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異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜  作者: 夜夢
第一章 始まり

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第36話 コロネの秘密

 森へと向かう最中、バトラーが俺に話し掛けてきた。


「コロネ様の件で陛下よりリヒト様にならば全て話しても良いと賜って参りました。リヒト様にはぜひとも我が国の過去を知っておいていただきたいとのことです」

「わかった、全部聞くよ」


 バトラーは先を歩くコロネの背を眺めながら口を開いた。


「コロネ様と弟君は隣国へと嫁いだ両陛下の実子【マーリン】様の子にあたります。十年ほど前、突然の病に倒れたと隣国より知らせがあり、帰らぬ身となられました」

「そう……だったんですか」

「はい。嫁ぎ先の国は元々エリンとは国交がなかった国でしてな。マーリン様はエリン国を想い、隣国へと嫁ぎ国交を開いたのですが……」


 バトラーから殺気が漏れ出した。


「かの国はマーリン様が亡くなったその日の内にコロネ様と弟君をエリンに送り返してきたのですよ。国交断絶の書簡と共に」

「国交断絶? そんな……」

「両陛下は大変心を痛められました。病弱だった王妃様との間にできた唯一の子を亡き者にされ、孫を粗末に扱われたのですからな」

「亡き者にされた? 病ではないのですか?」


 バトラーは首を横に振った。


「マーリン様は真実をコロネ様の意識に潜ませておりました。マーリン様は催眠術師でもあったので」

「催眠術師ですか」

「ええ。トリガーはコロネ様が陛下に会う事。陛下を見たコロネ様はマーリン様の身に何があったのか全て語ってくれました。私もその場におり話を聞いた時には腸が煮え繰り返りそうでした」


 マーリンはみんなに愛されていたようだ。


「陛下はまだ幼かったお二人を養子に迎え祖父母ではなく父母として愛情を注がれたのです。ですが公にはされておりません」

「なぜですか?」

「コロネ様と弟君は半分隣国の血が入っております故に。今公表し後に弟君が王となられた場合、隣国がなにか企むやもしれません。その血を利用しエリンを吸収、もしくは属国とするやも」


 めちゃくちゃ重い話だった。


「その隣国って……」

「現在のイシュタル帝国ですよ。当時のイシュタル帝国は南北二つの国に分かれておりました。マーリン様が亡くなられた直後の統一戦争で国は今の形になりました。統一戦争直前に国交は断絶したはずなのですがね。南北統一後向こうからは物資を融通しろと脅され続けてきました」

「自分から断絶しておきながらですか」

「マーリン様が嫁がれた先は南の方で、内戦で勝ったのは北の方なのです」


 その話を聞いた俺はふと悩んだ。


「ん? もしかして南のイシュタルはコロネ達を逃がすために断絶を願い出たのでは?」

「ありえませんな。私共は真実を聞いております。あの国はどちらも外道。北のイシュタルは断絶を知らなかっただけでしょう」

「そ、そうですか」

「さらにマーリン様は催眠術師としての力を振るい、イシュタル帝国でコロネ様たちは死んだことにしております」


 これが公にできない理由か。


「南のイシュタルはもうありません。しかし北のイシュタルは南北を統一し、今はグロウベルにまで戦火を拡大させております。そこにコロネ様らの出自が漏れようものなら今度はそれを理由に我が国に兵を出せと脅されるでしょう」

「めちゃくちゃだなぁ」

「はい。今後イシュタル帝国が崩壊しない限り真実は公にされません。グロウベルには何がなんでも勝っていただきたいものです」


 エリンではコロネたちは陛下夫妻の養子だとしか伝えられておらず、出自は秘匿されている。イシュタル帝国が絡んでいることが問題であり、エリンの国民を守るためだろう。そしてこの真実を知る南のイシュタルはもう存在しない。全ての真実を知る者は両陛下にバトラーと俺、あとはコロネたち姉弟だけだ。


「聞かなきゃよかった……。過去一面倒だ」

「それだけ陛下はリヒト様に信を置いているのです。両陛下も高齢、次代を考える時でもあります故に」

「お、俺は国になんて関わらないからね!?」

「さすがに国政にまで関わらせはしないでしょう。精々が……コロネ様の夫といったところでしょうかね」

「なんで!?」


 バトラーは理由を口にした。


「それはリヒト様が陛下の信を得ており、かつ冒険者であるからですな。いざ国が危ないとなった場合逃げ出せるでしょう。エリンの血を絶やさぬようにと」

「別に護衛でもいいじゃないですか。結婚なんて考えたこともないですよ」


 するとバトラーはある提案を口にした。


「ではひとまずパーティを組まれてはいかがでしょうか」

「えぇぇ……」

「確かに考えなしに突っ込む猪突猛進型ではありますが、それは指導する者がいなかったためなのです」

「バトラーさんが指導すればいいじゃないですか」

「ほっほ。コロネ様と私では系統が違います故に。私の本業はアサシンですので」


 やはりか。身のこなしに隙がないはずだ。おそらくマスタークラスだろう。


「ちょっと~! もう目の前森なんだけど!」

「ん?」


 長い話をしている内にいつの間にか森に着いていた。


「私の剣、作ってくれるんでしょ? 細工しないか見張ってるんだから変な真似はしないでよ」

「ははははっ。これはおかしなことを。それではまるで俺が細工しないと勝てないといっているように聞こえますが?」

「あら、正しく聞き取れたみたいじゃない。耳だけは優秀なのね」


 今すぐツインテールをもぎ取ってやろうかと思った。


「ほら、さっさと作りなさいよ。これと寸分違わず美しい双剣をね! あ、無理なら謝ってくれたら許すけど~?」

「こ、このクソガキは……」

「はぁぁぁ~……。陛下、思い描いた未来はまだまだ先のようですぞ……」


 俺が剣を作っている傍らでバトラーは天を仰ぎ盛大な溜め息を吐くのだった。

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― 新着の感想 ―
呆れる程のクソガキ、孫が可愛いならまともに教育すれば良いのに… 王族自体人員少なそうなのにお国の人達何やってんの? 宿屋の酒乱娘といい、居心地はよくてもすっかり女難の相に負けそうな主人公、早いとこ実力…
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