20.あの子もこの子もご入学
〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉
王国にはピンキリ込々で300家ほどの貴族家があるのだとか。
その中で今年12歳になる子息令嬢の数が35人というのは多いのか少ないのかは解らない。
但し、35人の中には格別に優秀な騎士爵家の子らも数人入っているそうな。
騎士爵は貴族ではない。
将来の男爵候補ってことかな。
そのガキンチョを一堂に集めてこれより国王陛下の御言葉を賜るよし。
因みに返礼の挨拶は同期生代表者の第三王子が行なう。
茶番だな。
腹違いの第二王女もこのガキンチョの群れに紛れ込んでいる。
そういやこの2人、前に王宮で会っているな。
二人共可愛い子だよ。少なくともこの前の印象では素直ないいコだったし。
式典はつつが無く終了し、オリエンテーションへと移行する。
カリキュラムや年中行事、長期休暇期間や必須単位などなど。
この貴族専用の学院には入試がない。
その代わりに実力別学習指導要領というのがあって、学生のランク付けはするそうだ。
その為の実力測定を来週行うとのこと。入学直後の第1回目、実力測定。
そして各学年の終業前にも各々1回の実力測定。
そのどれもが筆記と実技で試されるのだとか。
抑えて行かねば。
同期生が35人と少数なので自然科学などの基礎学問の座学は一纏めで行われる。
通常授業というらしい。
選択科目の分野は歴史学、内政学、外交学、軍事学、哲学となり、重複して専攻することも可能。
これらは上級生との合同授業もあるそうで、3年学べば下級役人に任官できる程度には実学が身に付くそうな。
但し、殆どの新入生は専攻する予定の学問の基礎はそれなりに詰め込んできているそうで、授業もその前提で行われるらしい。
知らずに来たら大恥だ。
オレは歴史学を選択する。
父母が言うには歴史の教科書にクロエのエピソードが複数記載されているのだとか。
それぞれのエピソードでは氏名不詳なので周囲が勝手に付けた二つ名での記載。
父や爺さんが「破国の闇女帝」と「クロエ・ルセル」を紐付けて調査したからこその解明で、学生時代の父母はその恐怖や羨望の対象が誰なのかなんて当然知らなかった。
それをオレだけが解っていながら教科書に書かれた婚約者の活躍を楽しめるとか、すっごいワクワクする。
他の学科は領地経営とかに必須なんだろうけど、オレは卒業後に貴族やるつもりないから不要だな。
前世で会社経営は経験済みだしね。
貸借対照表も読める。
実技は魔法、魔術、武術、馬術、生存術などで、音楽なんてのもある。そして複数選択も可能なのだとか。
ここは無難に武術かな。
賢者に至ったオレに学生魔術はタルすぎる。
馬術や生存術もマスターしているからこちらも履修不要。
武術は結構な講師が複数在籍しているそうなので楽しみではある。
噂では有角族の剣士とか、ドワーフの戦斧使いとかがいるとかなんとか。
中人族で特級になっても彼ら上位種族相手ではあまり通用しないとか良く聞くし、主にクロエから。
あまりに圧倒的過ぎるクロエ以外の適度な強者と稽古がしたいのだよ。
オレは。
一通り説明が終わり、敷地内や建物内の案内を受けてそのまま食堂へ引率された。
みんなで昼食を取り、それぞれが寮へと移動する。
因みに入学式典以後はそれぞれの従者や侍女が同行していて、ほぼ全員がクロエをガン見していた。
オリエンテーション担当の教員までもが。
気持ちは分かるが、見過ぎ。
あ、一部の女子はオレのことも見てた。その中にはあの失禁令嬢もいたりする。
まだ諦めてないのか?
なかなかな鋼の魂を持っているな。
実力測定はキッチリと可もなし不可もなしの成績に収めて無事終了。
さぁ、3年間さらりと流してのほほんと過ごしましょう。




