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19.二人目の女

〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉


ハンナを案内役として改めて王都見物に出掛けた。

事前のリサーチが素晴らしい。ルーティングも無駄なく完璧。

ハンナ、やはり出来る女だ。


何気に美人さんだし、体付きとかもかなりタイプだし。実は戦える人なんで引き締まっている。

こんな優良物件が売れ残るとか、周りの男達の目が腐ってる。


歳は多分30前後だと思うけど、前世でアラフォーだったオレからすればストライクゾーンど真ん中高めくらいだ。

ま、バット振りには行けないけど。


クロエがどうこう以前に家人に手を出すとか、マトモな貴族ならやっちゃダメだ。

上級貴族だと性技指導とかでそういうの専門で請け合う侍女とかいるらしいけど、うちごときでそんなんないし。

その後も屋敷に同居とか居た堪れない。


全然その気とかないし。ホントだよ。

ホントだよ!



クロエにあれだけ搾られる日々を過ごしながらオムツ替えとかしてくれてた侍女にまで軽く懸想とか、ちょっとした超人ではなかろうか。オレ。

あれ? クロエといい、ハンナといい、今んとこ性的に好ましく思う相手が乳幼児の頃からオムツ替えしてくれた女性限定?


これだけは性的嗜好にしてはダメだと肝に銘じていたことを、オレに施していた人を……あ、乳母のヒルダはなんともないや。

ちゃらだわ、ちゃら。母だってオムツ替えしてくれてたし。

ふぅ、危なかった。気を付けなきゃ。


そんな内省作業を進めつつも楽しく案内され続け、美味しいランチをいただき、珍しい装飾品の店を冷やかし……うぉ!?

扇子だ! 茶碗らしきものもあるじゃん。

えぇ? なになに? 日本あるの?

この世界って日本的なのあるの!?


教えてドラ◯もん! じゃなくて、


「クロエもん、この扇とか器ってこの国で作ってるの? 初めてみるんだけど」


「クロエもん?」


「ごめんね、ちょっと間違えた」


苦笑いでごまかす。


クロエは指差した物を見て少し考えてから、


「大陸の遥か東の果てから更に船で数日移動した島嶼国家の品ですね」


「東の果て?」


「えぇ、陸路を馬車で行くと2年以上掛かるかと。途中まで陸路で海に出て、海岸沿いを船で行くなら……それでも1年は掛かりますね。あ、飛竜なら餌場さえ確保できれば2ヶ月くらいでしょうか」


