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エピソード:ゼロ

はじめての投稿です。みなさまに受け入れられるのかどうかは分かりませんが、まずは楽しんで書いてゆきたいと思います。

どうぞよろしく。

 人知れず死んで肉体は環境へ還元される。


エントロピーにさいなまれた人体であった物質はグヅグヅに解れてさらに分解されて解き放たれてのち万物の(にえ)となるのだ。


人として生きたなかで(つちか)われた経験や知識はどうだろうか。

そこになにかしらの(まと)まりがあるとしたら……仮に魂と名付けられたそれはどうなるのだろうか。

やはり粉々に粉砕され周辺環境へ分散して消えゆくのだろうか。

視野はすでに塞がれて数舜前まで聞こえていた木の葉ささめく自然音も届かない。

未だ思考を続ける脳は酸素の供給が途絶えたはずの今もまだ事実の考察を続けている。

なんの感傷もなく。ああ、オレは死ぬのだ。


いや、死んだはずだ。

いつまでこんな思考を、いや、意識の持続を続けねばならないのか。

肉体からのレスポンスが一切ない完全に閉じられた漆黒と静寂のなか、狂うでもなくただあるがままに存在するだけの(うろ)

あるいは地獄的ななにかなのだろうか。

何かしらの宗教上の罪を一切合切(また)いで生きてきた自信はないし、むしろ踏みまくってきた人生だったと思う。


そうだな、犯した罪の数でも数えてこのどうしようもないヒマを潰してみるか。

これまでの人生の年月分くらい凌げれば幸いだ。



どれほどの時間が経過しただろう。

基点も基準もなく計測手段もないし体内時計も失われて久しい。

ただただ思考して在るだけの存在。

いや存在しているのかどうかも怪しい思念体。

体? うん、表現が非常に難しい「オレ」

未だ自意識を維持している「オレ」


哲学的思索はやりつくしたし、記憶を根掘り葉掘りして完全に忘れていたはずの、それこそチラ見しただけの商店の張り紙の詳細な内容までも掘り起こしながら思索のための材料をむさぼった。

