39.結実の日
〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉
絵の下書きが終わり、宵闇迫る時間帯にやっと解放された。
さっさと着替えて帰ろうとすると、何故か準備室の錠が閉じられており入れないとのこと。
えー、じゃあもうさ、壊しちゃおうよ。クロエがさ。
という、自分は責任取りたくない発言をしたら、
「ワタシに罪を背負えと?」
至極真っ当なことを仰る。
するとハンナが、
「そのまま帰られては?」
ばっ、オマエ。馬鹿言ってんじゃねーよ!
ご近所にバレたら、影で女装少年とか噂になって、沢山の人が観に来て、道には屋台が建ち並び、名物「女装少年饅頭」が売り出されて、売り上げの10%を上納させて気づいたら大金持ちになっちゃうかもしれないじゃん!?
ん? 悪くない。
「人に見られるのはちょっと……」
「ではこちらを」
そちらを振り向くと、エイダがなにか服らしきものを差し出してきた。
受け取って拡げてみるとローブだった。
なるほど。これならドレスも顔もかくせるか。
ここでこの周到さ、不自然さに気が付いてさえいればと、その夜後悔することになる。
この瞬間こそが最後の分水嶺だったのだ。
もうね、精神的にクタクタなオレは流されるままローブを羽織り、クロエに抱きかかえられながら教室を後にした。
その時後ろからハンナとエイダの話し声が微かに聞こえた、「報酬はこちらに」「お姉様これからもよしなに」とかなんとか。報酬? お姉様? なんのこっちゃ?
馬車溜まりまで来る頃にはハンナも合流して、ともに屋敷へ帰宅した。
土の曜日なので当然風呂は後回しにされる。さりとてこの扮装では汗かき用の組手もできない。
当然部屋で着替えようとしたのだが、脱いでしまうのは勿体ない、とりあえず夕食をそのままとりましょうと押し切られてダイニングへ。
恐ろしい早業で配膳が成され、珍しくハンナも一緒に食事をした。
二人がやたらと褒めそやす。
嫌な気はしない。
だって自分でもメチャかわだと思ってるし。
片付けをするハンナを待つとのことで書斎でこの前買ったばかりの本を読む。
1時間ほどでハンナから声が掛かり自室へ移動。
いつもの二重結界。いつも通り逃げ場なし。
ここまでは不審な点など一切感じられない。
ここからがオカシイ。
二人は裸になったのだが、オレの服を脱がさない。脱がさせない。
クロエが女物のショーツの上から倅を弄り口づけをしてくる。
普段よりも執拗にキスをする。
どうしたことか、ハンナは参加せずに後方で何やらゴソゴソと気配だけがする。いることはいる。
しばらくするとハンナの呻き声が聞こえた。気になってハンナのほうを見ようとするとクロエに妨害される。
「ああっ、くぅ…」
とか、え? 後ろでなにやってんの?
そっちが気になりすぎてこっちに身が入らないんだけど。
「ハァハァ、装着できました。クロエ様。感度も完璧です」
何が? 完璧?
やっとクロエの拘束から解放されたオレの眼前にはハンナがいて、その股間には見慣れた形状のナニが正に装着されていた。
「どういうこと? それ、どうするつもり?」
勿論その後の展開は想像が付いている。
でも0.0001%の確率で予想外の答えが出るかもしれないじゃないか。
「ユリアン様にア◯ルでちゃんとご満足して頂くために、クロエ様か八方手を尽くし製作してくださった擬似ペ◯スです。素材の買取りなどで大金貨2,000枚掛かりました。後ほどクロエ様へ感謝を」
狂ってる。
黒騎士セットの2倍の金額。
それってどんなエクスカリバー?
だって円換算で2億円だよ。
しかもオレの為のモノだからオレが感謝しなきゃいけない流れになっている?
どうするのが正解なんだ。
正面切ってブチ切れてみるか?
泣いて赦しを乞うか?
理路整然とこの不条理を説いて正気に戻すか?
キレたら躾けという名の体罰を戴くだろう。性的な。
泣いても赦してくれないだろう。むしろより興奮してめちゃくちゃにされそうだ。
不条理を説く? オレより賢いダークエルフに屁理屈混じりの言葉でねじ伏せられてジ・エンドだ。
ハンナはこれで正気だし。戻す宛て先がない。
オッケー、分かった。
結界のせいで逃げも打てないのに考えるだけムダだったんだ。
女装で帰宅した時点でオレは負けていたのさ。
髪を伸ばさせられたこと。その辺りから計画は始まっていたのだろう。
今日は正に仕上げだったんだ。
戦う前から負けていた。
敗北者に許されたセリフなんてそう多くはない。
「痛く……しないでね?」
ハンナが漲っている!
