少女の行方
2、30分くらいがたったろうか。
ピリリリ…と店内に携帯電話の着信音が鳴り響いた。
高橋はディスプレイに「涼平」の文字を確認すると、すぐさま受話ボタンを押した。
「もしもし、涼ちゃん?来た?」
“いや…辞めたって。バイト…。店長に今朝電話があったらしい。”
「えぇ〜…そうか…。」
“…じゃぁ、そういうことだからさ。俺は仕事に戻るから。”
「わかった…。ありがとう。」
電話を切るやいなや、皆の視線が一斉に高橋に集まる。
皆の生唾を飲む音が今にも聞こえそうな緊迫感だ。
「バイト…辞めちゃったらしい。」
ぽつりと高橋が言った。
はぁ、と誰かが大きなため息をついた。
途方にくれる気持ちは皆同じであった。
もはや、この集まりが出来ることなどほとんどなかった。
「先生、そういえば庵子、お家にいるとかじゃないんですか?私、帰りがけにお家に寄ってみますよ。」
友達思いの南が言った。
すると、丁度そのタイミングを見計らったかのように、萠子の携帯電話が鳴った。
「あ、はい…え?庵子ちゃん、お家に帰られてないんですか!?…学校も、実は来ていなくて…。」
真実を言って良いものか、と躊躇いながらも萠子という少女は電話の相手、庵子の母親らしき人物に真相の一部始終を伝えた。
援助交際の疑いのみは、余計な心配をさせるだけだと思ったので敢えて何も言わない事にした。
事態は更に悪化した。
その電話で、やはり尋常じゃないと感じたらしい庵子の親は警察に捜索願いを出すという旨を萠子に伝えた。
警察、という言葉を聞いて少女達の不安そうな顔は今にも泣き出しそうに崩れ、大人3人は何としてでも彼女を見つけ出さなければと思った。
真剣な表情をした高橋が立ち上がった。
「ここで座っていても仕方ないわ。各々思い当たるところを探しましょう!もしこれが誘拐なんかだったら、事態は一刻を争うもの!」
全員一致で頷いた。