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36.堕ちた公爵令嬢

〈クロエ・ルセル〉


そして週末、闇の曜日がやってきた。

ユリアンには買い物に行くと言ってハンナを伴い学院長の屋敷へ出向いた。

そこから馬車に乗りミュラー公爵邸へ。


約束の時間は午後1時。僅かに早い到着です。

ミュラー公爵自らにより玄関前での出迎えを受けました。

応接間らしき広い部屋へ通されます。そこでお茶を頂いていると高慢小娘がやってきました。


慇懃(いんぎん)な礼を取り、丁寧な謝罪の口上を述べます。

学院長に対しても。


まぁ、合格ということで良いでしょう。

素材の引き渡しも受けて、用事はこれで全て終わりというところでワタシの後方に控えているハンナが口を開きます。


「侍女の身ではありますが発言をお許し願いたく」


ホストは公爵です。


「ワタシからもお願いします」


「わかりました。どうぞ」


公爵は手短に応えた。


「お許し頂きありがとうございます」


と言って礼を取る。


「公爵閣下の御領地では高品質の布地を何種類も取り揃え、優れたデザイナーと針子により王国随一と呼ばれる服飾産業を経営されていらっしゃると聞き及んでおります」


「いかにも。他にも数々の産業を有しているが、服飾関係は最重要産業の一つと言って良い」


「ここから先の話はこちらのクロエ様からのご依頼と思し召しお聞きください」


みながワタシを見る。頷きを一つ。


「ワタクシ達はユリアン様を強く敬愛しております。ユリアン様はまだ若く、天賦の才ともいえる武術や魔術は勿論のこと、学業に於いても大変優れた能力をお持ちです。ですが何故かそれらを隠そうとする傾向が強く、実力測定も結果は中級でした」


「それで?」


「ユリアン様の素晴らしさは叶うことならば周囲の皆様にもご理解頂きたいところですが、ご自身が発揮されなければいかんともしがたく……そこで考えたのです。ユリアン様の美しさ、可愛らしさならば一目瞭然なのではないかと」


「君はなにを言っているのか……」


そこで学院長が口を挟みます。


「まぁまぁ、ミュラー卿。最後まで聞こうじゃないか。始めに彼女が言っていただろう、クロエ様の依頼だと」


何かを言いかけて公爵が沈黙した。


「公爵閣下へのご依頼はユリアン様用のドレスの製作となります」


「ドレス? ユリアン君は男子ではないのかね?」


「はい、その通りで御座います。しかるに、男性としての美しさをどれだけ飾ってみてもそこにさしたる感動はごさいません。しかし女装を(まと)ったユリアン様のお姿であれば万人が心奪われることに疑いはごさいません。そうではございませんか? エイダお嬢様」


全員が高慢小娘を見る。


何かを想像し、顔を赤らめて息遣いを荒くしている様は予想通りだ。


やはりユリアンに堕ちている。

ふと我に返り、次第に目が座ってきた。


「その仕事、わたくしにお任せ願えませんか? わたくし付きの侍女はその道のエキスパートです。採寸からデザイン、縫製まで。最高峰の仕事をするとお約束いたしますわ」


ここでワタシが口を開く。


「そうは言うが、ユリアンとて簡単には女装などしてくれまい。サイズ不明のまま衣服を用意するだけでは不十分であろうし、採寸すらも困難、何か策はあるのか?」


実はワタシ達もここが悩みどころ。


「クロエ様のドレスもお作りします。その為の採寸の際にユリアン様の服も造ると称してユリアン様の採寸も行います」


小娘、天才か?


「ふむ、続けよ」


「クロエ様の講義がある土の曜日に決行しましょう。講義終了後、用事があるとしてユリアン様と学生課へ赴いて下さい。そこへ所用があるとしてハンナさんが合流します。同時にハンナさんの入場許可を取得し、事前に教室の一つを押さえておき、ダミーの衣装を多数飾って置きましょう。本命は隣の教師準備室です」


策略の流れが頭に浮かぶ。

これが全て即興だと?


