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3.鋼鉄の忍耐力と鉄仮面の女

もう一人の主人公です。

〈ゼーゼマン・フォン・マルキアス〉


 もはや特別な鑑定などせずとも愛孫が救世の御子であることに疑いはない。

ここへ向う3日間の馬車旅のあいだに4元素魔法の初級をマスターし、この国や周辺諸国の知見を吸収し、なんと文字もほぼ読めるようになったのだとか。


天才などという表現すら生温い、正に天の御使いがごとしである。

ここより先は愛孫に関わる情報の慎重かつ厳密な取扱いと護衛体制の構築が必要だ。

麾下の影どもの何割かは割かねばなるまい。

表の護衛はクンツのとこの上位者でも充分だろう。


そうだな、魔導士を一人付けるか。

魔術大隊副隊長のオルガなどがよかろう。

親の代から当家に仕える忠臣であり腕前もかなりのもの。我が信頼に資する者だ。

ついでに愛孫の魔法魔術の導師を兼務させてやろう。うむ。




〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉


祖父の元を(おとな)ってから1年ほどが経過した。

護衛兼魔法指導兼家庭教師として我が身に侍る(はべる)のはとてつもない美女であり、かなり稀有(けう)なる種族でもあるダークエルフのクロエ・ルセルだ。


当初その任に就かせる予定だった人は諸事情あって着任できず、代わりの人選がどうにもうまくいかず、辺境伯家の分家である伯爵家から推薦があった大陸でも有数の実力だというフリーの大魔導士を雇用することに。


機密の面からいってもあり得ない人選なのだが紆余曲折の末このような次第となったそうな。

勿論数々の保険を掛けており、機密保持の為のかなりエグ目な契約魔術も取り交わしているのだとか。

まぁ、我が身を溺愛している優秀な大人達が寄って集って構築した体制なのだし信頼しておいてよかろうさ。


クロエは基本的に一歩引いた立ち位置というかあまり踏み込まず冷徹ともいえる態度でオレに接している。

事務的とも言えるのだが、移動時とかは胸元に抱いてくれるし、下関係でやらかしたときはオムツ替えなんかもしてくれる。


この羞恥プレイは0歳時からの抗いようもない強制イベントであって……もう慣れた。

むしろ今は長じてからの性的嗜好へと昇華させないように、心静かにされるがままにそっと目を閉じて平常心で時が過ぎゆくのを待つばかりである。


だってこんな超美人に無表情でテキパキ下の世話されるなんてさ、なんの罰ゲームなのかと。

ここでご褒美認識してしまったら生涯における性的嗜好の歪みへとまっしぐらだ。


我が性器が生理的反応を示さないのが唯一の救いか。まだ1歳半だし。


クロエは博覧強記というかもの凄い知識量と理解力と洞察力を備えている。

もちろん魔法やその先である魔術への識見も素晴らしい。


教わったところによると魔法は火、水、風、土の4元素系の初級から始まり下級、中級、上級へと至る。

一般的にはどれか1元素でも魔法上級までになれば仕事に困ることはないのだとか。

そこから先は真に才能ある者だけが踏み入れる階層となる。


魔術も下級、中級、上級となるのだが魔法士上級と魔術士下級の間には絶望的ともいえる隔絶した差があるとのこと。

そして魔術士上級で2元素以上を会得し、さらに4元素の外側という意味の外法と呼ばれる光、闇、空間のどれかを会得した者だけか魔導士と呼ばれるのだそうだ。

さらに3元素と外法2つを獲得していれば大魔導士、全てを会得したものは賢者と呼称されるのだとか。


記録上ではエルフや有角人などに5人、伝承ではさらに3人いたそうな。

もはや人間戦略兵器クラス。もし出会ったら即土下座だ。



そんなクロエは水、風、土と闇、空間を獲得した大魔導士なのだとか。

しかも自前の魔素作出量が膨大で、外部から取り込んだ魔素と合わせて循環させ練り上げた魔力を何時でも術として放てるように常に身に纏っているそうだが、これを目で見ることは出来ない。

一部の魔導士は第六感的な感覚でもってそうした魔力の多寡を感じるのだそうだか、そのイカツイ魔力保持量に乳母のヒルダがビビっていたよ。底が見えないと。

そういえばヒルダ、魔導士なんだよね。



クロエは魔術開発にも注力しているそうでオリジナルの術をたくさん有している。

そんな優秀な師のご指導のお陰もあって、この1年で魔法4元素のうち火を除く3元素で中級、火は下級になった。

とはいえクロエ曰くオレの中級は上級並の威力だそうだ。

体内発生魔素量も凄まじいことになっているそうで循環と錬成と保持を早いところ鍛えておかないと「破裂するかも」だそうだ。


毎日朝晩欠かさず鍛錬するようになりました。

それはもう真摯に。



彼女はオレが5歳にも半ばを過ぎた頃に契約期間の終了と、やるべき事を成すためにとのことで我が家を辞していった。


ずっと無表情だったし事務的だったけれども最後の方ではごく僅かな感情の起伏や発露が読み取れるようになったし、極々稀にどう表現したらいいか解らない微細な表情を覗かせたりして、もう少し一緒にいればかなり真意に触れられるようになれたかもしれない。



ホントに名残り惜しい人だった。

前世込みでダントツ1番の美人だったし、いい匂いのする人だったし。

そういえば5歳になってもまだ抱っこしてくれてたな。

自力で歩けるどころか軽く助走つければ2階へジャンプできるくらいフィジカルモンスターな5歳児なのに。


意外と気に入ってくれていたのだろうか。ぽっ。

匂いはひょっとしたらこの物語の主軸かもしれないです。

文字での表現が困難ですが。

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