行けるな。うん、行ける。

卒業したらハンターになって行こう、日本モドキ。

うわぁ、ワクワクしてきた。


「こういう工芸品好きだな。いつか行ってみたいね」


「ワタシは100年くらい前に一度行きました。比較的多種な人々が平和に暮らす土地でしたよ。食事も独特なものばかりでしたが概ね美味しかったと記憶しています」


「うん、興味ある。卒業後になると思うけど是非とも行きたいね」


クロエが微笑みながら頷いている。

それを見た店員や客達が男女問わず骨抜きな顔して呆けたようになっていた。

破壊力バツグンだな。


さらにプラついてから夕刻前に帰宅した。


ホントなら風呂入りたいのだけれど、今日は安息日ではないので、夕食が出来るまでの2時間余りをクロエとの組手をして過ごした。更に汗をかかされるという苦行。

その汗が乾くかどうかというタイミングでの夕食。

給仕しているハンナがオレの後ろで汗臭さに顔をしかめていないか気になるところだが、これは既に日常だしね。

あぁ、風呂入りたい。


食後、何故かクロエに誘われて書斎へ行き大陸の地図を見ながら日本モドキへの旅路を改めて解説された。

2時間くらいしてから自室へ移動する。

いつもならば入室即防音及び防御結界なのだが何故か今日はそのままソファへ腰掛けるクロエ。

そして何時になくトーンを落とした声で突拍子もないことを話し出した。


「ユリアンはハンナとまぐわいが出来ますか?」


「はっ?」


「ハンナはその短い人生の半分ほどをユリアンに捧げてきました。そして明確に婚期を逸してしまいました」


「はぁ、」


「彼女は女としての歓びも未来すらも脇に置き、ユリアンに尽くしてきたのです」


「う、うん」


「ならばユリアンには彼女の忠義と至誠に報いる義務があると考えます」


「あるかなぁ、義務?」


「なんと情けない。ワタシのユリアンは他者からの恩義や誠意には全力で応える器の持ち主のはずです! 違いますか?」


「全力て……あの、えっと、まぁ、言わんとするところは理解できるんだけれど……それが何故にハンナとのまぐわいになるの?」


「まだ分かりませんか? ハンナ! お入りなさい!」


すると扉が開き、なんだか魅惑的な衣装に身を包み、髪とか身綺麗にしたハンナが入ってきた。

そんでいつもの防音と防御の二重結界が展開された。


これでこの部屋は脱出不可能な密室になった。


「さぁ、ハンナ。ユリアンに貴女の本心を明かしなさい。そして長年胸に秘めた想いを遂げるのです」


ヘソのあたりで手を組んで文字通りモジモジしながら下を向くハンナ。

ちょっと可愛い。


ゆっくりと顔を上げてオレの目を見るハンナ。

耳まで赤らめた顔がまた可愛い。


何度か躊躇ったのち口を開いた。


「ユリアン様、初対面の時に匂いに一目惚れしました。以来ずっとユリアン様一筋で、言い寄る男も全て退けて参りました。気がつけばもう30歳です」


ここで大きく一呼吸。


「一度だけでもよいのです。ワタクシにユリアン様のお情けを頂戴致したく!」


オムツ替えシスターズはオレの匂いフェチシスターズでもあったのか。

結界云々関係なく、この屋敷に逃げ場無し。

腹をくくるか。


って、待てよ。


「クロエはボクがクロエ以外の女の人とそういうことしても大丈夫なの?」


上目遣いで聞いてみる。

すると見たことのない柔らかな笑顔を浮かべて言い放った。


「ハンナは我が心の友、悦びを分かち合うべきわが分身。ハンナが望むならば共にユリアンを愛でて女の幸せを享受すべきなのです」


愛でられるんだ、オレ。


「ボクの幸せは?」


「ハンナがお嫌ですか?」


そんなことはない。


「……嫌じゃ……ないょ…」


クロエはおもむろに立ち上がるとハンナの後ろへ回り込み、ハンナが羽織っていた魅惑的な衣装をはらりと取り去った。

絹のガウン的なヤツ?

どこで買った?


そこには想像の上をゆく魅惑のボディーが煌めいていた。

アスリートのような弛みのない身体、大き過ぎない形のよい乳房。

しかも上向きだ。ここ大事。

キュッと括れたウエスト。

しまってて、逆三角形を決定付けるヒップ。


そのどれもが長年永続してきた鍛錬の賜物。

堂々たるその裸体を一切隠すことなくこちらへゆっくりと歩み寄る。

そして生まれたままのその姿でソファに座るオレにしなだれ掛かると、両腕を頭の後ろに回して抱きかかえるようにしてオレに口吻した。


ハンナは一頻りオレの唇を貪ると一旦身体を離し……オレの股間に顔を埋めて深く深く深呼吸した。

いや、どいつもこいつもイカれた匂いフェチばっかかい!


ハンナはぶるりと身体を震わせて、直後には服を全部脱がされてクロエばりに全身舐めまわされてからお姫様ダッコでベッドへ連れて行かれ……ああん!


暫くはベッドサイドに腰掛けてただ二人の痴態を見守っていたクロエも焦れたように途中参戦し、3人で組んずほぐれずしながら……やっぱりめちゃくちゃにされちゃった。

深夜、3人で湯浴みをし、ハンナは自室へとひきとった。

因みにシーツとかは事前に段取りしてあって、キチンとベッドメイクし直してくれたよ。

ハンナ、やはり出来る女だ。


あ、なんか昨日までと意味合いが違う気がする。



翌朝。

服を着替えて、声が掛かる前に食堂へ向かうと、鼻歌を歌いながらカトラリーの準備をしているハンナに遭遇した。

目を逸らしながら「おはよう」と言うと、


「おはようございます。昨日はありがとうございました」


満面の笑みで、明るい声の挨拶が返ってきた。

やだぁ、可愛い〜!


「こちらこそ……その、素敵な時間をありがとう」


ハンナは耳まで真っ赤に染めながら下を向き、


「また……宜しいでしょうか?」


と小さな声で囁くように聞いてきた。

ズキューンという幻聴が響いた気がした。多分致命傷だ。


「……うん」


そこでクロエ介入。


「いくら心友でも毎日は赦しませんよ。分かち合うのは週一です」


週一かぁ、週一で分かち合われちゃうのかぁ。

マイ負担がマシマシだよねぇ。

昨日なんか久しぶりに「回生の術」を4回? 5回? 掛けられて限界超えて頑張らされたし。

とにかく、これからの3年間を生き延びよう。


嬉し涙で明日が見えない。

こんどは長いですね。

2000文字くらいを意識しているのですが調整が難しいです。

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