あれっ? 幻聴? スイッチ入った音がしなかった? 今。
クロエが
「ハ、ハンナ。は、早くして。次を」
順番待ち。
良かった。聖剣は1本しかないらしい。
まぁ、オレのア〇ルは一つだしな。
誰しもアナ〇と命は一つずつ。
わざわざ女装させてからの凌辱を全力で画策する確信犯の真正の変態達。
やはりオレは弱く儚い悲しき性奴隷なのだろうか。
唯一救いがあるとしたら……
「ハンナ。ソレは外部の刺激を陰核と膣内部へ伝達し、上り詰めた際に極上の快楽を伴った疑似射精が可能です。挿入し、ただ腰を振れば直ぐに天に召されるでしょう。ですから早く!」
ツッコミ処満載。天に召されてどうする。
「いえ、ア〇ルの内側は内蔵そのものです。優しく丁寧に扱わねば傷を負わせてしまうでしょう。それに長い時間を掛けて馴致、いえ、調教? とにかく慣らしてきたのはユリアン様に苦痛ではなく愉悦を知って頂くためです。最後までユリアン様ファーストを。クロエ様」
ハンナの優しさが心に沁みる……君に付いていくよ、オレ。
それから主に口と舌と手指で着衣のまま前後からせめられまくる。
「頃合いでしょう」
と、後ろから聞こえた直後に肛門から脳天に突き抜けるような衝撃が走った。
くっ、ハンナ! あの優しさはどこへ。一気に奥まで突っ込まれた。
痛みは意外と感じない。開発のおかげか? ただ異物感がものすごい。
なかでソレがさらに怒張しているのが感じ取れる。
ちょっ、無理だよ、こんな……
しかし、ハンナは止まらない。ユリアンファーストは!?
「す、凄い! こんなにも気持ちいいなんて!」
無遠慮にパンパンと音をたてながら突いてきて……なんだか苦痛がうすらいで、やがて前立腺裏に出っ張りが引っかかるたびに全身がビククッと反応するように。
高みにのぼりつめながら射精もなく、ずっとそこにあり続ける快楽と愉悦の二重奏。
あ、これはダメだ。
初めて理性がぶっ飛んだ。
その後、付替え、交代を繰り返され、多分朝方あたりまで可愛がられた。着衣のまま。
だいぶ日が昇ってから目が覚めた。
珍しいことにハンナがまだ熟睡している。
人生観すら変えた夜を越え、結局いつも通りのオレがいた。
ちょっとだけ安心した。
でもね、いろいろと諦めることにしたよ。
得るモノと失うモノはバーターなんだよ。
昨夜はいろいろ経験したはずの前世でも及ばない快楽を得た。
代わりに失ったのは彼女達に対する羞恥心。
恥じらいや慎みは他者と、いや異性と永く接する為の必須要素だ。
関係の飽きを防止し、気遣いを誘発する小さな壁。
あけすけな人間関係はいずれ不和と諦観をもたらす。
ありのままの人同士が心から理解しあえるなんて幻想もいいところだ。
人間関係維持の秘訣は壁と遠慮と適度な距離感だ。
無遠慮に近づくほどまともな人間は離れていく。
オレは彼女達が得難い貴重な人達だからこそ敢えて小さな壁をいつでも張っていたのに。
それを粉々に粉砕された。
勝手な思い込みで行動し、的外れな忖度で決めつけて、一切の合意もなく凌辱といってよい扱いをしておいて、オレを「愛し子」だと言う。
この本能に忠実とも取れる非理性的思考と行動は果たしてこの世界で一般的なものなのか?
思えばオレはずっと籠の中にいた。
外部の人間、悪意ある人間とほぼ接していない。
ひょっとしたらオレの方こそおかしな考え方をする異常者である可能性も否定出来ない。
しょうがない。
羞恥心はもうだめだ。
排泄、下の世話、女装、ア〇ル。どれ一つ取っても両親には話せない事柄ばかりだ。
仮に子が出来たら「そういうこと」をしたのだと理解される。それは恥ずかしいことではない。
たが、下とかアナ〇とかはダメだろう。
その辺りも標準がわからないが。
今後彼女達相手には発揮できないであろう羞恥心は一先ず他者へは残置としておこう。
あとは羞恥心がないことから生じる諸問題は彼女達のせいだと割り切るとしよう。
内省終了。
はぁ、それにしてもエグかった。
記憶があやふやだけど、奴等の肛門もオイラ、突破したよな?
へへへっ。みんなアナラーだ。三者三つ巴。
ここでクロエが起きた。
珍しく寝ぼけている。
意外と可愛い。
ズタボロにされたドレスを着たままのオレを一瞥すると「ニタァ」と嗤ってまだ装着したままだったアレをそそり立たせて……お願い! 前戯はして!!
肛門めくれるかと思った。
途中で目覚めたハンナが
「あ、朝食……」
と言いながら、クロエとオレの痴態から目が離せない。
やがて果てたクロエに代わりすっかり準備の出来たア〇ルへ突してガツガツと腰を振る。
アヘアヘいわされながらも何処か冷静な部分で二人を観察する。
昨夜には出来なかったことだ。
クロエの満足そうな、それでいて何処か気だるそうな顔。
まるでやり慣れた女と遊んだあとのようだ。
それ、知ってる。
ハンナは表情が見えないけれど、多分夢中で力みまくってる。おぼえはじめの高校生のような?
技術なんて知らない。普段は優しいのにスイッチが入ると多少乱暴なこともしてしまう。
稀に怪我させてしまったら本意ではないから平身低頭謝りまくる。
そんな感じ。
それも知ってる。
いつかきたみち。
それを女側で追体験か。
しかもさ、「腹へった、早く終わらないかなぁ」とか考えながら声だしてよがってる。
女側も完璧トレース。
また泣きたくなってきた。
だってさ、こいつら絶対に「こいつはオレのもの」とか、「もっと気持ち良くしてやんよ」とか考えてる。
まだオレは生物学的には男だってのに。
精神もな。
「ユリアン!!」
と叫んでハンナが果てた。
ほらな、呼び捨て。オラオラが過ぎる。
みんな正気になったら話し合いだ。
これでもだいぶオブラートに包んだつもりですが……気分を害された方がいたなら申し訳ございません。
この先、ユリアンを男の娘にするつもりはありません。




