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14.王都へ

〈ユリアン・フォン・シュワルツクロイツ〉


この1年、昼は手合わせや飛竜に乗っての遠征による鬼強な魔獣狩り。

夜は…………どちらもクロエによる指導によって二段階くらい強化された。

主にフィジカル面が。彼女はどこにどんな魔獣が生息しているのかも熟知しているので、速さだとか力だとか、魔術の元素別特効性だとかを鍛えたい分野毎に最適な魔獣を用意してくれる周到さを発揮してくれた。

超効率的に強化されております。



あの件により失神するほどの衝撃と罪悪感を魂に刻み付けたおかげで週2回の安息日の設定と、夜10時までに終了というルールを飲ませることに成功した。かなりゴネられたが、涙ぐみながら「ボク死んじゃうのかな」って呟いたら黙った。


その話し合いの際、様付けを止めて自分をクロエと呼んで欲しい、そして敬語も止めて欲しいとお願いされた。「ワタシ達は対等であるべきだ」と。

元日本人としては1000歳も年上の先達にタメ口はどうかと思ったが、それくらいは聞き入れよう。

安息日は譲らんがね。



因みにこの世界はかなり地球似なところが随所に見られる。敢えて端的に表現するならば合理化され、ファンタジー要素を加味した人族に都合のよい地球的世界だ。

6日で1週間。5週で1ヶ月。つまり一月30日間。12ヶ月で1年。だから1年は360日間。

閏月とかがない。しかも太陰暦と太陽暦が完全一致しているとか、そんな偶然の一致あり得るのだろうか?


原初のエルフによって明確に創造神の実在が証明された世界での地球人視点ではあり得ない合理性。ほかにも知れば知るほど疑義は募るばかりだ。

ついでに時間も12進法と60進法兼ね合いからの24時間制だ。これも作為を感じる疑惑の対象。

そんでもって1週間には曜日もある。光、火、水、風、土、闇の順で闇の曜日は一般的に休日になっている。


2人の行為の安息日は水と闇の曜日に定めた。

安息日でも同じベッドで同衾しているし、横でいい匂い放出させながらモゾモゾして、時折呻き声を漏らすというハラスメントを無遠慮に展開されると……まだ十代の男の子だもの、4回、いや、3回に1回くらい突撃してしまう。忍耐力が豆腐だ。


ともあれ、王立学院入学の時期となり、侍女兼護衛としてクロエ。子爵家の王都屋敷控えの侍女としてハンナが同行することとなり、馬車で約2週間の旅に出た。



オレが提唱してクロエが構築した空間魔導の術式。これにより生成された亜空間にどれだけでも物資が収納できるようになった。空間収納術式と名付けられたそれはオレにはまだ再現不能。

かなり画期的だということでクロエから大絶賛されたよ。


そんなこともあってクロエ曰く、荷物は収納できるし、飛竜は大人3人ならなんとか飛べるとのことだったが、道中の村や町に寄って金を落としていくのも貴族の務めだよと父に諭され馬車移動にした。

多分父の真意は別にある。「飛竜で王都に乗り付けるとか、ダメ、絶対」ということだと思う。



父のクロエに対する想いは複雑だ。クロエが何者なのかは旅立つ少し前に聞いた。それを話す際の父は努めて冷静に無感情を装っていたが、憧れ、恐怖、戦慄、崇敬、様々な感情が部分部分に表出していた。

そして平素において沈着冷静なクロエが感情的になるのはオレに関わる事柄のみと言ってよく、オレに対する独占欲の強さを決して侮ってはいけないということを強く言い含められた。

間違っても他家の令嬢と必要以上に親しくしたり、他の女に目を奪われるなどあってはならないと。

場合によっては王都が滅ぶことだってありえるのだと。

この辺りの話しになったあたりでは焦燥感が滲み出るような表情になっていた。


父よ。他の女に気を向けるとか、そんな怖ろしいことオレがするわけないだろう。

自身が成長したからこそ解ることがある。

この1年の修行で悟ったクロエの圧倒的強者っぷりは……なんと言うか、雲に隠れて山頂が見えない大嶺の如しだ。

オレはまだ山裾にすら辿り着いていない。実質賢者なのに。

クロエにビビリながらも「その時」になるとアレを立てる我が精神力の強さ? だけは大したものだとは思うんだけどね。



特にこれといったイベントもなく王都に辿り着いた。爺さんところの城塞都市をさらにもう一廻り大きくした二重外壁をもつ巨大城塞都市。さらに二重外壁外側に広がる街区が広大だ。中央に聳え立つ尖塔を幾つも持つ城は正に中世ヨーロッパのそれだ。


「クロエは王都に来たことあるの?」


「そうですね、300年ほど前に来て2年くらい滞在したかと」


「じゃあ案内とかしてもらえるかな?」


「勿論です!」


嬉しそうに受けてくれたが、300年前? 今も営業してる店とかあるのかな? そもそも覚えているのかな。

まぁ、そんなことよりも、


「そろそろ街区に入るから、顔を離してくれる?」


数秒の時間をおいてオレの股間に埋めていた顔を上げてきちんとした位置に腰掛けるクロエ。

他の人がいる時はしないけど、ハンナだけ同伴の場合は何はばかることなく嗅ぎに来る。

何故だろう? ハンナは特別?


子爵家紋章を掲げた馬車はフリーパスで外側外壁の門を通過してさらに内側の外壁通行門へと辿り着く。

ここでは門衛に止められて搭乗者と行き先を問われる。

御者の横にいた従者が応えて学院の入学招待状を見せると通行証を渡され手続き完了。

ここからはいわゆる貴族街だ。

商家などもあるが、特に用向きのない平民は通行を許されない制限区域となる。


今日のところはひとまず子爵家の王都屋敷へ向かう。


普通は地方貴族の子弟でも顔見せなどのためや社交シーズンに親に同行して年1回くらいの頻度で王都へくるものらしいが、辺境伯派閥の貴族は国境防衛が主任務なので社交シーズンの参加義務が免ぜられている場合が多いのだとか。

その上我が家は御子ばれ防止の為にオレを外に出そうとしなかった。


そんなこんなで子爵家嫡男でありながら王都にくるのが初めてというね。

前世では仕事で東欧や中東、アフリカなんかをウロウロしていてこういう西欧風の城や街並みはプチ観光でちょっと見学って程度の知見しかない。まぁ、珍しいと言えなくもないか。



ま、入学式典まではまだ1週間ほどある。父や母、爺さんから申し使ったところへ挨拶まわりをしても余裕があるだろうし、クロエと王都見物でもしよう。

本作にお付き合いいただけそうならばブックマークとご感想を是非!

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