120.王国の外務卿
〈ユリアン・エルフィネス・ルセル〉
そして2月23日がきた。
今あちらに眷属はいないから行きはソラで。
ヴァン・ヘルムート王都へ皆様をお出迎え。
王宮に皆様お揃いだ。
父とはあの時以来だな。
「父様、お久しぶりです」
「あぁ、ユリアン。本当に久しぶりだ」
そう言って抱きしめられた。
やはりイヤではない。改めて今生の親なのだと感じた。
「皆さん準備は宜しいですか? そして全員お揃いですね?」
オレの問にミュラー公爵が応える。
「婿殿、大丈夫ですよ。確認しました」
「有難う御座います。お義父様」
「あぁ、いいなぁ、その呼ばれ方」
そういやこんな人だったな。
「それでは参りましょう。ソラ、おいで」
亜空間からユリアンそのものな顔をした女の子が現れる。
「「「「「「「「「「「誰!?」」」」」」」」」」」
「風ドラゴンのソラです。ボクの眷属化した際にボクの似姿をとったんですよ。あ、但し、女の子ですからね、触らないで下さい。特に……お祖父様!」
もう触ろうとしているし。
「む? うむ。承知した」
「さぁ、ソラおいで」
ソラの腰に手をまわして引き寄せた。コレ、オレんだし。
「転移」
言う必要はないけど、一応言葉にした。
瞬時に帝都の城内、大応接間へ移動した。
「「「「「「「「「「「「「おお!?」」」」」」」」」」」」」
凄かろう? 未だに自分でもスゲェと思うし。
リカルダが甲斐甲斐しく頭を下げ皆を出迎える。
「皆様、ようこそユリアヌスルセル帝国、帝都ユリアナへ。わたくしはユリアン皇帝陛下にお仕え致します、侍従長のリカルダと申します。これより皆様を会議室へとご案内致します。どうかご同行いただけますよう、お願い申し上げます」
「リカルダ、荷物はどうする?」
「ここへ仮置き下さい。不安がございますれば、従者をお残し下されば宜しいかと」
そう、従者や侍女が帯同している。偉い人ばかり、身一つというわけにはいかない。
みんな素直に従ってくれた。
いざ、会議室へ。
道中、この世で一番可愛い生き物である弟ミハイルが抱きついてきた。
「兄様! ボクを置いていってしまわれるなんて酷いです」ミハイル
「ゴメンね、ミハイル。お祖父様のせいで急いで旅立たなければいけなかったんだ。お祖父様のせいで」ユリアン
「ユリアン? 何故二度も言ったのだ?」ゼーゼマン
「……大事なことだからです」ユリアン
「くっ、もうあのようなことはないと再度誓おう」ゼーゼマン
「ゼーゼマンよ、なんの話しだ?」ヨーゼフ
ことの経緯を皆に説明した。
「つまりこうなった全てのきっかけはゼーゼマンであったと?」ヨーゼフ
「…………そうとも言えますね。あれ? ホントにそうですね」ユリアン
「兄様? お祖父様がなにか良くないことをなさったのですか?」
「うん、そうだよ」
「くぅ、だからユリアン……」
なかなか楽しいひとときだったよ。婆さんの苦笑いが実にいい味だしてた。母もだな。
「ヴァン・ヘルムート王国、国王陛下並びにご重鎮の方々、さらには皇帝陛下の御実家の方々並びにご側妃様のご家族の皆様。此の度はユリアヌスルセル帝国へようこそ参られました。お礼申し上げます。
私は宰相の任を皇帝陛下より拝命しております、マテウス・フォン・クロイツェルに御座います。以後、良しなに願いまする」
「「「「「「「「良しなに」」」」」」」」
「貴国は我が皇帝陛下の祖国であり、多くの側妃さまの出身国でもございますれば、我らにとっても思い入れ深きお国で御座います。出来ますれば旧来の遺恨などは一度お忘れ願えれば幸いに御座います」
「うむ、皇帝ユリアン殿は我が娘婿殿でもあられる。国自体が変わったのだ、過去の事はもはや言うまい。ユリアン殿、クラウディアを頼みますぞ」
「お任せを。必ず幸せに致します」
「うむ、うむ、アレの兄は前帝国の姫を娶り……かなり、まぁ、なんというか……辛い目に遭っていてな。せめてクラウディアには幸せになって欲しいとな」
「……聞いています。かなりご苦労されたそうで。クラウディアにはそんな思いはさせませんよ」
「信じよう」
お兄さん、嫁に殴られたんだっけ?
そういやぁ、その後どうなったんだろ?
別れたんだよね?
