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異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜  作者: 夜夢
第一章 始まり

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第30話 吉報

 年が明け冒険者たちも日常に戻ったある日のこと。いつから戻らなかったかわからないほどボロボロの冒険者パーティが冒険者ギルドに駆け込んできた。


「見つけた! 見つけてきたぞ迷宮!! ギルドマスターを呼んでくれっ!」

「「「「なんだって!」」」」


 今日の依頼をどうするか掲示板の前で迷っていると冒険者ギルド内が一斉に沸いた。


「は、はい! ではマスターの部屋まで!」

「い、いやもう疲れてて……座っちまったから動けそうになくて」

「ではそのままお待ち下さい。マスター!」


 受付の女性が階段を駆け上がり二階へと向かう。


「あいつらBランクパーティだろ? やっぱBランクパーティは違うな。年末年始なんか関係なく仕事してたとはなぁ」

「尊敬するぜ。ただ……汚いし汗臭いから近寄りたくねぇなぁ」

「迷宮発見でいくらもらえるんだろうな。見たところ装備はボロボロだし傷だらけだ。割に合わない気がするな」


 遠巻きに見ている冒険者たちは好き勝手喋っている。そこに二階からギルドマスターがやってきた。


「迷宮を発見したそうだな。よくやってくれた!」

「は、はい!」

「詳しく話を聞かせてくれ。二階……は無理か」


 ギルドマスターは床に座り込む冒険者パーティの前にあぐらをかいて座り遠巻きに見る冒険者たちに言った。


「お前らギルドは一時閉鎖だ! 外出てろ!」

「え~。俺達にも聞かせてくれよギルドマスター」

「ダメだ。知ったら向かうだろうが! 冒険者ギルドで管理を始めてから潜らないと資格剥奪って知ってんだろうな?」


 俺はアクアに視線を向けたあと冒険者ギルドを出た。


「迷宮か。エリンに光が差してきたな。錬金術師組合に迷宮、今年はエリン飛躍の年になりそうだ」


 追い出された冒険者ギルドから渡り鳥の止まり木亭に戻るとファルコは年末パーティーで俺が作った料理を再現していた。


「ただいま」

「あん? どうした? いい依頼なかったのか?」

「いや、それがさ」


 俺はカウンター席に座り調理中のファルコと会話する。


「迷宮が見つかったぁ!? 本当なのか!?」

「わからないけどBランクパーティが見つけてきたみたい。今ギルドマスターと話してるよ」

「ほ~う。年始から景気がいい話だな。迷宮の規模次第だが」

「迷宮の規模?」


 ファルコは調理を終えコーヒーを二つ煎れてカウンターに立った。


「ああ。百階層を超えるような迷宮を【大迷宮】、それ以下は【なになにの迷宮】、二十階層以下の迷宮は【生まれたての迷宮】に分類されるんだ」

「なになにの迷宮って?」

「百階層以下の迷宮には属性がついてる事が多くてな。例えば火属性だと【火山迷宮】だな。火属性の魔物が多い迷宮なんだ」


 さすが元冒険者だ。詳しい情報は助かる。


「水じやなきゃいいな」

「なんで?」

「水属性の迷宮は探索が困難なんだ。地下に向かう階段が水中にある場合もあるからな」

「それは嫌だなぁ。重鎧とか着てたら沈みそうだ」

「それよ。男女混合パーティとかだと気まずくなるしな」


 それは確かに気まずいな。


「まぁ、属性迷宮はどれも困難だ。階層は三十から百以下。挑むなら準備は欠かせねぇぞ」

「俺はしばらく様子見かな。ソロだし」

「お前もそろそろパーティでも組んだらどうだ?」

「無理だって。秘密が多すぎるからね。しかもまだEランクの駆け出しに毛が生えた程度にしか見られてないだろうしね」

「あ~……それもそうか。実力知ってたらBはありそうなんだがな」


 Bランクと言われてもしっくりこない。


「ファルコのランクは?」

「あん? Aだよ。俺と妻、あと二人の四人パーティだ」

「へぇ~。残り二人って今何してるの?」

「何してんだろうな。変わり者だったからなぁ。俺達に子どもができた時に解散したんだがそれ以来会ってねぇな。別の国にでも行ったんだろうよ」

「そうなんだ」


 カップを空にした俺は席を立った。


「どこかいくのか?」

「鍛錬しにいってくるよ。もう少しで騎士と魔導士マスターしそうなんだよね」

「……どんどん化け物じみていくよなお前」

「どれも下級職だし。エリンに上級職がいなくてさ。魔法騎士とかは無理なんだよね」

「お前はいったい何を目指してるんだか。早く引退して料理手伝え。んでアクアと結婚しろ。俺の店を任せられるのはお前しかいねぇ」


 ファルコの口からとんでもない爆弾発言が飛び出した。


「結婚~? 俺とアクアが? 勘弁してくださいよ」

「俺はお似合いだと思うがな」

「無理です。年末パーティでの惨状を見たでしょう」

「……知らんな」


 年末パーティの最中、飲み過ぎたアクアは盛大にリバースしテーブルの上が大惨事になった。本人はリバースした刺激物の上に顔からダイブし異臭を放っていたが翌朝問い質しても何一つ覚えていなかった。


「俺の手には負えませんよ。諦めて下さい」

「くそっ。しかしよぉ、お前さんも今年十九になるだろう? 女くらいこしらえとけよ」

「今のとこ興味ないですよ。多忙なんで俺」

「んなこと言ってるとあっちゅう間におっさんになっちまうぞ? 若い時間ってなぁ意外と短いんだからな?」

「はいはい。行ってきます」

「だからアクアとな──逃げられたか」


 俺はしつこくアクアを推してくるファルコから逃亡し森に向かった。


「ふぅっ、よし。騎士はマスターしたか」


 首都近郊の森に現れる魔物はもう敵にはならない。騎士のジョブに着いていても気配察知などのスキルは本業にこそわずかに劣るが使える。ポーションや錬金術に関する技術は緻密さを要求されるものが多いため職を変えて精製するが戦いは別だ。


「剣を使いながら魔法も使う。魔法の威力は魔導師の方が強いけど手数が増える。最近はこの戦闘スタイルが板に付いてきたな」


 俺が想像するに、このスタイルは魔法騎士の戦い方に近いだろう。ジョブこそ持っていないが戦い方は模倣できそうだ。


「魔法騎士なら魔法の威力も維持できるんだろうなぁ。改めて上手くできてるよな、この世界の職業システムって」


 そんなこんなで俺は今日騎士と魔導士のジョブをマスターした。


「次は何をマスターしようか。シーフやアサシンなんかは迷宮で上げた方が効率よさそうだし……無難に兵士と戦士かな。いや、神官も捨てがたい……」


 今日の目的を果たした俺は夕暮れの森を出て首都へと戻るのだった。

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