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三人の調査

多少の不安を覚えながらも、高橋は翌朝を迎えた。

天候は曇り。

すっきりしない空模様である。

ちゃんと庵子が登校してきてくれれば良い、そう思いながら玄関を出る。

しかし、悲しいかな、保健室教員は担任ではないので中村庵子に関しての情報はほとんど入ってこない。

Aクラスの担任といったら狭山先生、彼に後で出欠だけでも確認しに行かないと。


一時間目が終了すると、高橋は職員室へ向かっていた。

お目当ての狭山教員、そして彼と仲の良い新井教員が何やら机を囲んで話し込んでいる。

高橋はいつもの調子で二人の会話に混ざりに行った。


「お疲れ様です、狭山先生、新井先生。ちょっと確認したいことがあるんですけど。」


「あ、弥生ちゃん、お疲れさん。どうしたの、珍しいね、こんな時間に。」


「ちょっと気になる事があって。狭山先生のクラスに中村庵子さんていますよね?彼女今日学校来てますか?」


何故だか二人の教員の間にわずかな緊張が走る。

普段見せないその真剣な表情は、「何かがあった」ことを高橋に感じ取らせた。


「…弥生ちゃん、何か知ってるの?」


突然小声になった新井教員が高橋に顔を近づける。

新井教員はおせっかいな性格だが、庵子を初め、意外と生徒から人気のある人情味溢れる先生だ。


「何かっていうか…昨日ちょっとありまして…。」


高橋は保健室の事からファミレスで起こった事までを、ざっと簡単に二人に説明する。


「それで、彼女の事が気になっていたんですけど…。やっぱり来ていないんですか?」


「うん…。唯のお休みならいいんだがね。ちょっと変な噂もあってね…。」


いつも明るい狭山教員の眉間に皺が現れる。

保健室でお茶を飲んでいる時とはまるで別人の様な真剣な表情に、高橋も身を固くして次の言葉を待った。


「え、援助交際!?」


驚きの余り声を上げそうになる高橋の口を新井教員が急いで塞いだ。


「弥生ちゃん、静かに!まだ本当かどうかは分からないんだ。今ね、私と狭山先生で一刻も早く真相を突き止めようって話をしていたんだ。中村さんの事も心配だし、やはり港女からそのような素行の生徒が出たという事でもマスコミやPTAを巻き込む大問題となる。狭山先生の責任問題にも繋がるだろう。運良く私も中村さんの事は良く記憶しているんだ。確かに勉強は余りやらない子だが、屈託のない子だと思っていたんだよ。」


狭山教員は新井教員の言葉に頷きながら、寂しそうな表情になった。


「そう、あの子は突っ張っているけれど、思いやりのある良い子なんだ。だから、そんな援助交際なんて…。」


「私も…彼女を、中村さんを信じます。だから、お二人に協力させてもらってもいいですか!?」


俯きがちだった、二人の老人の顔が少し明るくなる。


「弥生ちゃん…、いいのかい?」


「もちろんです!私の従兄弟もきっと協力してくれます!」


「助かるねぇ。じゃぁ、とりあえずは放課後もう一度作戦を立てるから集まる事にしよう。」


三人が志を一つにし頷きあっていると、ちょうど良く予鈴のチャイムが鳴り響き、三人はそのまま解散した。

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