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喫茶サルヴァドールにて

放課後、ベージュのトレンチコートに身を包み、帽子を目深に被った三人の大人は喫茶「サルヴァドール」の片隅で何やら話し込んでいた。

その様子を冷めた様な目で見下ろす男子高校生と、心配そうな面持ちの女子高生二人。


「あ、三人とも座ってよ。注文は何が良い?狭山先生の奢りだから、好きなもの頼んじゃっていいよ〜。」


トレンチコートの一人は女性の様である。

しかももの凄い甘党なのか、彼女のテーブルの前にはパーティー用の大きなチョコレートパフェが高々とそびえ立っていた。


「急に呼び出したかと思えば…、俺は今日もバイト入ってるんだ。後30分したらもう行くからな。」


少年は少し怒った様な口調で女性に言い放った。


「何いってるの!その、バイトが涼ちゃんのメインの仕事でしょーがっ!今日、庵子ちゃんがちゃんと出勤してくるか、それを私たち幹部にちゃんと報告するのよ。ぬかりなくね。」


「…出勤してきたら、それで事件解決だな。」


あきれ果てたような少年に、トレンチコートのもう一人が立ち上がり詰め寄った。


「涼平くん、本当に他校の君にこんな事をお願いするのは申し訳なく思っているのだが。彼女を、中村さんをちゃんとその後家まで帰るか見届けて欲しいんだ。勿論、送ってやっても構わない。君以外にこの任務を遂行できる者がメンバーの中にいないのだよ。」


その口調から、トレンチコートは年配の男性であるようである。

深い帽子に丸めがねをかけているため、殆ど顔は見えないが、物腰から穏やかさが伺える。

3人目のトレンチコートはソファに座ったまま、コーヒーを啜った。


「しかし、君が進んでこの極秘任務に立候補してくれたお蔭で我々は非常に助かっている。ありがとう、涼平君。」


(進んで?立候補?)


少年は怪訝そうにパフェを美味そうに食べている女性を見やった。

女性はパフェに夢中で視線に気づく様子もない。

一呼吸置いて、突如その男は少年に向かって得意の変化球を投げつけた。


「…で、君は中村さんとどういう関係なのかな?やっぱり彼女は美人さんだからねぇ〜気になる存在だろうけど…」


「あ、新井先生っ!」


斜め後ろ肩辺りに凄まじい怒りの悪寒を感じたトレンチコートの女性は、慌てて話の軌道修正を試みた。

ピッチャー交代。

新井という男はどうやら他人の恋愛話が大変好きなようである。

まだ何か言いたげだったが、しぶしぶ話の本題に戻る。


「で、飴田さん。今日は一回も庵子ちゃんと連絡が取れないのね?」


女性が女子高生のうちの一人に話かける。

女子高生はこくりと頷いた。

もう一人の女の子も自分もそうだという風に同じ様に頷く。


「庵子、長身の男性と寄り添う感じで歩いてたんです。彼氏、いないって言ってたはずなのに。それから、ホテル街へ行ってしまって…声掛けたかったけど、そういうときって気まずくて無理じゃないですかぁ…。」


目撃したらしい少女の一人がその時の状況をぽつりぽつりと話す。


「うん、見てみぬふりするしかないよね。それに、どうやら庵子、昨日は萠子の家に泊まるって言ってたらしいんですよ、親に。でも、実際泊まり行ってない…。」


萠子という少女が頷く。


「私は塾帰りで、たまたま庵子を見かけただけで、そんな話になってるなんて全然知らなかったし。でも、あの辺りホテル以外に何もないから泊まったって考えるのが自然だと思います。」


一同はしんとなった。

それぞれの胸には見間違いであって欲しいという気持ちと、やはり本当なのか、という気持ちが入り交じっていた。

少年が口を開く。


「俺、そろそろバイトに行きます。また、状況連絡しますんで。」


皆無言のまま重々しく頷いた。

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