後で誰かに聞こうかな。
「その……クラウディアの同腹のお兄さんは、アーベル殿は何故来られなかったのでしょう?」
「臣籍降下した身ゆえ遠慮を……」
「呼びましょう」
「しかし、今からでは」
「ソラ、悪いけどいまからまた王都まで飛んでくれる?」
「……一人で?」
「ゴメン。何処かで埋め合わせするから」
「着いたらすぐに来てよ」
「了解」
サクッと飛び出すソラ。単独なら数時間で着くってさ。はぇー。
「国王ヨーゼフ殿、義兄上は王都に居られるのですか?」
「あ、あぁ、そうだ」
「私が王都へ転移する際に、どなたか同行願いたいのですが?」
「………朕が参ろう」
「「「「「「「陛下!」」」」」」」
「迂闊であった。実妹の晴れ姿、見せてやらねばな。無理にでも連れ出さねばならなんだな。悔いは残しとうない」
まぁ、色々あったが、夕刻には義兄も到着。長女以外は勢揃い。
なんてね、長女もフランシア王国からの来賓として来てるんだ、これが。王太子妃だからね。
一昨日挨拶したよ。
そして晩餐会。
ヴァン・ヘルムート関係者と我が家族によるお食事会だ。
みんな料理の美味さに驚いている。
そして雑談をするのだが……
「そういえばその後外務卿はまだ任命されていないのですか? 見知った方以外は居ないようですが?」
「ユリアン殿? まさか知らないのかね」
「…………なんですか、その含みの有りそうな仰られ方は」
「んん、では朕から紹介しよう、我がヴァン・ヘルムート王国、外務卿、クンツ・フォン・シュワルツクロイツ伯爵だ。良しなにな」
「ご紹介に預かりました、クンツ・フォン・シュワルツクロイツ伯爵に御座います。皇帝ユリアン・エルフィネス・ルセル陛下。以後良しなに願います」
起立し、貴族の礼を取る父。
外務卿? 伯爵?
「は?」
口開きっぱなし。まぶた全開。
「ユリアン様、私がお勧めしてね、学びの部分では協力して……いやぁ、凄まじい学びっぷりであったよ。流石、ユリアン様の父君と感心したものです」
学院長……さすが王都一の教育者。
いや、違う! そんなことではなくて。
「父様が……外交の交渉相手になられるのですか?」
「左様に御座います」
「マテウス。ヴァン・ヘルムートとの関税税率だけどさ」
「心得まして御座います。他所より甘めに設定致しましょう」
「父様、他に何か要望とかある?」
「軍の共同訓練と国境の森の共同管理をマルキアス辺境伯が望んでおります」
「はい、認可」
「「「「「「「おぉー!」」」」」」」
「父様、他にも困った事があれば何でも遠慮なく言って下さいね」
「ユリアン、有難う」
「何を……親子じゃないですか」
「陛下、それ以上の即時決裁はお控えください。後でクラウディア妃から叱られますよ」マテウス
クラウディアを見る……笑顔、ではないな。目が笑っていない。
「その、クラウディア? お願い」
「そこまでは認めましょう。そこまでは、です」
「……うん」
「うむ、クラウディアが尊重されている事を喜ぶべきか、譲歩が打ち止めとなったことを嘆くべきか、王妃よ、どう思う?」
「妬ましい程に尊重されておりますね。クラウディア妃、自らに与えられたその立場と権限を当たり前とは思わぬことです。貴女が如何に恵まれた環境にいるのか……努々忘れぬようになさい」
「肝に銘じますわ」
実母ではないし、そうも愛情豊かな人ではないとのことだが、うん。
地に足が着いた出来る人って感じだな。
「あの、ハンナは陛下のお役に立てているのでしょうか?」
「……義父殿はドライリッターをご存知ない?」
「あ、いや、聞き及んではおります。ですが、我が子がそのような……おとぎ話のような活躍をしたなどと未だ……」
「信じられない?」
「はい」
「ガイウス、聞かせてやってくれ」
ガイウスは直に見た狂乱の舞姫について熱く語った。
今では帝国全軍の憧れの武人として、ドライリッター中一番人気の戦士であると言い添えて話しを終えた。
「帝国ではヒューマン最強と云われているよ」
「皇帝陛下もヒューマンではないですか?」
「私はね、眷属を複数得たことで変わってきているのだよ」
「変わった? どういうことでしょうか」
「大精霊と風のドラゴン、闇の精霊。それらとの交わりによって……人ならざる者へと変貌しつつあるんだ。自覚もある」
みんなが唾を飲む。
「まぁ、いいじゃないか。ハンナは我が国の武の象徴になっている。極級ハンターすらも瞬時に倒す腕だよ、親として誇るといい……それに……」
「陛下、其の辺で」マテウス
その後も皆で沢山語り合った。
妻達の家族のほとんどとはだいぶ打ち解けたと思う。
そうそう、アーベルお義兄様は元皇帝の第二皇女とはやはり離縁したそうだ。
手切れ金として大金貨10,000枚(約10億円!)を渡して、離縁状にサインもさせたそうだ。
行き先は知らない……ことになっているが、東方の小国で、遠縁の王家があるらしく、そちらへ流れて行ったとか。
うちに下った小国の一つじゃないことを祈るのみだ。
お互いの為に。
午後10時、お開きとした。
お勤めを果たし、即寝た。
浮気相手が何やら頑張っていたが、
「今日は寝る。お前も寝たら?」
そう言い放ちトドメを刺した。
そうしたら……寝た後のオレに裸で跨り、性器を合わせる位置取りで腹上寝してみんな起きるまでマジ寝してやがんの。
みんなに責められ寝起きから正座だ。
侍従長が一番の悩みのタネ……




