119.技術の粋
〈ユリアン・エルフィネス・ルセル〉
年越しして2月も上旬。そろそろ国に戻らなきゃならない。
2月25日 戴冠式と建国宣言
2月26日 賢者推戴式典
2月27日 合同婚姻挙式
2月28日 大精霊・風上位竜お披露目
2月29日〜3月2日 建国祭
大忙し!
誰だ!?
こんなギッチギチに詰め込んだスケジュール組んだ奴は!?
はい、クラウディアさんです。
12月いっぱいで招待対象を選定し、1月上旬に招待状発送。
一番遠い国、地域までかかる時間と、そこから返信して、準備して、こちらまでの移動時間などを勘案すると2月なら下旬じゃないと間に合わない。
そして滞在期間中に国力見せつけて、祭りを楽しんでもらい、年度始めまでに帰らせることを考え併せると……こうなる。
ぐうの音もでねぇ。
学院の食堂で昼食後のお茶をしながらみんなで話す。
「ヘルガ、どう? 水魔法の進捗は」
「ここでは魔術ですね。上級には至りましたので、あとは精霊さんにパスしてもらえれば大魔導士ですよ」
「だからわたしが……」
「ルサールカ様のは反則です! 大精霊様にパスしていただくなんて」
「ヘルガは真面目だね。いや、公正なのかな?」
「別にインチキするわけじゃなし……むしろわたしがいるから他の子達がちょっと引いてる」
「え? そうなんですか? ルサールカ様は他の精霊さんに嫌われているのですか?」
「なんてこと言うのよ! めっちゃ好かれているわよ! ただちょっと偉すぎて少し遠慮されてるだけよ……」
「……あの、やっぱりルサールカ様にお願いしてもいいですか?」
「……同情? 同情なの? ユリアン、ヘルガが酷い!」
「ヘルガ? ルサールカも結構いい奴だしさ、そんなに嫌われてはいないと思うんだ?」
「ユリアン? 何よそれ。しかも語尾が疑問形ってどういうことよ!」
「それじゃあお願いします」
「……マイペースね、ヘルガ」
ルサールカが人差し指をヘルガの額へ。指先がほんのりと光る。
「終わったよ。これでヘルガはヒューマン言うところの大魔導士だよ。あとはユリアンから魔素と魔力を供給してもらうといいわ。種ももらっているし、ひょっとしたら賢者にも至れるかもね」
「はい! 有難うございました」
3月中旬に行う実力測定ではかなりの力を示すだろうさ。
オレ達はまあそろそろユリアヌスルセル帝国へ行かねばならない。
衣装合わせや式典プログラムのレクチャーや、国内重鎮達との顔合せもしなけりゃならない。
それに……浮気相手の母がオレに逢いたがっているのだとかで、是非里へ! と、強く頼み込まれている。
因みにソラは一緒にいない。
クロエの反体制派潰しの足にされている。
速度アップで、今では国内何処へでも1日あれば辿り着けるからな、超便利使いだ。
他にも害魔獣退治や盗賊、海賊退治なんてのもやらされているらしい。
反体制勢力の情報もかなりの確度で影が齎せてくれるので、効率良くピンポイントで潰せるので、そちらはもう直に埒が明くそうな。
むしろ影の仕事がなくなるとリカルダが愚痴を言っていたくらいだ。
「ユリアン様」
振り返ると学院長がいる。
「こんにちは学院長」
「こんにちはユリアン様、明日出立と聞きましたが?」
「えぇ、今夜行きます」
「そうですな、転移があるのでしたな。空間収納と共に、実に……垂涎の魔法です」
「浄化も便利ですよ?」
「おお、アレですな。身体だけでなく、掃除も道具の手入れも何もかもでしたな。あれは唯一の、我らにも可能かも知れない魔法です」
「光魔法が使えなければならない前提はありますがね」
学院長にはルサールカの語る真実を話してある。だから彼の認識では魔法に統一されている。
但し、教育者としての彼は今迄通りの認識で当たっている。混乱を招くからね。
格としての魔術士、魔道士、大魔道士とかのランク分けが出来なくなるし、見えない精霊が云々言ったところで信じない人のほうが多いだろう。
「お迎えは2月23日、午後1時で大丈夫ですね?」
「はい、宜しくお願いします。今から胸はずみますな」
