勿論初めての接吻です。
翌日。昨日のことはロッテにも報告済です。
今の私があるのは偏にロッテのお陰ですので当然です。
ロッテは言います。
「よいですか、お嬢様。ユリアン様は恐らく同年代の女子に興味がありません」
「でも、あの時は私のあそこを凝視なさっていたかと……」
「お嬢様、勘違いなさってはいけません。手練れのユリアン様はお嬢様に陰毛がなく、余りにも清廉な秘部に目を留めたにすぎず、性的興奮には至っておりませんでした。退出時の対応からもそれは明らかです」
え? アソコに息が掛かるほどに距離を詰めたというのに?
私の性器には殿方を惹きつける魅力がないと……?
「お話しのとおりであれば今はクロエ様、ハンナさんからお嬢様へ大幅な譲歩を頂ける絶好の機会なのです。この機を逃せば次の機会は……そうですね、10年近くあとになるかと」
「10年!?」
「ユリアン様はまず間違いなく年上の大人の女を好まれるお方かと。成人もしていないお嬢様に性的興奮はもよおさないでしょう」
「本当に?」
「いいえ、全ては私の想像に過ぎません。しかし、確信に近い自信を持って言えます。今ならばお嬢様よりも私のほうが脈アリかと」
なんですって!?
「ロッテ、貴女は……」
「いえ、美しく可憐なユリアン様ですが、私のタイプではございません。私は筋肉が好きですので」
ほぅ、ならば大丈夫?
「重ねて申し上げます。いまならばクロエ様方のご協力のもと、ユリアン様への半強制的な破瓜要請が可能であると考えます。そしてこの機会をのがせば……」
「10年後?」
「はい。あの様な経験を経て、お情けを頂けない日々がこの先10年にございます」
正気でいられる自信がありませんね。
「どうすれば……」
「私に万事お任せ下さい。お嬢様はあの時のようにお覚悟を決めて頂ければ良いのです。今夜……少女から女になると」
あとはトントン拍子に話しは進み、夕食後、ロッテに伴われてユリアン様達のお部屋へゆき……私は天の国へと至ったのです。
放尿と共に。
それからの旅の日々は色とりどりの至福の毎日です。
クロエ様からは魔導の貴重なご指導をいただき、ハンナお姉様からは短剣の使い方と杖での護身術を教えていただきました。
クロエ様は懐へ入ってしまえばこんなにも優しく頼りになるお方だったのだと知りました。
そしてユリアン様はこれまで気が付かなかったのですが、とても良い匂いがします。
いろいろな作用があるのですが、閨のときに嗅ぐと理性が飛びそうになる程の劣情感をもたらせます。
たまりません。
女装したユリアン様はあの折に拝見して以来、夢にも見るほど憧れの的でしたが、なんと、クロエ様達はそれを閨でお愉しみとか。
私もそこに交えていただけました。
可憐なユリアン様に可愛がられる私。
なんという贅沢な嗜好。
クセに……なりました。
それと、「かける」のは宿への迷惑と貴族の沽券もあり禁止されておりましたが、「飲む」のはよしとされ、ユリアン様と相身互いに…………何と言う充足感。また新しい扉が開きました。
皆様との日々は発見と成長の日々なのです。
本当に……生まれて…生きてきてよかった。クロエ様に感謝を。ハンナお姉様に感謝を。
ユリアン様に終生の忠誠と献身を捧げます




