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異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜  作者: 夜夢
第ニ章 躍動

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第45話 エリンのために

 宿場町に戻りギルドに向かう。


「アクア、今戻った」

「リヒト様! コロネ様も! ずいぶん長く潜りましたね~。何階層まで攻略しました? まさか現在の最高到達階層の二十階層攻略しちゃいました?」

「え? 最高到達階層って二十階層なの? 私達二十か──んむぅぅぅっ!?」


 俺は慌ててコロネの口を手で塞いだ。


「ど、どうされたんですか?」

「い、いや。コロネ、ちょっと」


 俺は暴れるコロネをギルドの隅まで引きずった。


「な、なにすんのよ!」

「ちょっと静かに。いいかコロネ、俺たちの最高到達階層は秘匿しておこう」

「なんでよ」


 俺は声を潜めコロネに理由を告げた。


「まず目立ちたくないのが一つ。それと情報は宝だ。二十階層まで攻略したと知られたら攻略に行き詰まってる冒険者たちに根掘り葉掘り聞かれるぞ」

「そ、それは嫌ね」

「まず冒険者たちを捌く時間がもったいない。そしてミスリルが大量に出回るようになれば売却する際の値段もガタ落ちだ。下手したら国外に流れる可能性すらある。十二階層なら僅かしか手に入らなかっただろ?」

「た、確かに!」

「特にミスリルゴーレムの四肢だ。コロネにはまず真っ先にこれを陛下に献上してもらわなきゃな。長く潜ってたし一度顔を見せに帰った方が良い」


 大層な理由をつけたが最大の理由はただ目立ちたくないだけだ。


「そっか。ミスリル持っていかなきゃね。それに教えたとこで草原エリアはだんだん広くなるから攻略に時間かかるもんね。アンタ以外は」

「ああ。俺達と同じ速度で攻略できるパーティはいないだろう。だから少し休もう。久しぶりに首都でゆっくりしたらどうだ?」

「いいわね。リヒトもくるでしょ?」


 特に行く理由は──あった。


「ああ。錬金術師組合に顔を出さなきゃいけないからな。あと、戦争が終わった今どうにかグロウベルと国交を結んでおきたい」

「なんで?」


 首を傾げるコロネを見て呆れた。


「お前な……。イシュタル帝国がなくなった今エリンと接してる国は海洋国家グロウベルとエイズーム王国しかないんだぞ。グロウベルと同盟を組めればエイズーム王国はエリンに手出しできなくなる。忘れたのか? エイズーム王国には召喚勇者がいるんだぞ」


 言われてようやく気づいたのかコロネは慌てふためいた。


「ゆ、勇者ね! もちろん覚えてるわよ。そっか、エイズーム王国か」

「あの国は国王が強欲だろ。エリンでミスリルが採れるとわかったら兵を送ってくるぞ。そうなる前にグロウベルと繋がっておきたい。イシュタル帝国さえ倒せてしまうグロウベルとな」


 しかしコロネは浮かない表情を浮かべ言った。


「グロウベルは味方してくれないわよ。あの国は自分の国を守ることでしか戦わないもの。他国の戦争には絶対に干渉しないわ」

「だからこその同盟だ。言っちゃ悪いが今までのエリンには攻める価値も守る価値もなかった」

「ぐぅっ」


 コロネの口からはぐうの音しか出ない。


「だがもう違う。錬金術師組合はどの国にもない化粧品を。古代迷宮からはミスリルが手に入る。グロウベルが守るに値する価値は出たと思うんだよな」

「た、確かに!」

「迷宮に挑んでいる冒険者たちはまだしばらく俺達に追いつけないだろう。この期間にエイズーム王国からエリンを守るためにグロウベルと繋がっておきたいんだ」


 コロネは真剣な表情で俺を見て言った。


「そうすればエリンのためになるのね?」

「ああ。交渉次第ではイシュタル帝国の領土も割譲してもらえるかもな。小国エリンを豊かにできるはずだ」

「わかったわ。一度首都に戻りましょう。お父さんたちと話をしなきゃ」

「ああ。一日休んだらすぐ向かおう」 


 ギルドには十二階層までと報告し俺たちは渡り鳥の止まり木亭で疲れを癒した。


「で? 本当のとこは何階層なのよ」

「な、なにを言ってるのかわからないな」

「あなたがあれだけ潜って一階層しか攻略してないわけないじゃない。私にはわかるわ。何階層まで攻略したのよ」


 コロネが部屋に戻ったあとアクアに詰められた。


「はぁ。誰にも言うなよ。二十階層を攻略した」

「はぁぁっ!? 早すぎない!?」

「俺のスキルだ。ランダム階層だけど階段の位置がわかるんだよ」

「ズルじゃん!? 十二階層に挑んだ冒険者パーティが言ってたわよ!? 十一階層は草原フィールドで罠はないけどだだっ広い。十二階層は洞窟エリアだけど罠だらけだって」

「それを交互に繰り返すんだよ。だんだん広くなる上に魔物も増えていくんだよ」


 アクアの手からジョッキグラスが落ちた。


「はぁ。でも二人でよく攻略できたわよね」

「コロネはああ見えて強いからな。時間がかかったのは周回してたからでそれがなかったらもっと早く帰ってきてたよ」

「……真剣に攻略してる冒険者たちが可哀想に見えてきたわ」

「俺たちだって真剣だよ。ただ迷宮攻略に有用なスキルがあるかないかの差だよ」

「その差がぶっちぎりなのよ。マジックバッグもあるし」

「それに関してはマジでありがたい。あ、そうだ。しばらく首都に戻るわ」

「え? なんでまた」


 俺はコロネに話した内容をアクアにも伝えた。


「グロウベルと同盟? いや、無理でしょ。エリンなんて歯牙にもかけてもらえないって」

「上手くやる自信はあるよ。これはエリンを守るために必要なことだからね。のんびり暮らすためにも今頑張る必要があるんだよ」

「あんた口だけは上手いからね~。なんかいつか王様にでもなってそうだわ」

「そんな面倒な立場は願い下げだな。俺は陰で支える方が性に合ってるよ」

「裏で国を操るフィクサーとか」

「操らないってば。精々助言程度だっての」


 その後迷宮の話を交えながらアクアと仕事を終えたファルコと三人で夜が更けるまで話をするのだった。

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