「クロエ様、ハンナさんのお二方で準備室へユリアン様をお連れし、あとは逃げ場を失ったユリアン様へ折角作ったのだからと無理やりにでも着せてしまえば……」


こいつを軍師に迎えればこの王国はたちどころに近隣諸国を平らげそうだ。

奇貨おくべし。


「まちなさい。ユリアン殿は貴族家男子、しかも嫡子である。矜持(きょうじ)に合わぬことに従うとは思えん。そこでだ、もう一つ策を巡らそうではないか」


学院長? 実務家として能吏(のうり)なのは認めるが、オマエの思いつきには碌なものがないだろう。

輿とか。


「策とは?」


一応聞いてやる。


「土の曜日に実施するならば陛下に一枚噛んでいただきましょう。これは矜持云々というような事柄ではない。遊びの一環のようなものだと諭して頂くのです」


それは……ユリアンには効くかもしれない。

学院長も成長しているのだな。

侮って済まない。


ふと、公爵を見ると興味なさげに茶をすすっていた。

此奴(こやつ)……


公爵を除く全員に、高慢小娘改め小娘軍師の侍女を交えて戦略をブラッシュアップし、国王との連絡係は我かんせずを決め込んでいた公爵が担当となった。


この後、小娘軍師に請われて軍師の部屋へと招かれた。


ハンナと軍師の侍女も同行し、デザインの擦り合わせや装飾品でのトドメ刺しなどを話し合って……小娘軍師の乙女の心情を打ち明けられた。


この娘が優れているところは自分がユリアンやワタシ達にどう貢献出来るのかを提示し、自身が求める最低限を腰低く請願してきた点にある。

要するに妥協点を交渉してきたのだ。

小娘の年齢で出来ることではない。

やはり頭抜けた才女である。


「だがよいのか? お前は公爵家の令嬢。王族か上級貴族家へ嫁に行くのが常道であろう。ユリアンの正妻はワタシだし、側室の座も既に一つ埋まっているぞ?」


「構いません。既に父には話を通してありますし、わたくしの事業も好調で家を離れても資金に困ることは有りません。なによりも、ユリアン様にお仕えし、お情けを頂けるならば他になにもいりませんし」


目が座っている。本心だろう。


「当面同居は許さん。(とぎ)はユリアンが決めたルールに従い水と闇の曜日はしないことになっている。それ以外の日はワタシやハンナを退けることができるならば可能性がなくはない。どうしても堪えきれないならばユリアンのいう安息日になんとかお願いして可愛がって貰うのだな」


エイダは数瞬考えてから口を開いた。


「ユリアン様の着古した着衣などはいただけませんでしょうか?」


予想通りの要求だ。

ユリアン周りの女は皆欲しがる。

稀に男も欲しがる。


「ハンナ、アレを」


ハンナが手にしているバッグから紙包みを取り出してワタシへ差し出した。

ソレを受け取りエイダへ差し出す。

冷静さを保ちつつ紙包みを受け取ったエイダはワタシの顔を伺いながら


「開けても?」


頷いてやる。


包みをあけながら手が震え出している。余程に思い詰めていたのだろう。

既に涙が溢れ出し、全身がガタガタと揺れだした。

中からは比較的小さな布地が現れる。


チョイスはハンナ任せだったのだが。全くハンナったら。上級者向けを差し出すなんて。

それはユリアンが昨日履いていたパンツであった。

当然匂いも強めだ。


形状を確かめたエイダは始めはヘソ付近の部位に鼻を近づける。クンクンと嗅ぎながら、困惑していた表情は段々とウットリとした女の顔へ。

ここからどう攻めるかで、此奴の本質が掴めよう……!


いきなり股間へいっただと!?

普通は尻側から横巡りして強弱のメリハリを付けてから中心へ向うものだ。ハンナもパンツについては昔はそうだったと証言している。

ワタシは最初から股間だったが、最上級者としては当然だ。

今ではハンナも同じ領域にある。


しかし、今日が初日の初心者が二嗅ぎ目で股間とは、ハンナ越えか。


あ、ハンナはオムツの頃、排便おしめを嗅いで恍惚としていた絶対強者でした。

殿堂入りしていましたね。



あ、逝きましたね。

匂いのみ。ノータッチで。

初めての昇天なのでしょう。痙攣とお漏らしが初々しい。

可愛いものです。


さてと、追加の燃料を置いて帰りますか。

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