第46話 グロウベルからの使者
迷宮から戻り一日ゆっくりと休みルールーの鍛冶屋に精錬した鋼や銅などを卸した。
「こ、こんなに買い取れないって!」
「ツケでいいよ。お金はあるしさ。あと、明日から首都にいってくるから」
「首都に? 何か用事でも?」
「ああ、これを献上しにな」
俺は精製したミスリル板をチラリと見せた。
「こ、ここここれ! ミスリル!?」
「運がよかったら迷宮の二十二階層で手に入るんだよ。あ、俺達まだ二十一階層までしか攻略してないことにしてるから黙っててくれよ」
ルールーはマジックバッグに戻されたミスリル板を目で追っている。
「すると精霊炉が必要になるわね」
「アテはあるの?」
「あるっていうか……うちで使ってる火は精霊の火よ」
「え? そうだったのか!?」
俺は驚き声を上げた。
「お父さんが召喚士だったからね。火は一度も絶やしてないもの」
「ルールーは召喚できないのか?」
「できるわよ? ただ……まだサラマンダーは呼び出せないの。下位の火トカゲは呼び出せるんだけどね。それでも精霊の火だし十分なの」
「へぇ~。あ、じゃあ聞くけどさ」
俺は精霊についてルールーに色々と尋ねた。
精霊は召喚士レベル10で下位精霊を召喚でき、レベル20で中位精霊、マスターで上位精霊を呼び出せるらしい。呼び出す際には大量の魔力を消費する。魔力が足りないと召喚は失敗し精霊以外の何かが召喚される。何がくるかは完全にランダムなのだとか。
「ランダムなのか。狙って呼び出せないのか?」
「私も聞いた話だからそこまで詳しくはわからないのよね」
「そっか、ありがとう」
あとでルナに聞いてみよう。
「ねぇ」
「ん?」
「出しなさいよ。持ってるんでしょミスリル」
「あるにはあるが……金ないんだろ?」
「そのお金を作るためにミスリルが必要になるんじゃない。少しあればいいのよ」
俺は自分でミスリルナイフを作ったがあの使い方が正しかったかどうかはわからない。
「少しのミスリルでどうするの?」
「ふっふっふ。ミスリルを芯にして鋼で覆うのよ」
「ふむふむ」
「グリップをミスリルにして魔力を流せば魔法剣になるの」
「ふむふむ……な、なにっ!? 魔法剣!? ミスリルにそんな使い道が!?」
ルールーは目ざとく俺の腰に下がっていたミスリルナイフを見つけて言った。
「それ、鍛造でしょ。芯にするやり方は鋳造よ。私が作る剣はガワが鋼だから切れ味抜群な上に魔法まで乗るわ。高いわよ~」
「俺は精霊の火もなかったから迷宮で無理矢理作ったからなぁ。そっか、そんなやり方があるのか」
「まだまだね~。ほら、ミスリル出しなさいよ。あんた口剣、帰るまでに作っておいてあげるから」
「い、良いのか? 最初の剣もまだ使えるのに」
俺はルールーに打ってもらった剣をマジックバッグから取り出した。
「これから先もっと魔物は強くなるでしょ。その剣じゃ無理よ。刃が通らないし、貸して」
「あ、あぁ」
ルールーは鞘から剣を抜き刀身を見る。
「うん、手入れはされてるけどもう危ないわね。硬いモノでも斬った?」
「あ、あぁ。ゴーレムとか岩系の魔物を」
「剣が悲鳴あげてるわよ。これじゃいつか折れるわ」
「そっか……。大切に使ってきたんだけどな」
ルールーは剣を鞘に戻しテーブルに置いた。
「もっと先を目指すなら強い剣を持たなきゃ。こんなとこで立ち止まる気なんてないんでしょ?」
「それは……」
目立ちたくない、のんびり暮らせればそれで満足。だが迷宮に潜り迷宮の楽しさを知ってしまった。初めて知識を吸収する以外のことに心から興味を持つことができた。それこそ何のしがらみもなかったらずっと迷宮の中にいたいくらいだ。