学院長はじめ、国王一家、外務卿、軍務卿、財務卿一家、シュトルツ伯爵一家、ハンナの実家フェルナー家両親、ユリアン両親と弟……ジジイ……と婆さん他を王都から転移で連れていくことになっている。
あと、お付きの人達ね。
大サービスだ。
これだけの人数を一遍に転移させても余裕の魔力滞留量。それだけでも国家の脅威だそうだ。
ソラの存在もだし、ルサールカのことも知れている。
国として敵対なんて絶対に有り得ないと学院長も太鼓判だ。
今回の各国来訪に併せて、平和条約や経済協定なども締結してゆく予定だ。
ガッツリと力を見せ付けた後でね。勿論ヴァン・ヘルムート王国とも締結予定。
条約文を持ち帰り検討するのも有りだ。まぁ、折れるしかないと思うけど。
1月上旬、ジジイは婆さんと母と、跡取り息子の叔父と共に王都屋敷へ現れて、ガイウスの口利きのもと頭を下げてきた。
ちゃんと反省し、行動も改めたと付き添いの人々から証言されて……まぁ、赦した。
泣いてやんの。ジジイ。
余程堪えたらしい。
謝罪受け入れ後は皆から祝福と賛辞を受けた。
特に母は号泣しながら抱きしめてきて、しばらく離してくれなかった。
ゴメンね、母。
婆さんは「身内から皇帝陛下が誕生するなんて!」と大はしゃぎだ。ジジイ共々な。叔父も破顔して肩を叩きまくる。
ジジイの跡取り息子だけあって強いんだよ。痛いって!
「父様は?」
の問に、
「近々会えますよ。今は新たなお役目のお仕事が大変過ぎて手が離せないのです」母
「ふーん……」
この頃の我が方の影は国内安定化に重点を置いていたので、敵対可能性が低いヴァン・ヘルムートへは僅かな数しか影を派遣しておらず、しかも調査対象はヴァン・ヘルムート内に於ける不安要素の洗い出しという…………具体的に言うと、ジジイ以外の辺境伯達の調査だ。
だから中央の閣僚人事とかは把握していなかったりする。
お陰で後にアホ面を曝すことに。
その夜、帝都ユリアナへ帰参した。
ルサールカもだ。
「お帰りなさいませ、陛下」
浮気相手が満面の笑顔で出迎えてくれた。
これで周りに人がいなければ股間に手を伸ばし、濃厚なキスをしてきただろう。
人目を気にしながらの……背徳感溢れる関係。とても良い。
まぁ、妻達公認だし、城内に知らぬ者なき公然の秘密なんだけどね。
「出迎えご苦労さま、リカルダ。今日も可愛いね」
僅かにふらつくリカルダ。
「……陛下、後ほど余人を交えずご報告が御座います」
「……クラウディアを介してくれる?」
「そのような意地悪を……」
「皆が寝静まった後でなら……いいよ?」
キャッホーとでも吹き出しがつきそうな顔で
「では頃合いを見て忍んで参ります!」
コイツの忍びはスゲェ。マジで分からないんだ。マグダも凄いけど、その上をいく。ときにクロエすら欺く。
ヒューマンの可能性を感じさせる人材だよね。
オレの浮気相手は。
話題豊富で話術技能も高い。だから酒とか一緒に飲むと楽しいんだ。
その後も挿しつ挿されつの間柄。
そちらもスーパーなテクニシャン。
クッソお、あちらでは負けてばかりだ。
というわけで、飲酒するようになった。立場上必要だろうと言うことでね。
まぁ、ほぼ酔わない。クロエによる毒無効が効いているから。
エチルアルコールは毒物だ。メチルアルコールはもっと毒物だ。どちらも無効化される。
二日酔いとかは勘弁だけどさ、ほぼほぼ酔わないのはなぁ、つまらん。
みんなと晩餐をともにした。ブリュンヒルデによる料理が饗される。
うん、美味い。
オレから色々と聞き、更に工夫を凝らして想像の上を行く味に仕上げている。
各国の招待客に振る舞われる料理もブリュンヒルデ監修の料理を、最早彼女の弟子と化した帝城の料理人達が拵えることになっている。
招待客達は会食の場でも戦慄することだろう。
そして帰国後に不満が爆発する。
それを見越して各国から料理人の研修を受け入れる為の下準備まで始めている……エイダが。
研修費用は凄まじいボッタクリ金額が設定されている。
みんなとの会話も楽しいものだ。
