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46.初めてのお披露目(美)

〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉


庭園の大きな東屋(あずまや)。その(かたわ)らに設えられたテーブルと椅子。

既に出席が予定されていた人達はそろっているようだ。

学院長はホストとしてコチラでスタンバイしていた。


母娘に先導され、クロエに手を引かれたオレ。

一堂が出席者の視界に入ると歓談を止めオレ達に見入っている。


学院長が立ち上がり、こちらへ歩み寄ると紹介を始めた。


「ご紹介いたします。妻のイゾルデと次女のフローラです」


更にオレとクロエへ向き直りながら


「ダークエルフのクロエ・ルセル様とその伴侶たるユリアン様です」


とご紹介してくれた。

家名を言わないのは気遣いだろう。

みんな知ってるだろうけどな。


知った顔がチラホラあるぞ?


同期のロイヤルが2人共いるじゃん。

気苦労多き教頭もいる。

あとは……ガンツがいる!

知り合いだったんだ?

へえー


学院長にエスコートされクロエと二人、席に着いた。

カーテシーはしない。

しないのだ!


母娘はしてたけどね。



ガンツと目が合った。

っていうか、こちらを何か信じられないモノでも見るような目でガン見している。


ミートゥー。オレも信じられないんだ。

こんな格好して衆目に晒していることがさ。


オレは……そう、ユリアン。だだのユリアンだ。

家名も持たない小市民のケーン……ではなく、通りすがりで女装させられた憐れな美少年だ。

「美」は譲らん。


だから初対面のはずの諸君、話し掛けるなよ。


「とても可憐でいらっしゃいますわ、ユリアン様」


第二王女、貴様から様付けされる謂れはない。


「勘弁して下さい」


「ユリアンってさ……本当はどっちなの?」


第三王子よ、同室で着替えたことあったよな?


「ボクの裸みたことあるじゃないですか」


ザワッ!


全員が王子に批難の目を向ける。


「実技前の着替えのことだよね? そうだろ? ユリアン」


下を向いてなにも応えない。


「まさか、無理強いを?」


「そんな方だとは……」


「まぁ、気持ちは分かりますが」


「お兄様、最低です」


クククッ、オレと一緒に堕ちようぜ? 王子様。



隣のダークエルフが左手人差し指を天に向けて構えた。

顔は王子を向いている。


大慌てでその指止まれした。


「ちょっと、何するつもりなの!」


「別になにも。後は振り降ろすだけです。そうしたらユリアンの憂鬱は裸体の目撃者共々この世界から塵も残さず消滅します。安心ですね」


いい笑顔だ。


「いいから、消滅いらないから!」


王子を見やるといつの間にか従者が身を乗り出すようにして守ろうとしている。

青褪めて多分膝もガクブルだろうに、健気なものだ。

だが、腰の剣柄に手を掛けたのは良くなかった。


忽然と現れたハンナの手にしたダガーナイフの切っ先が従者の頸動脈に突き立てられ、剣柄へ伸ばした手は後ろへネジリ上げられている。

そして「ご命令を」とでも言わんばかりの視線を寄越す。


「もういいから、離してあげて」


ハンナは音もなく身を引き、また消えた。

どーゆー理屈であんなん出来るんだか?

相変わらずハンナはカッケェ。


静まり返った場で、従者と王子の荒い息遣いだけが耳に届く。



席を立っていたついでにカーテシーをきめてから、


「ボク、いえ、私はただのユリアンです。皆様、そのように思し召し(おぼしめし)下さい」


と続けた。

そして着席。


「さて、それではお茶会を始めましょう」


学院長が手を鳴らすとメイド達が菓子やらティーセットやらを携えやって来た。


何事もなかったかの如く。肝が座っている。


王子も努めて平静な佇まいに直っている。


後ろに下がった従者だけが未だに愕然とした顔をしているが、まぁ、気にしない。

あんなん、無かったことにするのが一番だよ。


王女はオレをホワホワ顔で見詰めているし、ガンツはなにか納得顔だ。

そして母娘はニッコニコしながらオレへのガン見を貫いている。


ホストをせぇっ!



まず学院長が切り込む。


「クロエ様のユリアン様に対する思い入れの強さは相変わらずですな。先程は背筋が凍り付きました。ハハハハッ……」


偶然だな、オレもだよ。

クロエは……無視して茶を飲んでいる。

優雅だ。


「私は今、背筋が汗まみれだけどね」


お、王子が一念発起、渾身の自虐ネタ。

あの後に声出せるとか、なかなかの肝っ玉だな。声、震えてるゾ?


「ハハハ、やむを得ますまい。これからは蛇の尾を踏まぬようお気を付けなされませ」


「そうしよう。時にユリアン嬢、先程のカーテシーはあの有名なカーテシーと同じものかな?」


「なにを仰っしゃっておられるのか分かりかねます」


「そうか。天恵のカーテシーと銘々されたあの絵画は今では王宮の新たな象徴となりつつある。あまりの美しさ、尊さから絵に向かい祈るものもいる。何人もな」


「……なにを仰っしゃっておられるのか分かりかねます」


頑張れオレの肝っ玉!


「お兄様。もうよいではありませんか。今こうしてわたくし達の御前(おんまえ)にユリアン様がいらっしゃるのですから。このように着飾って……なんて素敵な」


クラウディアちゃん、ウットリ。

ダメよ、私には妻が。


せめて妻より先に……12年前に出会えていたら。

ごめんなさい。

いいなと思えましたら5つ星のいずれかのポイントを押して頂けたら幸いです。

宜しくお願い致します。

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