教科書や手にしてきた書籍、テレビやラジオやネット記事。

その他様々な、認識すらしていなかったような情報の検索と分析を続けてきた結果、自然科学におけるある種の到達点にまで至った。多分ね。



自身の内で問答を続けたせいか並列思考ができるようになった。

ものすごく便利だ。

思索が捗る。

いやいや、なにかしらの到達点を目指している訳でもなく、目標もない。

ヒマつぶしという目的があるだけだ。

スピードアップや確実性向上を目指しているわけではない。

なので思索というタスクに並列思考の総ツッコミを止めて一方を他へ振り向けてみることにした。



この精神世界? の広さと構造の調査。

意味があるのかどうかも不明なそれはやってみるとなかなか興味深いものだった。

いくらかの広がりがあるのは知っていた。

だが実際に意識を広げてみるとやたらと広い。

まるでそこに空間があるかのように感じる。

感じる? あれ?なにかおかしい。

もとより漆黒と静寂の、我が主観の内のインナーワールド。

空間など在るわけがないだろう。

自己意識の維持のためにも思索は続けたままさらに探索を続ける。



ある時ふと思ったのだ。

空間があるならば物質もあるのではないか。

あるいは創り出せないのかと。

自然科学のある種の頂きへと至った思索を思念へと変換して強く念じた。

光あれと。



マジか、光、出た。

あとはもう創世記丸パクリで次々とあれやこれやを生み出していく。

生き物は自然発生不可っぽいのがわりと初期にわかっていたんでいろいろ誘導して創ったよ。

まずはアミノ酸物質から。


宇宙の、星の、海の、大気の創造。

そしてアミノ酸物質からの単細胞生物からのもろもろを経て魚類。

植物昆虫陸生動物、そんでロマンのかたまりダイナソー。

慌てずじっくりと腰据えて地球の再現を粛々とすすめてゆく。


ワクワクが止まらない。

ただ少しだけ不満がある。

触れないんだ。

自身に肉体がないことは勿論認識している。

精神世界内に生じた空間を発見し、物質を創造し、世界を造り上げたのではあるがそれらは本当に在るのかという疑念。

触れないからこそ確認も確信もできない目の前のそれはひょっとしたら想念のうちに形成された仮想現実なのではないのかと。


この命題は紀元前から地球でも議論され続けたものだ。

散々考えたあげく「我考えるゆえに我あり」をこの世界に当てはめて割り切ることにした。



とにかくだ、人に逢いたい。

自分(並列思考)以外と対話がしたい。

触れ合いたい、抱きしめたい、エッチがしたい。

もう、我ながらすごいと思う。

まだ性欲とかあるんだと。

厳密には思い出したが正しいのだけれども、もうワクワク期を通り越してドキドキ、キュンキュン期へと移行しつつある。



数億年を経てかなり地球に類似した生物の生態系が形成されてきた。自然に任せて猿っぽいのが誕生したときは大興奮したものだが、猿人から先への進化はなかなか進まず、しかもものすごく凶暴。

手先が器用でフィジカル熊ってくらい強くてヤバい。

個として強すぎて集団を作らないからコミュニティの形成など絶対に無理。

脳の容量もあまりふえなくて知能の高度化も望み薄。


地球でもミッシングリンクなんて話があったし、現生人類へ至る進化過程は実のところ分かっていないのが現実だ。

異星人が調整してこさえたなんて話もある。

なんだっけ、メソポタミアはシュメールのアヌンナキだっけ。

が、奴隷というか作業員というか、使役用に生み出したとかなんとか。

億年単位で思索してもわからないことを考えてみても仕方がない。

よし、創っちゃおう人類。


まずは「オレ」と対話が可能な高度な知能を有する超美形なおねえちゃんから行ってみよう。

かと思ったが、まずは試作して改善点の洗い出しとかしようか。


対比物がないゆえの結果としてやや小型の、知能と技能が高めの可愛らしい種をこさえた。

種族として存続させるために複数の男女を。

これで知生体としての人型生命体を思い通りに創造する技術を会得した。

次は本命の話し相手の創出だ。


で、生前見た諸々の造形物のなかで一番美しいと感じた某フィギュアをイメージした、耳の長い寿命も長い、知能と生存能力高めのめっちゃキレイなおねえちゃんを創造した。

この子も種族化するつもりなので複数人の男女をこさえた。

幼生体からのスタートなので先行して生み出した種族「ドワーフ」に育成を任せた。

そしてキレイなねーちゃんの種族は「エルフ」と命名した。

そのまんまだな。


やがて成長した本命のお話相手エルフはシルフィーネの固有名を与えられ「オレ」と交信(対話)できるスキルをもつこととドワーフが数世代を経てもなお若々しく美貌を維持し続けていることから何やら神格化されはじめていたりする。


で、肝心の対話なのだが、あまりに生真面目かつお美しい対応が染みつきすぎてなんかつまらない。

べつに猥談をしたいとかいうんじゃなくて、なんというか、笑いとか可愛らしさとかそういう………男にすればよかったのか?

いや、それも違う。

真面目野郎ならば結局同じだろう。



今にして思えばオレの望む対話相手とは……ちょっとおバカな若手の男子。

しかもやっぱり下ネタ話もしたい。

でも「オレ」とチャンネル合わせられる人材ってかなりハイスペックじゃないとなのよね。

情報量過多であるがゆえに。


うん、こちら側の目線を大気圏外から地べたまで引き下げよう。

その上で適度に愚かでそこそこ賢い、そんでエロい種族。

よし、普通の人間創ろう。


ただこの条件だと繁殖力が半端ないことになりそうだから人口調整弁てきななにかが必要だろうな。

うん、どうせファンタジー路線の種族が先行して在るのだから人類の天敵とかも創ろう。


強さの頂点にドラゴン。

次に力の申し子魔族。ケモ耳としっぽも欲しいよね、獣人族。

そんで「オレ」の代理人としてあるいは管理人として天人族。

で、「オレ」の触れ合い用アバタ―も創って人族へ紛れ込む。

スペックはぎちぎちに抑えてね。


さあ、楽しい愉しい新世界ライフの始まりだ。


って、こっからまだ数万年くらいかかるけど。

彼は主人公ではありません。

こうしてできた新世界創造のプロローグとしてご理解下さい。

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