第64話 魔物使い、マスターになる
二十階層のボスは餓者髑髏だった。だがどうにも俺には見覚えがあった。
「……こいつさ、スケルトンキングじゃね?」
「リヒト殿! 私もそう思いましたが言ったらダメです! あれば魔物ではなく妖怪なのですから!」
「けどさぁ……」
見た目はデカくなったスケルトン。つまりスケルトンキングだ。エリンの迷宮で散々見た相手だ。違う部分があるとすれば両手に刃が欠けた日本刀を握っている所だろうか。
「つまんないしさっさと終わらせて次に行こう。【ターンアンデッド】」
《アァァァァァアァァァァ~……》
餓者髑髏はターンアンデッド一発で光の粒となり霧散した。
「……むごい」
「効いたな。やっぱりスケルトンキングじゃないか。がっかりだよまったく」
《主の魔法一発で消えたです~》
《ご主人は強いであるな!》
《強いポンッ!》
《コンコンッ!》
「た、タヌ吉が喋った! こっちの方が嬉しいっ!」
俺がタヌ吉を掲げくるくると回っている内にアヤメが現れた宝箱に向かい開けていたようだ。
「こ、ここここれは! まさか!」
「どうした? なんか良いもの入ってた?」
タヌ吉を地面に下ろしアヤメの背後に立つ。アヤメの手には一振りの刀が握られていた。
「ま、まだわかりません! リヒト殿、銘を確認してもよろしいでしょうか」
「ああ、気になるならどうぞ」
アヤメは自分の目釘抜きを取り出し目釘を抜くと器用に刀身を外し銘を確認した。
「長谷部國重……へ、へし切長谷部だっ! 失われた織田家の愛刀がなぜこんな所に!?」
「へし切長谷部……確か織田信長の愛刀……え? マジで!?」
見るとしっかり長谷部國重と刻まれている。歴史では信長が所持していた際は何も刻まれていなかった。後に長谷部國重本阿やら黒田筑前守とか刻まれたが、この世界にはいないのだろう。おそらく銘を刻んだのは信長だな。
「と、とんでもない物を拾ってしまった……ど、どどどどうすれば!?」
「落ち着け。アヤメが拾ったんだからアヤメが持ってればいいだろ」
「無理です! ジパン国を興した偉大な祖先の愛刀ですよ!? ち、父上に相談しなければ……! リヒト殿!」
「あ、はい」
アヤメは刀を抱きかかえ立ち上がると俺に頭を下げた。
「しばしお暇を! 父上にこの刀を届けて参りますゆえっ! しからばっ!」
「え? あ、ちょっ──行ってしまった」
アヤメは物凄い速さでボス部屋から出ていった。
「え? 俺置いて行かれた? 嘘だろアイツ!?」
《主~?》
《ご主人、どうしますか?》
「え? あ~……そうだな」
アヤメがどれ位で戻るかわからない。そもそも城がどこにあるかもわからない上、軍議もまだ始まらない。
「……先に進もうか。とりあえず一度転移魔方陣で戻って食事かな。キュウ太たちを連れて店には入れないし……そうだな、町で食材買って俺が作ろう」
《主、料理できるです!?》
「もちろんだとも。久しぶりに料理人マスターの腕前を披露してやろうじゃないか」
《ご主人の手料理とはっ! ご褒美ですな!?》
「よし、じゃあ一度戻ろうか」
二十階層のボス部屋を出て一度地上に戻った俺は市場に出向き片っ端から食材を買い込み塔に戻った。そしてもう一度転移魔方陣に乗り二十一階層へと続く階段の隣でキュウ太たちのために腕を振るった。
「キュウ太にはキュウリの浅漬けにキュウリの味噌汁な」
《うわわわ~! 僕の大好物!》
「シクルには木の実をふんだんに入れたパンケーキだ」
《こ、これを某のために主が! かたじけのうございますっ!》
「タヌ吉は雑食だからなぁ……とりあえず柿と蒸したサツマイモ、あとはバナナとリンゴを刻んで混ぜたフルーツミックスだな」
《美味そうポンッ!》
「で、コンには約束したきつねうどん!」
《コンッ!》
「さらにいなり寿司もセットだ!」
《コォ~ン!! はぐはぐはぐ──美味しいコンッ!》
コンは人化して器用に箸を使いうどんを啜っていた。
「今喋ったよなぁ……ははっ、可愛いなみんな」
全員に食事を与えたあとで俺は自分用に巻き寿司を用意したが、その半分はみんなにとられた。
《これキュウリが入ってるです!》
「かっぱ巻きな」
《むむっ、こちらは糸引く豆が!》
「納豆巻きな」
《こっちはなんか色々入ってるポンッ!》
「カリフォルニアロールな」
《リヒトさまの作るいなり寿司が一番美味しコンッ》
「油揚げ好きだねぇ」
みんなが満足してくれて俺の食事は減ったが満足だ。
「少し休んだら先に進もうか。もう少しで魔物使いもマスターだ」
食後の休憩を挟みいざ二十一階層へ。これまで和風の武家屋敷のような造りだったが、二十一階層からはまるで幽霊屋敷のような暗い場面に変わった。
「鬼火とか意思ないよなぁ。仲間にするのは無理そうだ。キュウ太、シクル。遠慮なくやっちゃいなさい」
《お~ですっ!》
《お任せあれっ!》
二十一階層は鬼火、二十二階層は煙々羅と、どうにも仲間にできなさそうな妖怪ばかりが続いた。だが出現する傾向から三十階層のボスがどんな妖怪か想像がつく。
「多分火属性のなにか……だろうな。あ、魔物使いマスターだ」
《主っ、階段あったです~》
「おぉ~、よくやったキュウ太! みんなも頑張ったな! 階段前でまた食事にしよう。三十階層のボスも油断せず倒していくぞっ!」
《《《お~!》》》
こうして魔物使いマスターとなった俺はアヤメ抜きで三十階層のボスへと挑みに行くのだった。




