第50話 再会
アヤメが去った後、俺は元バッカスで色々と試行錯誤しながら自分用に刀を打っていた。
「もしかしたら……これ最強の刀なんじゃなかろうか……」
俺はミスリルを心鉄にし、皮鉄に緋緋色金を使うというとんでも武器を作り上げた。鍔や柄頭などには金鉱石を使い、鞘は贅沢に緋緋色金を使用、見た目も豪華な魔法刀が完成した。
「ぐふっ……ぐふふっ。これがあれば幕末最強の志士やら幕末の亡霊のような必殺技を……げふんげふんっ!」
つい妄想が膨らんでしまった。
「っていうかそろそろ迷宮攻略に戻ろうかな。コロネも暇してるだろうし。それに……日本人なら侍を極めたいよな! おっと刀に銘を掘らないと」
俺専用の刀は緋色の刃に青い上身にちなみ【緋翠】と命名した。
そうして完成した刀を自慢するように腰に下げ城に向かっていると思いもよらなかった人物たちとすれ違った。
「え? ガロンさん!? それにグレッグ! そ、それにクライスさんまで!?」
そう叫ぶとガロンは馬を止め振り返った。
「リヒトか! ちょうどいい! 俺たちを城に案内してくれ! 一大事だ」
「い、一大事?」
「話はあとだ。時は一刻を争うのだ」
「わ、わかりました!」
俺は先導し三人を城門前まで引き連れ戻った。
「お帰りなさいませリヒト様。後ろの方々は?」
門番が俺に尋ねると荷台にいたクライスが門番に告げた。
「至急陛下にお伝えしなければならない件が! エイズーム王国は……滅びましたっ!」
「「「は!?」」」
門番と一緒に俺まで驚いた。
「エイズーム王国が……滅びた? な、なぜ?」
「知恵の勇者だ……っ。あいつは人間じゃない……悪魔だったんだ!」
「あ、悪魔? 光の勇者たちは?」
「光の勇者はおそらく迷宮で奴に殺られた。青と博愛は勇者とは名ばかりのそこそこ強いだけの人間でしかなかったんだよ」
「えぇぇ……」
クライスは言った。
「あの悪魔は王都を火の海にしやがったんだ。エイズーム王国はもう終わりだ……っ。俺は隣国のエリンに知らせるためにきたんだよ」
「クライスさん……。わ、わかりました。とりあえず報告に向かいましょう。門番さん、通して下さい」
「「ははっ!」」
馬を門番に預け三人を連れて謁見の間に急いだ。そこでクライスから詳細を耳にした陛下は頭を抱えた。
「な、なんということだ……。あのエイズーム王国がたった一体の悪魔に滅ぼされたとは……」
「私達はとんでもない者を召喚してしまいました……。奴の正体は別の世界からきた悪魔だったのです。目的はわかりません……。そして唯一対抗できそうだった光の勇者も……!」
陛下は俺に視線を向けた。
「リヒト殿は……言ってもよいか?」
「えぇ。ここにいるみんなは知ってます」
「そうか。ではリヒト殿は召喚された勇者たちを知っているのか?」
「いえ。俺は一番最後に召喚され、その場で追放されましたので。あと、俺がいた世界の人間ではないですね」
「情報が足りぬか。くっ、せっかくリヒト殿のおかげでグロウベルと同盟が成ったというのに……!」
「え?」
今度はクライスが驚いていた。
「リヒト、お前……ず、ずいぶん信頼されているな」
「へ? い、いやぁ~……その……」
「ん? なるほど、知らぬのか。リヒト殿は凄まじい力を持つ冒険者なのだよ。今は我が娘とパーティを組み古代迷宮に挑んでおる。先日などは大量のミスリルを手に凱旋してきてなぁ」
「ミスリル!? は? リヒトが冒険者!?」
クライスは顎が外れそうなくらい大口を開けて俺を見た。
「嘘だろぉ……。最初会った時は世間知らずの坊っちゃんだったのに」
「あはは。アレはそう装ったんですよ。エイズームの王を見た瞬間身の危険を感じましてね。ジョブは見えなかったようですし、スキルも見られなかったので隠しました」
「スキル……。そうか、スキルがレアだったのかお前!?」
「ですね。それより……」
俺は召喚された場を思い出した。
「青の勇者と博愛の勇者は死にましたか。そして光の勇者も殺されエイズーム王国も……」
「ああ」
「ひとつ聞きますが、あの召喚って元いた世界に帰せるものなのですか?」
クライスは俯いた。
「わからない。召喚方法を知る陛下も宰相も全員死んだからな。俺みたいな下っ端騎士は何も知らないんだ」
「そうですか。それともうひとつ。敵は知恵の勇者だった悪魔一人ですか?」
「いや。奴は魔物を操っているようだった。あ! これは聞いた話だが……奴は城内の図書館で調べ物をしていた」
「調べ物ですか」
「ああ。司書によると魔王や魔族が封じられている北の大陸のこと、時空魔法のことを調べていたようだ」
クライスの話を聞き考えた。
「北の大陸……時空魔法……それに魔物……。あの、もしかしたら目的わかったかも」
「「「なに!?」」」
俺はこれまで得た情報をもとに仮説を立てた。
「知恵の勇者は魔物を操る悪魔だった。時空魔法は過去の勇者が張った次元結界を解除もしくは破壊するもので、知恵の勇者の目的は魔王や魔族を解き放つことなんじゃないかな」
「なん……だと!? そんなことはあってはならん! 世界が再び闇に落ちてしまうっ!」
「王都を火の海にするほどだ、悪魔らしく人が苦しむ姿を見ることが喜びなんじゃないかな。魔王を操り世界中に不幸を撒き散らす、それが目的だと思う」
謁見の間にいた全員が絶句している。
「バカな……。このままでは世界は終わってしまう! リヒト殿、どうにもならないのか……っ」
「唯一対抗できそうだった光の勇者でも死んだ。俺程度じゃ相手にもならないかと」
「……こうしちゃおれん。急ぎグロウベルへ使者を! あの国もエイズームと隣接しておる! それと近隣諸国にも馬を走らせよ!」
陛下の号令で騎士たちは慌ただしく動き始めた。
「リヒト殿、すまぬが迷宮は後回しだ。悪魔が来訪せんとも限らぬ。力を貸して欲しい」
「微力ながら手伝いましょう。知恵の勇者も俺を嘲笑い追放に加担してましたからね。わからせてやりますよ」
するとグレッグが俺を見ながら言った。
「お前わからせるって……どうすんだよ」
「いやぁ、ちょっと新しく武器を作ったもので。これなんだけど」
俺は腰に下げていた刀を抜き刃を見せた。
「な、なんだその剣? いや、剣か??」
「これは刀っていう武器なんだよ。ミスリルをベースに緋緋色金の刃をつけためちゃくちゃな武器なんだ」
そこにコロネが飛び込んできた。
「ちょっと! 話は聞いたわよ! って……なによその武器! ちゃっかり自分だけ装備新しくして!!」
地団駄を踏むコロネのおかげで緊迫した空気が霧散したのだった。