性生活もかなり落ち着いてきたし、皆が役割を持ち、責任ある立場で傅かれている。
ベアトリクスは近衛騎士団と戦闘侍女や戦闘侍従達の差配の地位を与えられ、城内警備と要人警護の責任者だ。
出先での警護責任者は最精鋭の帝都防衛師団師団長となったブリュンヒルデ。
マグダは独自に20名の影を擁して、エイダとクラウディアの警護をメインにやっている。防諜もね。
ハンナはクロエと共に反体制派狩りに勤しんでおり、国内どころか近隣諸国でも武人として恐怖と憧憬の対象になりつつあるらしい。でもさ、そろそろお腹が……
ソラもクロエ達を乗せて各地に出向き、業火を放つ巨大な暴風のドラゴンとして遠国にまでその暴威が語られている。
そして人類が唯一認識できる大精霊ルサールカは……両教会や、そこに属さないあらゆる人族からも崇拝され始めたとか。面会希望者が凄いことになっている。だが、共和国以外の勢力とは会わない。
ソラやルサールカへの畏怖と崇拝。
だから……国名に神聖と付ける当初案を却下した。
「本物」扱いされかねない。
別に世界統一とか目指しているわけじゃないし、ルサールカは神聖でもない。
ルーメル神聖帝国は御子の子孫を皇帝が自称して国名に神聖を付記したそうだが、その観点に於いても神聖は宜しくない。
オレがオリジナルである以上、これ以上の箔付けなど不要だ。
さてと、今夜は安息日じゃない。
やるか! 夫の務めを。
皆が満足のうちに寝静まったあと、いつの間にか現れたリカルダとした。
マジでいつどこから忍んできたのか分からんかった。いや、クロエの結界がある。後から入るのは不可能だ。ずっと中に忍んでいたのだろう。
リカルダからの挿入時にオレが声を出さないように口を塞がれた……なに? この背徳感。
寝静まった妻達のすぐ側で口を塞がれ後ろから突かれる半泣きの美少年。
是非映像に残したい!
マンネリ化防止にも一役買っている侍従長は抜かずの二連発を放ってから、既に出来上がったトロトロのアソコにオレのチンコを充てがい、何時もの騎乗位で腰を振る。
最初に比べかなり上達している。
一度聞いたんだ。「あんまり機会ないのに腰の動きとか、上達してるよね?」
そしたら、
「配下の娘達と修練をしています」
は? 女とじゃ練習にならないのでは?
「娘達の腰の動きをなぞるのです。また、口でのご奉仕も同様にて。娘達は房術を仕込まれ、実際に活躍しておりますから、実に多彩で実用的な技術を持っています」
なんてことだ! 影が男をたらす手練手管が我が身に?
そうか、妻達は箱入りや筋金入りの武人とかばかり。唯一マグダだけが床上手。
でもマグダは周りに気遣いあまりそういった技術を駆使しないんだよな。
そんな中、本物のテクニシャンから実技指導を受けたヤリチンが誠心誠意オレを喜ばそうと全力で持て成すのだから……気持ち良いはずだわ。
しかも背徳感もない混ぜに。
ふむ、それはクセになっても致し方なしか。
翌日から準備という名のハードスケジュールが始まった。本番は予定調和に過ぎない。
その予定調和をスムーズにこなすための訓練と下準備が実に面倒くさい。
更には国内の要人対応や、許認可関係のサインや玉璽押印立ち合い、人事辞令の確認や、把握。
憲法制定に伴うアレコレや、各種改正法の施行準備。
今回の建国祭で配布する各直轄領への下賜金配分認可や代官の選任指名式典前倒し実施等など、よくもまぁ、これだけの過密スケジュールを無理なく当て込みこなしてゆくものだと感心する。
クラウディアとエイダの実務処理能力の高さに慄然とするわ。
勿論宰相マテウスも大活躍。
コイツが居なかったら多分二人だけではなんともならなかっただろう。
コイツも天才の類だ。
周りが有能だと楽できるし、とても快適。その代わり言われた事には素直に「はい」だ。
脱げと言われようと、勃てろと言われようと、イジメてと言われようと、何時でもイエスだ。
頑張っている人にストレスを感じさせてはいけない。
だから、建国祭が終わるまでは安息日撤回を約束させられてしまった……




