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50.素敵すぎてツライ

〈クロエ・ルセル〉


ダークエルフの里にも古くから伝わる歌謡が数多(あまた)ある。


そんな中、歌詞の内容はともかく、節回しと韻の踏み方が気に入り、一時期よく口ずさんだ歌があった。

内容は、まぁ、下らない恋愛? の心情を列べただけのつまらんものだ。

大体エルフの里で恋愛の歌謡など需要があるのか疑わしい。

まぁ、ワタシが口ずさむくらいだからあるのだろう。


しかしユリアンと出会ってからは子守唄代わりによく口ずさんだものだ。

下らない内容まで教えることはないかと、エルフ言語で歌っていたのに……


あの節回しを曲にして、今手にしたばかりの楽器で鳴らした。


信じられない!

しかもエルフ言語の歌詞も覚えているというではないか。

救世の御子とは一体……


「一緒に歌おう」


ええ、喜んで!


ユリアンが奏でる美しい旋律にのせて声を発します。するとワタシよりも高い音域の声をユリアンが発してワタシに同調してきました。

自らも歌いながらそこに重なる楽器の旋律とユリアンの天使の歌声。

なんという愉悦か……


やがて歌いきり余韻を引きながら演奏が途切れます。


自然と涙が溢れてきました。

これでユリアンに泣かされるのは二度目です。


ワタシのユリアン。

唯一無二の愛し子。


そして神にも等しき導く者。



あぁ、ユリアンとならば日常にも至福の時が偏在するのか。


離れられるはずがない。





ユリアンはエイダに異性としての興味を示さない。

それは構わないのだが、中人族の男はくだらないステータスを女に求めるものが実に多い。

故にワタシの気分を害する人族の殆どが中人族であった。


なんとか気をひこうとして卑屈な態度そのままに贈り物を寄越したり、薬を盛ろうとしたり、力尽くできて木端微塵にされたりと不愉快で下賤で下らない男ばかりだった。

たまに女もいたか。



しかしユリアンは違った。初めの5年は終始いたいけで可愛くて、再会時にはワタシの男として、雄々しいオスのイキりを示し満足させてもくれた。

そして今は多様性を持ってワタシを、ハンナを悦ばせてくれる器の大きさも示してくれる。


ワタシ達の不始末に起因する辛く切ない出来事もあったけれど、約束さえ守ってくれたらいいからと赦してくれた。

死すら覚悟させられる程の怒りであった筈なのに、赦してくれたのだ。


あの時、ワタシ、そしてハンナもユリアンに命を、魂を救われたのだ。


それまでの我が庇護下にある愛し子はその時、我が主となった。

ハンナも同じことを言っている。


ユリアンと共に在ること。

それが救い。

それが赦し。

それが愉悦。

それこそが生きがい。


そこにはハンナもいるべきです。



と、話しがだいぶそれてしまいました。


エイダは公爵家の令嬢です。

子爵家嫡男ならばお付き合いするのに嫌はないでしょう。


あの天才軍師のような謀略家っぷりは隠しておいたほうが賢明でしょうが、容姿はまぁまぁ整っていますし、所作も育ちの良さが滲み出る優雅さを(かも)しております。

成績などは言わずもがな。


歳だって釣り合っていますし……ワタシ達に対する罪悪感?

あり得ますね。

今度聞いてみましょう。



何しろエイダは有用な人材ですから。ユリアンの子を託すには良い女です。


ユリアンは生き続ける。


それとは別にユリアンの子孫も繁栄し続ける。

未来にユリアンとユリアンの子孫による共栄圏を築きあげるのです。

大ユリアン共栄圏。


ユリアンとワタシとハンナが過ごしやすい世界を手に入れる為に。



その為ならばユリアンの種を下げ渡してあげる。


エイダ、頑張りなさい。




小便小娘の懇願を聞き入れてしまったユリアンが要らぬ手助けをして手をあ奴の小便で穢されたという事案が発生した。

だが、ここでユリアンの好ましく思う女性の条件を知ることができた。


要は同年代の女に性的興味がなく、年上の大人の女性が好ましいと。


そんな……ハンナもワタシも初めっから好ましい側の女であったとか……


あぁ、漲ります。抑えきれないマグマが子宮の辺りから湧き出し身体中を巡り暴れ回ります。


ハァハァ……ごめんなさい。

今夜は普通は無理です。


目前に迫ったユリアンが囁きました。

「優しく……してね?」


ぐぶふぅっ!

死ぬかと思った!!



それではユリアン、共に逝きましょう。

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