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異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜  作者: 夜夢
第ニ章 躍動

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第53話 ギンジとアヤメ

 英雄ガレオンが全体をまとめてくれたので俺の出る幕はなかった。この時間を利用し、俺は侍のジョブを極めるために草原の魔物と鍛錬している。


「疾っ!!」


 抜刀術からの一閃。ホーンラビットが真っ二つになる。刀に付着した血を振り払い息を吐く。


「やっぱり剣道やってただけあって刀は使いやすいな。やっぱり日本人なら洋刀より刀だよ、うん」

「なんや、基本の動きできとるやん」

「え?」


 振り向くとギンジとアヤメが立っていた。


「どうしたんですか?」

「リヒト殿の腕前が気になってしまい後を追ってきたのです」

「せや。っちゅ~かあんさん、ワイと稽古するんちゃうんか?」


 俺はギンジに言った。


「稽古前に動きを身体に覚えさせようかなって」

「あかんあかん、変な癖がつく前に御剣流をやな」

「兄上!? 御剣流は門外不出の剣技ですよ!?」


 アヤメがギンジを止めようとする。だがギンジはそんなアヤメに言った。


「お前なぁ、リヒトに刀打ってもろたんやろ? 礼はしたんか?」

「え? い、いえまだ……」

「礼を欠いたらあかん。門外不出? んなもん知らんわ。見込みがありそうな奴を囲わんでどうすんねん。せやから廃れてまうんや」

「廃れる?」 


 ギンジは溜め息を吐いた。


「御剣流っちゅうんはワイら御剣家の祖先が開いた流派でなぁ。ワイは親族しか習えんっちゅうしきたりが嫌いでの。ワイは女に興味はない。子を残す気もない。そんでアヤメはなぁ?」

「……なにか?」


 アヤメは兄ギンジを睨んでいる。


「アヤメもなぁ。ワイを見て育ったせいか剣術バカに育ってもうてなぁ……。親父が武者修行の体でアヤメを外に行かせ婿探しさせるくらいにはもう廃れてもうとるんや」

「兄上!? それは誠の話なのですか!?」

「おう。お前が婿を見つけ戻ったら御剣流当主はアヤメや。ワイは気ままに己の剣を極めるためだけに生きる。で、やな」


 ギンジはニヤニヤした表情で俺を見てきた。


「リヒトはなぁんか雰囲気があるんよなぁ」

「ふ、雰囲気?」

「ワイらの故郷、エイジア大陸でも端も端の島国ではな……【和】っちゅぅもんを尊重するんや」

「和ですか。なんか……わかります」

「アヤメがリヒトを気に入っとるのもわかるわ。悪魔なんぞサクッと滅してガッツリ御剣流を仕込んだる。そんでいつか一緒に蕎麦でも啜りたいの」

「蕎麦? 蕎麦があるんですか!?」


 俺は食い気味にギンジに迫った。


「お、おぉ? どうした?」

「蕎麦! こっちにはいくら探しても蕎麦の実がなかったんですよ! あぁ……蕎麦! 山菜をのせた山菜そば……卵を落とした月見そば……お揚げをのせたきつねそば! あぁ……思い出したら無性に食べたくなった!」

「く、詳しいんやな」

「まさかリヒト殿が蕎麦を知っていたとは……しかもそこまで好きだなんて。こちらではいわゆる和食は広まってなかったかと」


 和食。和を重んじる国ならではの料理。魂からこの身に染み込んでいる。今ある食材から作る似非和食とは違う本物の和食。それか二人の故郷にはある。そう思うと感情が溢れてしまった。


「悪魔を滅ぼす力を俺に下さい! 俺は和食のためならなんでもします!! もう身体が限界なんです!」

「か、身体?」

「寿司……山葵……醤油……味噌! ありますよね!?」


 俺の勢いに飄々としていたギンジがたじろぐ。


「く、詳しすぎないか? 寿司なんてマイナーもマイナーやで? 大陸の人間は生魚食わんやないか」

「そう! 食わないんですよ! エリンは内陸だから生魚もないんです! 貝料理も作れないし鰻もいなくて……」


 鰻にギンジが反応を示した。


「お、お前鰻知っとるんか!? 大陸の人間は食わん魚やで?」

「アレを食わないなんてあり得ない……行きましょう! 悪魔を倒せる手段を教えて下さい!」

「……やれるんか? あのガレオンを上回れるんか?」

「対悪魔では退魔師が最強かと! 祈祷師がいないので俺はなれないですが」


 ギンジは俺の言葉の端をとらえ詰めてきた。


「リヒト、お前何か隠しとるな? ワイにはわかるで」

「わかりますか」

「おう。アヤメが気に入ったのもわかるわ。良かったら話してみぃひんか?」


 ギンジの言葉にアヤメも食い気味に詰めてきた。俺は目立ちたくないという思いより和食を腹いっぱい食いたい方に傾き秘密を全て吐露していった。


「お、お前異世界人やったんか!? なるほどどうりで……」

「ま、まさかリヒト殿が我が御剣流の開祖と同じ異世界人だてなんて!」

「え?」


 アヤメが説明を始める。


「我が流派、御剣流は異世界からきた侍を祖とする流派なのだ。祖は人を殺すだけの剣より人を活かすための剣を主としたそうだ」

「活人剣ってやつですね」

「なんで知っとんねん」

「自分がいた時代は戦はなかったんですが、歴史を伝えるツールが豊かだったので。あと、ギンジさんたちの国を興した方も多分俺と同じ世界の方です」


 それに二人は驚きの声をあげた。


「魔王信長が!? お前さんの世界の人間なんか!?」

「驚いた……まさか魔王と同郷なんて!」

「時代は違いますがね。魔王が暴れてた時代から四百年ちょっと先の時代で生まれたんですよ」

「はぁ~……そんなことあるもんなんやなぁ」


 俺は二人に言った。


「この戦いが終わったら二人の故郷にいきたいです。だから戦う力を教えて下さい!」

「ははっ、任せいっ! アヤメの婿として申し分ないリヒトは逃さんで!」

「あ、兄上! なにを!?」


 アヤメは顔を真っ赤にしギンジに斬りかかるのだった。

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