仲間
二人は昨晩泊まったホテル街からすぐ近くにある庵子のバイト先のレストランにそのまま向かった。
今なら正直に話せるし、例え受け入れてもらえなくても前向きになれると、彼女は思った。
程なく、庵子のバイト先のファミレスに差し掛かる。
店内の良く見渡せる窓を覗き込むと、バチリと麻美と目が合った。
驚いた様に目を見開く麻美。
庵子の体は緊張で固くなる。
麻美は身を翻すと、店にいる哲太や店長に捲し立てるように何かを話している。
庵子は今しかない、と思い、ファミレスの入口に向かった。
ノブに手をかけたその時だった。
ドアがそのまま彼女の方にぐいと押され、誰かが飛び出してきた。
それは、麻美だった。
突然の事に庵子の体がよろけると、二つの腕がしっかり彼女を支え起こした。
「ちょ、あんたねぇ、まじ心配したんだから!どこ行ってたの!?」
麻美にきつく抱きしめられた庵子は数秒何が起こったのか理解出来なかった。
予想外の事だった。
「いきなりバイト辞めるって電話してくるし、しかも警察が捜査に来るし…。本当に最悪な事まで考えちゃったよ…。何だよ、悩みあるなら相談とか全然乗るし…。」
麻美の声が震えていた。
ずっと嘘の付き合いしかしてこなかったのに、そんな庵子を想っての涙。
胸が熱くなり、自然に涙が溢れてくる。
「ごめんね…。麻美や哲太や…皆にちゃんと話さなきゃって思って戻ってきた。私にとって、麻美はやっぱりすごく大切な友達だから、このまま喧嘩別れなんて嫌だったの…。私、本当は港女に通うガリ勉女なの。そう思われるのが嫌で、自分を偽ってた…。」
「てか、そんなの気にしないし!私がショックだったのは、友達だと思ってたのに嘘つかれてたって事だけだよ。庵子がどこの高校かなんて関係ないし、別に見た目も中身も庵子はめっちゃ格好良いんだから、それで良いじゃん。そんな外見も可愛くて、頭も良いなんて、自慢しとけばいいんだよ!」
「ありがと、麻美…。」
気がつくと、二人の周りには哲太や店長、そしていつの間にやら南や萠子までが優しく微笑んで立っていた。
「おかえり、庵子。」
南がいつもの笑顔で言う。
「心配したんだからな!」
「でも、無事で良かった…。」
「来週から仕事復帰してもらうぞ、うちは人手が足りないんだからな。」
皆が口々に庵子を迎えてくれる。
「「「おかえり、庵子!!!」」」
「ありがとう、みんな…。」
金髪の少女は涙を拭うと、とびきりの本物の笑顔で微笑んだ。