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102.ハンターギルド

〈クロエ・ルセル〉


さて、湯浴みを終え服を着て、ルサールカの案内でユリアンの元へと向います。ワタシ、ハンナ、ベアトリクスは帯剣し、マグダは暗器のみ所持で距離を取った警護に付いています。

城から30分ほどの場所にある大きな石造りの建物をルサールカが指差していますね。


「ここにいるわ」


……ハンターギルド。

15歳からしか登録できないからと、敢えて訪れないでいたのに。どういった心境の変化でしょう?


扉を押し開け中へ入ります。


中は広く、ホールがあり、左手にテーブルと椅子が多数並べられた飲食コーナーがあり、20人程がまだ明るいうちから酒を呑んでいるようです。右手には無数の羊皮紙や板切れが貼り付けられたボードがある。依頼票ですね。それを10人ほどが眺めています。


そして奥にはカウンターがあり、そこに受付け係の者が3人おり、それぞれの前に列が出来ています。そこには30人を超えるハンターが詰め掛けています。


肝心のユリアンは……


カウンターの中にいますね。姫と一緒に。

もう一人が何やら真剣に語り掛けていますが……素材の回収と分配……金額と支払い。

あの蛇のことでしょうか。アレ一匹で大金貨数100枚にはなるでしょう。

なるほど。彼らにしたら大金ですね。


ユリアンは……犠牲者の家族に分配して欲しいと。

そうですね。ユリアンならそう言うでしょう。


姫が呟いている……「素敵」……もう堕ちている。

だからユリアンはもう。



「ユリアン、何をしているのですか?」


「どうしてここが……あぁ、ルサールカか。通りかかったらこの建物の二階から姫に声掛けられてね、ソラがヤッつけた蛇の素材をどうするのか問われてたんだ」


「どうするのですか?」


「進呈したよ。ボクらには不要だしね」


フフフ、そうですね。


「ついでにハンター登録でもしますか?」


「まだ2年足りないかな」


居合わせている男に問うてみる。


「……お前、立場は?」


「え、あ、イスミル支部ギルドマスターです」


「ワタシの古い記憶にあるのだが、ハンターは頭抜けた実力があれば成人前でも登録出来る制度があったであろう?」


「はい、御座います。中級ハンターと模擬戦をして勝てば、講習を経て下級からスタート出来ます」


「上級か特級のハンターを用意しろ。明日の10時にでもやるぞ」


「上級か特級!?」


「まだ分からんか? ワタシとそこのユリアンはお前等いうところのドライリッターだ。なんなら極級でも構わんぞ?」


「なっ!?」


「明日の10時だ、よいな?」


「……はい」


「クロエ……別に急いでないんだけど?」


「せっかくギルドにきたのですから、ついでです。あぁ、そうだ、ギルドマスターよ、それこそついでだ、無効化しているワタシのハンター資格を復活させておけ」


「一応規則ですのでお名前を」


「クロエ・ルセルだ」


「直ちに極級ハンターとして復帰手続きを行います。明日の模擬戦には

特級ハンターを呼びます。勝ったら特例措置として上級スタートとします」


「あぁ、任せた」


「特級とかぁ、大丈夫かな?」


「ガイウスブルグで戦った国喰い旅団の幹部は概ね特級でしたよ。ユリアンなら寝惚けていても勝てます」


「特級ってあんなものなの?」


「ちょっとまってください。国喰い旅団と戦った? 幹部とも戦ったのですか? 本当に?」


「あぁ、滞在先に押し掛けてきた200人を全員殺した。そのうち幹部4人を含む40人はそこのユリアンが片付けている。あとは、そうだな。幹部4人を含む100人はこのヘルガが魔道で屠ったな」