「そう……だね。もっと迷宮に挑みたいかな」
「なら武器は大事よ。武器は命を預ける相棒なんだから」
「うん、わかった。ならお願いするよ。俺にミスリルソードを作ってくれ」
「任せて。最高の剣を作るからね!」
ルールーにいくつかミスリル板を渡し、翌日俺とコロネは首都に向け移動を始めた。
「まずはミスリルゴーレムの手足を渡して~。あとはなんだっけ?」
「グロウベルだろ。陛下に頼んでグロウベルに使者として向かうの、俺が」
「あぁ~それね。無理だと思うけどな~」
ここまで無理だと言われると逆に燃えてくる。基本天邪鬼なんだ俺は。
どうやってグロウベルとど同盟を結ぼうか考えながら首都に向け移動した。
そうして様々な手段を考えながらコロネと共に王城に入るといきなり騎士たちが俺たちを取り囲んだ。
「な、なんだ!?」
「リヒト様! まさか今日いらっしゃるとは!」
「え?」
「陛下の命にて宿場町までお迎えにあがるところでした」
「は?」
「ささ、お急ぎ下さい。グロウベルからの使者がいらっしゃってます!」
「え? え?」
俺はわけがわからないまま謁見の間へと運ばれた。そして謁見の間に入ると両陛下と見知らぬ女、いや男かわか、ないが中性的な人物が立っていた。
「な、なんなんですかいったい!?」
「リヒト殿! なんというタイミングだ! 使者殿、あちらがリヒト殿だ。リヒト殿、こちらはグロウベルからの使者で名は【アヤメ】殿だ」
陛下の紹介を受けた使者アヤメが俺を見た。腰には見るからに日本刀、装いもザ・侍。まさかこの世界に着物があるとは思わなかった俺は驚いた。
「そちらが話にあったリヒト殿ですか。はじめまして、私は海洋国家グロウベルの食客アヤメ・ミツルギと申します」
「食客? え、あ……リヒトと申します」
差し出された手を握り会釈する。
「……なるほど。握手がわかりますか」
「え?」
「だいたいの方は握手の意味もわからず手をとり跪きながらキスをされるのですがね」
「あ! い、いやこれはそのっ! いぎっ!?」
握られた手に力が籠もった。
「あなたには色々と聞きたいことがあります。陛下、この者をお借りしても?」
「もちろんだとも! これでグロウベルが交渉のテーブルについてくれるならな」
陛下の背後を見るとバトラーがおり申し訳なさそうに頭を下げていた。
「ちょっとアンタ! リヒトはわた──かひゅっ!?」
「失礼、コロネ様はお疲れのようで。誰か、コロネ様を私室に」
「「はっ!」」
バトラーに首トンされたコロネは気絶し部屋へと運ばれていった。
「あの、これはいったい……」
「リヒト殿。アヤメ殿はリヒト殿に興味をもたれたようでな」
「俺ですか? な、なぜ?」
「錬金術師組合関係だ。最初リーフ殿を召還したのだがな。そこでリーフ殿がやらかしてしまい……」
なにをしたんだリーフは。
「そう警戒なさるなリヒト殿。私はリヒト殿の知識に興味を持っただけなのだ。話をさせていただけたあかつきにはエリンとグロウベル、五分の同盟を結べるように助言いたそう」
「五分!? イシュタル帝国に勝ったグロウベルと国とは名ばかりのエリンが五分!?」
「名ばかりとは言ってくれるなぁリヒト殿?」
焦った拍子に本音が漏れ陛下に睨まれてしまった。
「話がうますぎる。狙いはなんですか」
「ふっ。この場では語れないとだけ。どうだろう、話し合いの場を設けさせてはくれまいか」
アヤメからはなにやら必死さ感じた。俺はどうするか迷ったが両陛下に加えバトラーにも頭を下げられたのでアヤメと話し合いの場を設けることに頷くのだった。




