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第22話 今後について

 渡り鳥の止まり木亭に戻った俺とアクアは依頼について意見交換を始めた。


「どう? 治療できそう?」

「問題ないよ。ただ……すぐに動いたら首都に解決できる薬師がいるって大事になっちゃうから。他の国に解決できそうな冒険者を探してもらうのって何日くらいかかるもの?」


 アクアはしばらく考えこんだ。


「一ヶ月……そうね、探すのは問題ないわ。ギルド同士は通信できるのよ。登録データから薬師を厳選して依頼から調達して帰還するまで最短で一ヶ月ってところかな」

「一ヶ月で往復できるものなの?」

「可能よ。魔物使いにお願いして飛竜を使うからね」


 飛竜。さすがに見たことはないが新しいジョブの情報が手に入った。


「じゃあ一ヶ月後に届けようか。それまでに薬と使用方法を記した処方箋を用意しておくよ」

「はぁ。なら私はいったんギルドに戻ってギルドマスターに報告してくるわ」

「あ、ちょっと待った」

「はい?」


 失念していた。ここは地球とは違う異世界だ。もしかしたらぶっとんだ薬があってもおかしくはない。


「聞いておくけどさ、万病に効く薬とか瀕死の傷を癒すポーションとかないよね?」

「あるわよ?」

「あるんかい!?」


 アクアはため息を吐きながら言った。


「万病に効く薬は古の時代、錬金術師だけが作れたといわれているわ。その薬の名は【エリクサー】。貴重な素材をいくつも使い錬金術を極めた者にしか作れないと言われているの」

「おぉ……やっぱりあったか」

「あはっ。伝説上の薬よ? 今の時代には存在しないんじゃないかな。それこそ太古の大迷宮の深層に挑まなきゃ手に入らなそうだし」

「ちなみにそこ行ける人っている?」

「いるわけないじゃない。言い伝えによるとはるか昔異世界から召喚された勇者パーティが最下層まで潜りエリクサーを手にしたらしいけど眉唾ね」


 そうだ、勇者パーティのことをすっかり忘れていた。俺が召喚された場には自称異世界で活躍していた勇者四人。力の勇者、知恵の勇者、博愛の勇者、光の勇者だったか。確か知恵の勇者はジョブが賢者、博愛の勇者はジョブが聖女だったか。青と光もそれぞれの世界でトップクラスの力を持つ勇者と自分で言っていた気がする。


「あの四人なら……いや、無理か」

「? 心当たりでもあるの?」

「ちょっとね。はぁ、もう全部話すか」


 俺はアクアにエイズーム王国の手により異世界から召喚されたことを話した。そしてその際に四人の勇者も召喚されていたと告げた。


「は、はぁぁぁぁっ!? リヒト様って勇者様だったの!?」

「いや、違うよ。俺はただの学生。俺がいた世界には魔物なんていないし魔法もなかったからね」

「へ?」

「そんなものは創作の世界だけの御伽噺だよ」

「へ、へぇ~」

「他の四人は異なる世界でトップクラスの力を持ってるらしいけど性格悪そうだし、なによりエイズーム王国がエリンのために動くはずもない。けど勇者がいることは確実だよ」

「知らなかった……。ギルドが知らないということはその人達は冒険者ギルドに登録してないわね」


 どうやら冒険者ギルドがギルド間で情報共有しているのは本当らしい。


「あの国のことだ。どうせつまらないことでも考えてるんじゃないかな。勇者を迷宮とやらに挑ませお宝を集めるとかさ」

「あぁ~……ないとは言い切れないわね。でも無理ね。迷宮は冒険者ギルドが管理してるもの。無許可での出入りは禁止されてるわ」

「……未発見の迷宮なら?」

「未発見の迷宮は発見した時点で冒険者ギルドに報告する義務が……あ、そっか! 勇者は冒険者じゃないから義務はないのか!」


 聞いた限り報告義務があるのは冒険者のみだ。そもそもあの性格が悪そうで傲慢な四人組が報告なんてするはずもない。どれだけ強いか知らないがいつか考えなしに挑んでとんでもないことをしでかす気がする。


「けど……ふぅ~ん?」

「なんだよ」


 アクアはニヤニヤと俺を見てくる。その笑みは若干気持ち悪い。


「リヒト様がぶっとんでる秘密がこれでわかったわ~。まさか召喚された異世界人だったなんてね~。薬の知識も異世界のものなの?」

「そうだね。俺には一度見たものを一瞬で覚える瞬間記憶能力に異世界の知識を調べられるスキルもあるよ」

「よくバレなかったわね。そんなの歩くお宝じゃないの」

「そりゃ危ないと思ってスキルは隠したし。鑑定はジョブしか見えてなかったみたいだからね」


 俺の話を聞いたアクアは取引を持ちかけてきた。


「リヒト様、その力を見込んでお願いが」

「断わる」

「そこをなんとか! リヒト様がまだ見ていないジョブの持ち主を紹介しますので!」


 心の天秤が揺れる。アクアの提案はかなり魅力的だ。


「くっ! そんな誘惑には屈しないぞ!」

「そうですかぁ。魔物使いは自分より弱い魔物を使役できて便利ですし、魔道具師は便利な魔道具を作れ……あ、これは上級職だった」


 魔道具師。初めて聞く職だ。


「ま、魔道具師になるには?」

「魔導師、鍛冶師、錬金術師の三つを所持していたらなれます。ちなみに人間にはいません。ドワーフ国にしかいませんね。人間だと寿命が先にきちゃうので無理なんですよ」

「ほうほう」

「あとはエルフの精霊術師とか、聖王国にいる聖騎士とか」

「おぉ~! まさにファンタジー!」


 異世界定番の職が実在することにワクワクが止まらない。


「でもみなさん別大陸にいるので会えませんけどね」

「ガッカリだよ! 一気に冷めたわ!」

「まぁまぁ。ちなみに錬金術師だけならこの町にも居ますよ?」

「え? い、いるのか錬金術師が!」

「はい。たいした物を作れないし根暗ぼっちなので町外れでひっそり研究しながら暮らしてますよ」


 そうか。錬金術レベルが低いとそういう扱いになるのか。創作だと錬金術師なんて憧れの的なんだけどな。


「一ヶ月暇でしょうし錬金術やってみません?」

「……見返りはなんだ」


 するとアクアは満面の笑みを浮かべた。


「今彼女がやってる研究の手助けを! 完成したら美容業界に革命が起こると期待大なんですよ! 私個人的にですが」

「は、はぁ」

「どうでしょう? 会ってみませんか?」


 錬金術は薬師とは違う薬やら魔道具に近いものを作れそうだ。俺の興味は未知のジョブへと傾いていった。


「わかった、会ってみるよ」

「おお!」

「けど期待され過ぎても困る。俺は素人だからな」

「大丈夫です。異世界の知識があるなら大丈夫!」

「わけがわからん期待だ」


 この翌日、俺はアクアに聞いた錬金術師の工房へと足を運ぶのだった。

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