「え? あそこの幹部は魔道が無効化されて……」


「それでも斃せる術式を持っているのだ。二人とも我自慢の弟子だ」


「……ヘルガ様もお受けになられますか?」


「そうだな、ついでだ。頼む」


だいぶ語ったが、カウンター外の誰にも聞かれていない。防音結界を張ったからな。


そろそろ城へ戻るか。晩餐前の支度もあります。


カウンター外へ出ると、比較的身なりの良い騎士のような男がクラウディアへ声を掛けてきた。


「やあ、麗しい女性ばかりで皆が目移りしているよ。でも私は終始キミに釘付けだ。お願いします、どうか私に貴女と食事をする栄誉を与えてはくれまいか?」


別方向から進み出た一見手練れ風の壮年と見えるハルバートを担いだ男がベアトリクスへ声を掛けてきた。


「なあ、お前かなり強えぇだろ? オレと組まないか? 先ずはそこで一杯奢らせてくれよ」


さらに進み出てきた…………


そうでした、こういう処でしたね。ギルドとは。

ふとユリアンを見ます。自分の女達が有象無象から声を掛けられている。それを許容するのかと……

ユリアンにも4人(たか)っていますね。

むしろ一番多い。流石です。皆も分かっているではないですか。この中で誰が一番魅力的なのかを。


あ、尻にさわろうとしている……女がいますね。

どちらからもモテるユリアン。


やっぱり素敵。


「無礼者! このお方から離れなさい!!」


おや、姫が衛兵を使って止めに入りましたね。

まぁ、良いでしょう。ここでワタシによる皆殺しは少々問題もありましょうし。



「全くもう、まだわたくしだって触れていないというのに……」


なにか言っていますね。

フフフ、あとで良いものを見せてあげますよ。楽しみにしていなさい。



城へ。そして貴賓室へ。


揃いの衣装を着ます。ベアトリクスやマグダもです。

ヴァン・ヘルムート王国、王立学院の女学生用制服に「全員」が身を包みます。勿論ワタシも。


エマといいましたか、エイダの専属侍女で、エイダの輿入れに付き添ってこちら側へ身を移した忠臣。


エイダの成長に伴い制服を新調する際、ユリアンを含めた全員の採寸をして全員分の制服を仕立てたのです。

ユリアンは最初戸惑いはしましたが、普段見慣れた制服なのでかは分かりませんが、直ぐに受け容れてくれました。


防音結界を張り、一度通しで合唱をします。

・翼を下○い

・第九(歓喜の歌)


ユリアンが歌詞とパート表を作り皆に配り、練習し始めたのは王都ユリアナを出た直後。ソラの背でたくさん練習してきました。

成果の披露は建国祭。

しかし何処かで第三者による経過確認はしたいと言っていたのでちょうど良いでしょう。


因みに第九は楽器不要だそうです。

第九……第一から第八もあるのでしょうか?

サブタイトルが「歓喜の歌」というそうですからそれで良いのでは? との問いに「いやぁ、やっぱり第九だよ」と、理由がわかりません。


通しで歌い終わり、結界を解除した直後に呼び出しがかかりました。


ユリアンと8人の女達。全員が同じ制服に身を包み食堂へ。


「まぁ! なんとステキな。それは制服ですか? あぁ、陛下……なんと尊い」


うむ、此奴(こやつ)も「分かっている」側のヤツよな。


食事をしながらドライリッターの話や国喰い旅団や魔獣討伐の話などして、食後の茶となる。

やや食休みを経てから、ユリアンが


「そろそろやる?」



皆で席を立ち、横並びとなる。


先ずはワタシとユリアンの子守唄から。相変わらず美しいしらべです。


そしてユリアンの伴奏付きの合唱、翼の歌。


最後に第九を大音量で歌い上げます。


この歌はなんだか元気が出ますね。

友や良き伴侶と共にというのが今のワタシにとても響きます。

創造神を讃え、存在を身近に感じさせる意図も好感が持てます。



さて、姫はじめ、給仕やメイド、高級官僚達は……固まっていますね。


ワタシ達は各々席に付き、再び茶を飲みます。冷めている……メイドは固まったまま。

仕方ないですね。


5分ほどもしてから侍従らしき初老の男が我に返り、


「も、申し訳ございません! お前達、お茶を」


途端に使用人達が動き出します。


「ユリアン様! あ、いえ、陛下! わたくしを、わたくしを是非にもお側仕えに! 伏してお願い申し上げます!!」


姫がテーブルに額を着き、乞い願っていますね。気持ちはわかります。

しかし……


「ごめんね、もうこれ以上増やすつもりはないんだ」


「ならば、せめて一夜のお情けを頂戴することを……」


「余計にダメだよ」


あぁ、泣き崩れましたね。

恐らくは貴族であろう官僚達の本心から憐れむ様は姫の人望の厚さを感じさせます。

亡くなった従者達への対応を見ても好ましいものでした。

優しく芯の強い、良き娘なのでしょう。


でもダメです。


良き娘を全て迎えていてはキリがありません。後宮に1,000人とか……

あり得そうなこと。


その後すぐ、部屋へ移動しました。

ユリアンは裸ではなく部屋着を所望です。

むぅ、ユリアンからの求めがあるまでコチラからの手出しはしない。

その取り決めはルサールカを通じてユリアンへも伝わっています。

致し方なし。

部屋着を……着替えを手伝いました。

ハンナとともに。


ユリアンはそれから1時間程読書をしてから(ねや)に着きました。

何と言うか……仕草がいちいち優雅ですね。

ユリアンとて貴族の生まれ。

作法や礼法は一通り身に付いています。

心身に余裕があればこその、本来の姿なのでしょう。つい目で追ってしまいます。


ふと周りを見ると皆も見ています。特にヘルガはウットリとした面持ちですね。

幼少時からの憧れの君ですからね。本来の貴族としてのユリアンこそが理想なのでしょう。

夢見た理想のユリアン。

その「本物」がそこにいる。


ワタシとしてはどんなユリアンでもそれがユリアンであれば存在そのものが理想です。

だから今のユリアンも当然……素敵。


ベッドの端に寝転がるユリアンを中央へと誘い、その左隣へ(はべ)ります。

右側にはハンナが。余の者は思い思いの場所へ。

ルサールカは憑依して消えました。

ワタシにも出来ないものでしょうか。憑依。

魂を繋げ、真の眷属となり、精神世界で剥き出しの魂でまぐわいとか……くっ、(たぎ)ります。

無い物ねだり?

いえ、いつか実現してみせます。

エルフの属名は精霊族。精霊と名付けられた以上、可能性はあるはず!


ん? ユリアン?

寝てしまったの?


今夜は求めてもらえなかった……


どうしましょう。これが1週間、いえ、3日間続いたら暴発するかも知れません。



どうしましょう。

我慢開始です。

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