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第09話 盗賊退治①

 借家から戻った俺はテーブルに二つの瓶を置いた。


「リヒトよ、これは何の薬じゃ?」

「はい。これはスリープポーションとスタンポーションで

す」

「スリープポーション? スタンポーション? 聞いたことねぇ薬だな」


 長とグレッグは瓶を手に取り中身を見ている。


「スリープポーションは相手を眠らせる薬です。振りかけても飲ませても効果があります。使用方法と量で眠る時間を調節可能ですね」

「ほうほう」

「スタンポーションも同様です。こちらは麻痺させますが、量を間違うと心臓まで麻痺してしまい死にますね」

「き、危険物じゃねぇか!?」


 グレッグは慌てて瓶をテーブルに戻した。


「そうです、危険物なんですよ。なので今回はスリープポーションを使います。村から離れた場所に罠として設置し、俺とガロンさんで気配察知を使って盗賊の動きを見ます。上手くいけば無傷で捕獲できます」

「なるほどな、罠か。薬師ならではの罠だな」

「グレッグ、隣の村まで何日くらい?」

「あん? そうだな、歩きで三日……時間がねぇな」


 あの子ども達がいる一行の足で三日だ。盗賊達の足ならもっと早いかもしれない。


「略奪した物資やらを吟味していたとして、多く見積もって一週間ってところか。逃げてきた村人が到着するまで三日、もうあまり時間はねぇな」

「長、隣村からこの村までで必ず通る道はありますか?」

「ふむ……グレッグ、ガロンとあちらの代表を呼んできてくれんか?」

「ああ、待ってろ」


 それからすぐにガロンと隣村の代表が会議に交じり話を進めた。


「わ、私達は子どもでも歩きやすい道を選んできましたのでなんとも」

「そうだな。だが盗賊が来るだろう道はわかるぞ」

「え? わかるんですか?」


 ガロンは腕組みしながらテーブルに置かれた簡易地図に隣村の代表が記した道を見て言った。


「盗賊のスキルに【足跡察知】がある。おそらく奴らは逃げ出した奴らの足跡を追ってくるはず。この辺りには街道がないからな。だからあえて逃がしたのだ。次の狩り場を見つけるためにな」

「わ、私達のせいでこの村まで! 申し訳ないっ! どう詫びたらいいかっ!」


 事の重大さに気付いたのか隣村の代表は真っ青な顔で何度も頭を下げている。


「なに、大丈夫だ。リヒトよ、道を聞いてきた理由はどうにかできるからなのだろう?」

「うん、まぁね。来る道さえわかればどうにでもなるよ」

「え? えぇ? どうにでもなるとは??」


 混乱する隣村の代表とガロンに俺の策を伝えた。


「スリープポーション……だと? なるほどな」

「俺とガロンさんで道の両側から挟撃しよう。グレッグは槍を構えて盗賊達の前に立ってくれる?」

「あん? それに何の意味があるんだ?」

「通り道に槍を持った筋肉ダルマがいたら一瞬でも警戒して足を止めるでしょ? 一瞬あれば俺達二人なら止まった的に矢を当てるなんて朝飯前だよ。ね、ガロンさん」

「そうだな。普段の狩りより楽かもしれんな。なにせ掠らせでもしたら敵は寝てしまうのだからな」


 策は決まった。あとは長次第だ。やはり村を捨てて逃げるか抗うか。全ては長の判断で決まる。


「盗賊は十人以上じゃ。二人でどうにかできるものなのかの?」

「俺達狩人のスキルには【速射】というスキルがある。俺もリヒトも使えるぞ長。それに万が一に備えグレッグの穂先にも塗っておけば仲間をやられ自暴自棄になった盗賊も倒せるだろう」


 ガロンはグレッグを見ている。


「わかった、やるよ。だがあまり期待すんなよ? 俺の本業は大工だからな? 槍の腕なんぞ見掛け倒しだ」

「任せろ。突然の襲撃からの混乱した特攻なんぞ俺達なら良い的でしかない。俺とリヒト二人いれば勝算しかない」

「はいはい。村を守るためだ、できることならなんでもやったらぁ」


 三人で拳を合わせると長が宣言した。


「わかった。では今の作戦で盗賊退治じゃ! 怪我はまだ良い、じゃが決して死ぬではないぞ! それだけは約束してくれいっ!」

「「「おうっ!!」」」


 作戦が決まったあと俺達三人はすぐ行動に移った。だが村を出る直前に隣村の代表が駆け寄ってきた。


「わ、私にも手伝わせてくれ!」

「あん? いや、大丈夫だ。俺達に任せておけよ」

「そうはいかない! 確かに私は戦えないが通ってきた道は覚えているっ! 確実に通るだろう道は俺が知ってるんだ! だから頼むっ! 何もしないわけにはいかないんだ!」


 その真剣な申し出にグレッグとガロンは折れた。


「わかった。道がわかれば作戦の成功率も上がる。ただしグレッグから離れるなよ。それと何か武器を構えておいてくれ」

「お、恩に着る! 私達のせいで迷惑をかけてすまないっ!」

「気にすんなよ。人は助け合って生きるもんだ。盗賊なんぞに負けてられねぇよ。なあリヒト?」


 初めての対人戦だ。だが俺の覚悟は決まっている。村人達の生活を守るためなら人間相手でも戦うと決めたら容赦はしない。情けをかけたら自分が危ないことは承知している。


「そうだね。懸命に生きる人達を脅かす奴ら相手に負けてなんかいられないよ。大丈夫、仇はとるよ」

「ありがとう……ありがとうっ!」

「さあ、行こう。まずは襲撃ポイントを探すんだ」


 ガロンを先頭に俺達は盗賊を迎え撃つための場所へと移動するのだった。

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