第40話 仲間
森での二度目の立ち合いは勝敗を競うというよりはお互いが持つ力のぶつけ合いとなった。
「はぁはぁ……や、やるじゃない。まさかデュオ・ア・ピアチェーレまで凌ぎきられるなんてね」
「だいぶお疲れのようだけど休憩挟むか?」
「まだまだよ! それに防いでばかりじゃ私は倒せないんだから!」
「ならそろそろ俺から攻めるとしよう」
俺は盾を収納し両手に剣を持ち替えた。
「はぁ? あなたね、双剣士でもないのに両手に剣持ってどうする気?」
「もちろん、こうするっ!!」
「なっ!?」
素早く距離を詰め連撃を放つ。
「これはっ! 双連撃っ! 双剣士のスキルをなんでアナタが!」
「俺も双剣士だからだよ。ほら、休んでる暇ないよ?」
「はっ! このぉっ!!」
コロネは同じ技を繰り出し防ごうとした。だが技は同じでも重さが違う。俺が軽く放った一撃でもコロネは全力で受けなければ打ち負けてしまう。
「速さは勝ってるのに! 重いっ!」
「勝ってる? ならスピードアップだ」
「ちょっ! さらに速くなるなんてっ!!」
戦士の腕力とシーフの素早さで双剣士の技を放つ。コロネのスタミナはガンガン削られているようだ。受け続けながら息も絶えだえだ。俺は連撃を止め距離をとった。
「大丈夫?」
「ぜぇっぜぇっ! 負けない……っ、私は負けないんだからぁぁっ! デュオ──あっ!」
奥義を放とうとしたコロネは足がもつれ顔から地面にダイブした。
「もう奥義も放てないようだね。スタミナ切れってとこか」
「負け……負けないんだか──あ」
俺はコロネの首に切っ先を突き付けた。
「負けだよコロネ。認めろよ」
「……やだっ! 負けてない! まだ負けてないもん!」
よほど諦めたくないのだろうか、コロネは涙を流し始めた。
「もういいんだって。コロネの力は十分わかった。組むよパーティ」
「……え? く、組んでもらえるの? わ、私と……冒険者パーティを!」
「ああ。正直王女だからって舐めてた。けどここまで戦えるんだ、コロネは立派な冒険者だよ。絶対服従はお断りだけどね」
コロネは頭を下げ宣言した。
「……私の負け……でいい」
「バトラーさん」
「は、はっ! 勝者リヒト様!」
俺は剣を納めマジックバッグからポーションを取り出した。
「ポーションだ、飲んでくれ」
「あ、ありがと」
「あと、はいハンカチ」
「ハンカチ?」
「鼻血出てる」
「うっ……」
頭から地面にダイブしたからか、額は赤くなり鼻からは血が垂れている。コロネはポーションとハンカチを受け取った。
「はぁ……負けたかぁ~」
「ご立派でしたぞ、コロネ様」
バトラーが駆け寄りコロネを支えた。
「リヒト様は強かったですか?」
「ええ。強かったわ……。同じ双剣士でもまるで別物よ。あれで魔法も使えるんでしょ。最初から勝ち目なんてなかったのよ」
「コロネ様……」
俺は二人の前に座り言った。
「それなんだけどさ。実は迷宮に……」
俺はコロネに迷宮で手に入るジョブの書の話をした。すると落ち込んでいたコロネの瞳に輝きが戻ってきた。バトラーもジョブの書については知らなかったのか驚きの表情を見せている。
「そんなのあるなんてズルい!」
「ランダムでジョブが手に入るアイテムですか。しかも初回攻略時のみとは……」
「めちゃくちゃ低確率でだけどね。この前も百周して虹色の箱は二つだけだったし」
バトラーはなにやら思い当たる節でもあるのか口を開いた。
「確かに虹色の宝箱は出ますな。しかし十階層という浅い階層で出るなど聞いたこともありません。ちなみに中身は? 虹箱ならば高価なアイテムが入っていたのでは?」
「うん。実は……」
虹色の宝箱には金貨らしき物が入っていた。それは俺が知らない金貨だったのでバトラーに見せたが、金貨を見たバトラーは固まってしまった。
「そ、そそそそれは……虹金貨ではありませんか! し、しかも十枚も!?」
「虹金貨? 金貨の一種なの?」
「え、えぇ。それは一枚で白金貨百枚分の価値がございます」
「……へ? こ、これ一枚で白金貨百枚!?」
白金貨は一枚で百万円の価値がある。それが百枚分となるとその価値は一枚一億円。それが十枚あるので十億円が今俺の手に乗っている。
「あ。あばばばば! た、大金じゃないですか!?」
「大金でございますな。ちなみエリンの国家予算はそれ一枚でございます」
「凄いじゃない! つまりリヒトはエリンの運営費十年分のお金持ってることになるんだ~」
「……驚きましたな。確かに迷宮で金貨は手に入りますが……これが古代迷宮でございますか。挑むだけの価値は十分にございますな」
俺は震える手で虹金貨をマジックバッグに戻した。
「で、でも百周しなきゃだし。しかも十階層まで潜らなきゃだし」
「それでもパーティ四人で潜り山分けしたとして一人白金貨二十五枚。経費を除いたとしても老後は安泰でしょうな。命を賭けるだけの価値はございましょう」
全部見せたのは失敗だったかもしれない。一枚だけにしておけば良かった。
「リヒト、私もボス倒せるかな?」
「え? まぁ……ボス部屋まで行けたら倒せると思うよ」
「バトラー! 私頑張って稼ぐからね! 国のために頑張るわっ!」
「コロネ様! ご立派にございますぞっ! リヒト様!」
「は、はいっ」
バトラーはスッと立ち上がり頭を下げた。
「どうかコロネ様をよろしくお願いいたします。我儘で無鉄砲で時には理不尽に暴れますが思いやりのある素晴らしい御方なのです!」
「ずいぶんな物言いね、バトラー?」
バトラーはさらに続けた。
「私の役目をリヒト様にお譲りいたします。北の戦が終わりこの国も忙しくなるでしょう。私は陛下の執事に戻ります。コロネ様、これからはリヒト様を頼って下され」
「言われなくても……な、仲間だしっ。迷惑はかけないようにするわ」
「俺も……ちゃんと守りますので」
「ほっほ。さあ、宿場町へと戻りましょう。パーティ結成記念です。祝杯をあげましょうぞ!」
それから宿場町に戻り渡り鳥の止まり木亭で宴会を開き、コロネとこれからの未来について語り合ったのだった。




