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新たな目標
開会式が終わると、担任を持つ教員達はそれぞれ教室へ向かった。
高橋はこれから何年間か自分の城となる保健室へ案内してもらった。
案内してくれたのは佐々木二郎、68歳の用務員さん。
さらりと作業着を着こなすその姿は、40年前はきっとイケメンだったに違いない。
しかし、白い眉毛が少し伸び過ぎだ。
白山羊さんみたいになっている。
自称良い男捜索隊最高指令幹部、高橋弥生には40年前をも見通す想像力が備わっていた。
佐々木さんはとても親切なお爺さんで、時代劇好きな高橋とは直ぐに意気投合した。
「また、保健室に遊びにくっからよ。」と笑顔で去って行くその姿に、愛想良く手を振った直後、高橋は我に返った。
ならぬ…、ここ保健室だけはどうしても老人のたまり場にしてはならぬ。
せめて、男子生徒がいないのなら可愛い女生徒達の憩いの園にしなければ。
そうそう、年下の女の子達のファッションリーダー的存在も悪くない。
気を取り直した高橋は、再び妄想の世界へ旅立つのであった。